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受けて立つ

数日前の朝にふと、小説情報を見てみると、いつの間にかブクマが500件超えしてて発狂しそうになり、しかも約80000PVにもなってて、ついに耐えきれずにベッドの上で心がピョンピョンして発狂してしまいました。

そのせいでベッドの上に落ちていたイヤホンの片方を思いきり踏んでしまいましたが、「なんだイヤホンかよ。驚かせんな(錯乱)」と、その時は気にしなかったのですが、後々通学中にアニソン聞けなくなるという事態が起こり、結局は後悔したバカな作者のお話です笑


何でこんな話をしたのかというと、要はめっちゃ嬉しいということを伝えたかったのです。

日々見てくださってる方々には本当に頭が上がりません。

書くモチベーションが上がり、何より今、高校生活が倍に楽しくも感じられてます。

不定期更新ですので、次回の投稿は気長に待っていただけるとありがたいです。

これからも、当作品をよろしくお願いします。                   水源+α

 ──いや、いやいやいや。


(え?)


 と、拍子抜けである。


 他の皆も、「今その質問……?」みたく、困惑した表情をしている。


 あの張り詰めていた雰囲気で、しかも結構、緊張気味に聞いてきたものだから、どれほど俺に踏み込んで来るような質問かと思えば、「何処のユースチームに所属していたんですか」という、案外平凡ななものだったので、少し心を構えた自分がバカに思えてくる。


(……ワンチャン、言い間違えとかあるよな? だってあんな慎重な顔でちょいと躊躇ってたぐらいだもん。絶対そうだな)


 ここは、七瀬さんが『俺が何故ユースチームを辞めたのかの、人の過去を詮索する質問をしようとしたが、無意識の内に緊張で言い間違えてしまった』という可能性に賭けてみる。


「えっと……俺が所属してたユースチームだよな」


「は、はい!」


「……そんなんで良いのか?」


「はいっ!」


「……」


(うん……なんか、こう。反応に困るな)


 二度聞いたが、どちらも凄い勢いで頷かれたので、あの質問は言い間違えではなさそうだ。


 というかあれだ。所属していたユースチームのことをそこまで気にする七瀬さんは、多分生粋の日本サッカーのファンなのだろうと、ここで一つの憶測が浮かび上がった。

 

「……まあ、横浜S・ペレンズだったけど」


(いくらなんでも、こんな女の子がAリーグを普段から見てる訳ないよな)


「よ、横浜!? あ、私横浜の大ファンなんですよっ……えっと、えっと──」


「えぇ……?」


(なんでだよ。なんで、こう七瀬さんは予想は裏切ってないけど期待を裏切ってくるんだよ!)


 なんと憶測が的中してしまった。


 生粋のサッカーファンであれば、横浜S・ペレンズという日本のAリーグでもトップの位置にある名門の名を知らない訳がない。

 いや、サッカーにかじっていなくても、しょっちゅうニュースのスポーツコーナーでも取り上げられているため、日本人であれば知っている程の知名度を誇るチームとも言える。


 Aリーグが始まって19年を迎える今年の2018年だが、開催された十九回の内、リーグ優勝を六回も果たしている、歴代でも優勝回数が最も多いチームとして知られている。

 

(確か、去年優勝したらしいな。横浜)


 その力は長い間、衰えることがなく、去年にも優勝を果たした。

 近年までは五位から二位以内をさ迷っていたが、去年優勝したのを見る限りでは、また優勝できるほどのチーム力が備わって来たらしい。

 

 勢いもあるので、優勝候補として早くから噂されているが──ここらで横浜の話は一旦置いておこう。


「鈴木選手知ってますか! 私あの闘志溢れるスタイルが好きなんですっ」


「へ、へえ」


(キャラがめっちゃ変わってるんですけど)


 先程までのような、引っ込み思案で内気な印象だった彼女が、Aリーグの名門である横浜のユースに所属していたと聞いただけで、たじたじで声量が小さな普段の口調が改善されるぐらいに興奮している。

 この変化の姿容に、流石にちょっと引いてしまうが、ふと彼女の普段前髪で隠している瞳がチラリと見えた時


(え? 可愛くね?)


 と、思ってしまった。


 思っていたよりも瞳孔がパッチリとし、それでいて二重、涙袋の絶妙なバランスで、更に可憐を昇華させている目鼻立ちをしていた。


(やっぱり女子って分かんねえな。これからは第一印象でその人の殆どをこうだと決めつけないようにしよう)


「お、おう。鈴木さんにはお世話になってるぞ」


「えっ!? 話したことがあるんですかっ」


「ああ。ユースの頃、結構試合を観に来てくれたんだ。色んなことを教わったし、辞めた今でも、連絡し合ってるからな」


「──っ!?」


 やはり、とも言うべきか、そこで七瀬さんは更に瞠目させ、余程高揚しているのか、次には「あ、あの! ……もし良ければなんですけどっ……」と、モジモジとしながら言ってきた。

