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俺はお前のことを際限なく愛していた。
誰の言葉も胸に響かない。
すっかり感情を失ったようだ。
それくらい俺は悲しい。
お前と過ごした時を思い出す。
「圭介」
いつものように礼香が俺に呼びかけてた頃を思い出す。
「なんだよ?」
「ねえ、誰かのために死んだらとか考えたことある?」
「考えたことないな」
俺は当時自分が死ぬとかそんなこと考えたことなかった。
普通にバスケやって勉強してりゃあいいと思っていた。
だからそんな風な話をされても俺には無関係だと思っていた。
「この世界は不思議に満ちていると思うの」
礼香はまるで何かに誘い出すように俺に問いかける。
「この世の不思議?」
「そう。不思議。だから私は考え続ける」
「考え続けてその先に何があるのさ」
「何か答えがあるのよ」
礼香は珍しく本を読んでいた。
俺は別に本なんか読まなかった。
友達だって本が好きなやつなんかいなかった。
「どうしてお前は本なんか読んでるんだ?」
俺は礼香に聞いた。
「別に。楽しいから」
「読書が楽しいか?」
「楽しいよ」
「俺には退屈だね」
そんな会話をいつかしたのを思い出す。
少し死に関わることを礼香が言っていた。
いったいあれはなんだったんんだろうと俺は思う。
なんだか悲しくて憂鬱な気分だった。
それで俺はそんな気持ちを吹き飛ばそうとあらゆることを考える。
あの時、礼香が言ったみたいに。
俺の思考は止まることを知らない。
ただ繰り返して考え続ける。
そこに意味があるのかないのかどうかすらわからない。
それで、俺は何を考えたらいいのかわからなくなるまで考え続けた。
気づくと朝になっていた。
最近時間間隔がおかしい。
礼香の死から徹夜でただぼんやりとすることが多くなった。
一応学校にも通っている。
部活にも顔を出す。
徹夜明けで部活をやるのはしんどかったが、それでも俺は疲れたとか思わなかった。
いったいこれはなんだと思った。
俺はどうかしていた。
自分でもそう思う。
なぜだか俺の気持ちは高揚したり鬱屈したりを繰り返した。
練習中に俺が休んでいると一人の女の後輩のマネージャーが話しかけてきた。
「大丈夫ですか? 圭介さん。なんだか最近疲れているように見えますけど」
「そんなに寝てないからかな」
「部活休んだ方がいいんじゃないですか。何かの病気かもしれませんし」
マネージャーはそう言った。
「そいつは恋人を自殺で失ってへこんでるんだよ」
俺の同期の友達はそう言った。
「それは辛いですね」
マネージャーにそう言って、俺にタオルを渡してくれた。




