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礼香がいない。
俺が愛した礼香がいない。
そのことが俺を追い詰めていく。
俺は何もかもが嫌になる。
徐々に周りの人間が嫌いになる。
気づいたら朝になっていて、俺は部屋に引きこもっていた。
「大丈夫、圭介?」
母親がドアの外から俺を呼ぶ。
「学校から、電話かかってきたけど」
ここ数日俺は学校に行っていない。
それどころか食事すらまともに取っていない。
食事をする自分自身すら嫌いだった。
それで俺はあれこれ人生について考えた。
いったい何なんだこの世界は?
もはや、礼香のいない世界に生きる意味はあるのか?
「大丈夫? ごはん置いとくから」
母親は俺の部屋の前に夕食を置いておいてくれた。
俺はしぶしぶ部屋を開けて、そして食事をもってリビングに行く。
「何かあったの?」
母親は礼香と俺が付き合っていたことを知らない。
「別に」
俺は言い出せずにいた。
「気分悪いの? 病院行く?」
母親は俺にそう問いかける。
「いや、大丈夫だよ。ちょっと学校の人間関係で悩んでしまって、それで学校に生きづらいんだ」
「それなら仕方ないけど、先生にも相談した方がいいんじゃない?」
「大丈夫だよ。少し休んだらまた登校するから」
俺は胃の中に母親が作ったカレーを流し込んだ。
すべてが馬鹿らしく感じた。
こんなくそみたいな世界で生きる意味なんかもはや礼香がいない世界に見いだせない。
それどころか俺は一日中憂鬱な気分から抜け出せずにいた。
俺は部屋に戻って、机に座る。
何をするでもなく、ただそうやって時間をつぶした。
それで、気が付くと朝になっていた。
俺はノートに死のうと書いた。
それで一人で過ごしているうちに俺は自分が死ぬ決断をした。
礼香がいないからなのだろうか。
理由はわからない。
不思議と俺の意識は死へと近づいていく。
どうやったら死ねるのだろう?
首つりか飛び降りか。
死への恐怖はない。
俺は数日寝ずに過ごした。
そして気が付くと、俺は高いマンションの最上階にいた。
ここから飛び降りれば間違いなく死ねる。
それだけは確実だった。
やり残したことは何もない。
心の中にあるのは爽快感だ。
これであらゆる苦悩から俺は解放される。
地獄でも天国でも無の世界でも俺は歓迎だ。
さぁ。
胸の中で準備をする。
死への招待だ。
これは、きっと礼香に会いにいくために行うんだ。
この世から消え去った礼香に会いにいくために。
さようなら、お母さん、お父さん、お姉ちゃん。
俺は家族に愛情なんか感じたことは一度もなかったよ。
俺はビルから飛び降りた。
瞬間、恐怖が全身を襲う。
俺は舌を出した。
これですべてが終わる。
俺はそう確信していた。




