8
俺はすべてが嫌になって、この異世界にやってきた。
まさか愛した冷夏と再会することになるとは思いもよらなかった。
胸の中をはい回る鬱屈した感情。
冷夏と出会えた喜び。
冷夏は王女となってワインを飲み干してベッドに寝ている。
俺は冷夏のベッドの隣りにそっと寄り添う。
髪を優しくなでる。
まだ子供みたいに見える。
美しく人を惹きつける造形。
俺はまだこれからもずっと冷夏を愛している。
冷夏と会えたことはうれしかったのに、どこか俺の気分は沈んだままだ。
この異世界が何よりも不気味に見えた。
いったいなんだかわからないものに触れている感覚。
冷夏と会って急に体の力が抜けたせいか、不安が増加する。
俺が昔から抱えていたこの世界に対する不安だった。
誰かと共有したいけれど、共有できない。
世界はひっそりと息をしている。
月の明かりが窓の外に見える。
時間は死んだみたいに止まっていた。
そう。
その時、時間は止まっていた。
確かに俺の失われた命が作り出した世界からもしれない。
俺の見ている世界は夢なのかもしれない。
そっと部屋の鏡に指を伸ばす。
俺は胸の中で何かをつぶやいた。
その瞬間に炎が指からほとばしる。
鏡は瞬間的に溶けてまた固まった。
まずいことをしたなと思った。
俺は魔法使いにでもなったのだろうか。
俺は部屋の窓を開けて、空に向かって人差し指を突き出す。
今度はもっと強く念じる。
その瞬間に指から炎がほとばしる。
俺は爽快感を感じた。
この世界を滅ぼすことができるかもしれない。
破壊。
それが俺が常に胸の内に秘めていた衝動だった。
俺は冷夏に指を向ける。
そしてすぐに怖くなってやめる。
誰かのことを殺してしまうのかななんて思った。
俺は指から出た炎を炎銃と名付けた。
悪くないなと思った。
俺はこのゲルマニア国で始まる戦争に急に出兵してみたくなった。
なぜならこの世界なら何をしても許される。
まっているのは二度目の死だけだ。
もう恐れるものは何もなかった。
一度死の一線を越えてしまったから。
だからもう何も怖くなかった。
俺は兵士たちが俺の出す炎で死んでいく夢想をする。
夢想にふける。
夜は続いていく。
俺の不安はどこかへ消え去った。
もう失うものは失った。
後はこの与えられた奇妙な世界でどんなゲームをするかだ。
指に向かってそっと念じる。
指から炎が吹きあがる。
部屋の中がまるで爆発したみたいに閃光に包まれた。
俺は一つの着想を思いついた。
この国の英雄になることだった。
俺の頭はまるで麻痺したみたいに興奮していた。




