12
私は圭介、この世界ではカミルと呼ばれる彼氏と話をしていた。
彼は話の途中でやたら権威的になっていた。
なんだろうと私は思う。
ゲルマニアに帰還したカミルは英雄扱いされていた。
パレードには数十万の国民が参加し、ラジオや新聞で報道された。
奇跡の魔法使いとかそんな感じだった。
「なぁ、この先俺はどうなると思う?」
カミルは私にそうつぶやく。
時刻は夜だった。
「さぁね」と私は言っておいた。
最近ではもっぱら注目を受けるのはカミルの方だ。
私は地位すら危うくなっていた。
そして正直なところ、そんなことどうでもいいはずなのに、なんだかカミルに勝ちたくなってしまう。
不思議な感情。
「俺の腕からはさ、炎が出るんだよ」
「さっきから何度同じ話をするの?」
「すごいと思わないか? あんな凡人だった俺が今やこの国の英雄だ。パレードを見たか? 国民の数を。それはすごい数だった。フィレンシアの兵より多かった」
「へえ」と私は言った。
「私だって演説であれくらい集めたことあるわ」
「お前は権威が与えられた。俺は掴み取った」
「腕から炎が出るおかげでね」
私はなんだか馬鹿ばかしくなってベッドに寝転んだ。
「ねえ、圭介?」
「なんだよ。礼香?」
「私達、結婚しない?」
「別に構わないよ。俺はこの世界の英雄だし、お前は王女だ。二人でこの世界を支配するのも悪くない」
「じゃあ、約束ね」
そう言って礼香はベッドの中に潜り込む。
俺も礼香の寝るベッドの中に入り込んだ。
「でも次の遠征で死ぬかもな」
「大丈夫よ」
私は適当に言っておく。
「ところでさ、なんでお前は死んだんだ?」
圭介は急に真面目になって聞く。
「私の父親にレイプされたから」
「うわ」と圭介は言った。
「そりゃあひどいや」と付け足す。
「そんな簡単に言わないでよ。私経験もなかったのに、父親によ。なんかめちゃくちゃにされたわ」
「かわいそうに。でも死ぬことないだろ?」
「憎かったのよ。父親が」
「そりゃあそうだけどさ」
圭介はベッドに寝転がりながら天井を見ていた。
天井はすごく高い。
想像以上に高かった。
それで綺麗な絵が描かれている。
歴史を勉強した私にはそれが宗教画だとわかるが、圭介にわかるのかどうか知らない。
「お前を求めて俺は死んだんだぜ」
「他に女いないの?」
私は言った。
「考えられないね。お前のことを愛していたから」
私は素直にうれしかった。そんなに愛してくれるなら願ったりかなったりだ。
「ねえ、圭介。私も愛してるよ」
私はそう言って寝転がる圭介の手を握った。




