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夜、私の部屋の扉をノックする音が聞こえた。
「王女様お飲み物をお持ちしました」
「どうぞ」
私は言った。
若者と目が合う。
その瞬間、懐かしい顔だなと思った。
「圭介」
「冷夏」
私は彼の声に耳を澄ます。
やっぱり高校時代の恋人の圭介だった。
「まさか、こんなところで会うなんてな」
圭介はそう言って床に崩れ落ちる。
彼の持っていたワイングラスが床に落ちた。
彼は泣いていた。
「どうして圭介がいるの?」
私はそう言った。
「俺にだってわからないよ」
「あなたはまだ生きているんじゃないの? これは私の夢」
「俺はね。元いた世界で自殺したんだよ」
「奇遇ね」
私はそう言って笑った。
「君も死んだんだ」
「そんな風に軽く言わないでくれよ。俺はお前がいなくなってずっと寂しかった」
「それだけの理由?」
「俺にだってわからないよ。まさかこんな奇妙な異世界でお前に会うなんてな」
「私もそう思った」
私たちは抱き合った。
そしてしばらくの間キスをした。
「ねえ、ワインを飲みましょ」
「俺も飲んでいいのかな? 俺はどうやらこの世界の召使いみたいだけど」
「いいのよ。身分の差なんて平成に生まれた私達には関係ないわ」
圭介は床に落ちたワインボトルを拾った。
それで栓を開けて、二人で飲んだ。
「お酒なんて始めて飲んだのよ」
「そりゃあ僕だってそうだけどさ」
「今夜は二人で過ごしましょうよ」
「大丈夫かな。俺は上官に命令されて、ここまで来たんだけど」
「いいのよ。私はこの世界の王女のエルザよ」
「エルザっていうんだ。俺はカミルって呼ばれたよ」
「お互い変な名前ね」
「そりゃあそうだよな」
私は気分が高揚していた。
王女という地位を手に入れてこうして恋人とも再会できた。
他に望むことは何もない。
「ねえカミル」
「その名前で呼ぶのやめろよ」
「私達はこの世界に合わせなきゃいけないのよ」
「じゃあお前のことをエルザと呼ぶよ。変な気分だな。演劇でもやってるみたいだ」
「いいじゃない。もう死んだ私達には関係ないの。ねえ、どうだった? 死んだときは?」
「そりゃあ怖かったね。でも痛みを感じる前に意識が吹き飛んだ。しばらくの間意識はなかった。それで目覚めたらこの王国の城の中にいたわけだ」
「私とそんなに変わらないわね」
「俺はもう疲れたよ。ずっと部屋の掃除やら料理やら洗濯やらやらされるんだ」
「私は今日、演説をしていたわ」
「聴いてないな。どんな演説をしたんだ」
「隣国のフィレンシアと戦争を始めるっていう」
「そうなんだ」




