6
一人部屋の中で私はワインを飲む。
煙草も吸ってみたかった。
それで現実を忘れて。
現実?
この世界は現実なんだろうか?
いったい自分は誰なんだろう。
エルザと呼ばれた王女はいったい誰だったんだろう。
鏡に映るのは自分自身の姿。
どうしても好きになれなかった自分。
レイプされた惨めな自分。
思い出すだけで吐き気がした。
夜がただ過ぎていって、圭介のいない世界で死んでいく。
もう一度死ななければならない。
私はそう思った。
疲れてベッドに横になる。
ふと圭介のことを思い出す。
どうしてあんなにも惹かれたんだろう。
はじめはなんとも思っていなかったのに、いつの間にか好きになっていた。
私は酔って眠りについた。
翌朝、私は豪勢な朝食を政治家や軍人たちと食べた。
「フィレンシア王国で革命が始まっています」
軍人の中の一人がそう言った。
「革命?」
「隣国の侵略を始めました」
「あのフィレンシアがね」と一人の政治家が言った。
「いったいやつは何を考えているんだろうな」
「やつ?」と私は聞く。
「レナルドのことだ」
軍人たちはそう言って、食事を続けた。
「隣国のベルンはもう占領された。領土拡大は続くだろう。いつゲルマニアが戦争をしかけるかそれも時間の問題だ」
「へえ」と私は言った。
「あなたの決断にかかっているんですよ」
私は黙った。そういえば私はこの国を支配していた。
「今日も演説があるので、よろしくお願いします」
「演説?」
「どうやら記憶をなくしてしまったようですね」
軍人はそう言って笑った。
私には何のことだかわからない。
そうこうしているうちに私は王国の壮大な建物の上で演説をしていた。
「フィレンシアとの戦争も私は辞さない。あの国を叩きつぶしてしまいましょう。なぜならやつらにはもう正義も良心も残っていない。ではユーラシア全体がフィレンシアに支配されてしまう」
軍人たちの歓声が聞こえる。
私は戦争が始まるのかと思った。
そして戦争なんか教科書でしか知らないなと思った。
いつの間にか戦争の高揚感に包まれていく。
「隣国では次々とフィレンシアの軍により殺戮が繰り返されています。私たちは今こそ立ち上がる時です」
私はそう言ったが、内心戦争なんかしたくなかった。
家で漫画でも読んで寝っ転がっていたかった。
その日の夜、宣戦布告の日時を決める会議に出席した。
もちろん決定権は私は持っている。
皆戦争することに異論は唱えない。
ただいつ戦争するのかが問題だった。
そして、私はただこの国の王女を演じていた。