 お願いとは何か。

 考えなくても、スッと予想できた。


 相手がファンであるチームのユースに所属していたことを知り、おまけにそのチームの一番好きな選手と関係を持っている。


 上記のようなこの話の流れでのお願いは決まりきってると思う。



「お願い? もしかしてサイン……「はいっ!!」……お、おう」


 鬼気迫る、血走ってはないが目力が半端ない七瀬さん。


 正直言って怖いが、何処かその必死さが、逆に笑いの坪だったりする。

 吹き出しそうな口をゴモゴモとさせて抑えながら、ふと周りの視線が気になった。


(やっぱり鈴木さんからのサインを貰ってきてほしいんだな。というか七瀬さんみたいな人でもここまでサッカー好きだとは思わなかったわ。マネージャー達以外の部員なんかずっと呆気に取られてるし)


 偏見かも知れないが、今時のJKでAリーグを見る人は本当に少数かと思っていた。


(……こうしてみると、七瀬さんの話を首とか傾げないで平然と、しかも笑いながら見てるマネージャーが多いな。多分、この人達もAリーグ好きなんだろうな)


 何だか嬉しく感じる。


(ん? いや、なんで俺が嬉しく思ってるんだ)


 最近、自分の心境が不安定になっている気がする。


 どれもこれも、何かとサッカーに夢中過ぎて俺を見破った相良のせいだ。


 そんなことを思っていると、七瀬さんが不意に、サインを貰えるだけあって超キラキラとさせた表情を曇らせる。


「あっ、でも本当に良いんでしょうか……? 迷惑かけたりしたら、私……」


 段々と「あわわわ」と震えだし、ついには目尻に涙を浮かばせる始末。


 対応に困る状況になるが、ここでハンカチを出して「ほら、拭けよ」みたく、ラノベ主人公がやりがちなキザなことも出来る勇気がないので、敢えて涙のことは触れずに、自然を装って、瞬時に浮かび上がった真実100パーセントの建前を挙げた。


「いや、あの人はコート上では熱血だけど、コート外だと本当に何処にでも居るようなおっさんみたいな人だから、七瀬さんみたいな女の子からサインを求められたりしても悪い気はしないというか、転げ回るほど喜ぶと思うぞ。……まあ、後は……そうだな。これは俺からの礼でもある」


「──え?」


 今日一番の驚いた顔に、こちらも驚いたが、後戻りは出来ない。

 

「いや、相良がいつも世話になってるみたいだしな。あいつどうせ口だけの軽い礼ぐらいしかしてないんだろうから。だから、代わりにだよ」


「えっ……いや、でも。相良くんに飲み物渡す時、いつも礼を言ってくれますよ?」


「それは人として当たり前なことだろ。確かに、言葉でも礼を言われると嬉しいけど、やっぱり形がある物の方がもっと頑張ろうってなるだろ?」


「……!」


 そこで七瀬さんは瞠目させたが、こっちはあくまで当然のことを言ってるだけだ。


 例えば。例えばの話である。


 意中の相手に勉強を教えることになったとしよう。

 自分が教えたことにより、結果的に意中の相手の成績が上がり、感謝される状況になった。


 ここからは二者択一だ。


 ──その場かぎりで礼を言われてその日を終える。

 

 ──その場でかぎりで何か飴でも、缶ジュースでも渡され、礼を言われてその日を終える。


 さて。この二つを比べた時、どちらが一般的に嬉しいと思い、又頑張ろうと思えるのか。

 

 答えは明白、後者である。

 

 なので、正直七瀬さんがあの言葉で驚いたのを見ると、これまでちゃんとしたお礼を受けたことが少ないことが判断できる。


(苦労人なんだな)


 そう思ったが、変なところで首を突っ込むのはあれなので話を続ける。 


「さっきも言った通り鈴木さんが迷惑とは思わないだろうし、それに俺からの礼でもあるから、そっちは気楽に……は憧れの選手のサインを貰うから無理か。でもサインが貰えてラッキーぐらいに思ってれば良いんだよ。だから礼をさせてくれ」


「…………はい。ありがとう、ござい……ますっ」


 これまで今の俺のように、苦労を掛けた割りにはちゃんとした礼をされてないためか、気恥ずかしそうに、頬を赤くさせながら顔を俯かせ、それでも、途切れ途切れながらしっかりと礼を返してくれた。


「……」


「……」


(……なんかこっちまで恥ずかしくなってくる。この空気はどうも苦手だわ)


 どちらかというと飄々としてる性なので、こういう真面目な雰囲気は、大方話を振り、回収した俺に原因があるとしても苦手なので、咄嗟に思い付いた言葉を口に出した。


「まあ、その。あれだ。……普段からあいつに……というかあいつぐらいしか友達が居ないから接してるが、マジで面倒臭いからな。うん。七瀬さんにも、いやサッカー部にも苦労をかけてるのが想像出来るぞ」


「い、いやそんなことない──……ないですよ?」


 言い切ろうとしたが途中で、一瞬戸惑ってしまう彼女には、そこら辺の心当たりが多少なりともあったのだろう。


(それでもちゃんと言い切って、そんなに親しい間柄でも無いのにフォローしてる辺り、七瀬さんは本当に今時の打算的に考えるJKなのか疑問に思えてくるわ。まだ会って一時間ぐらいだけど、それだけの時間でも分かる人の好さ。異世界行ったら多分聖女か巫女になってるな。うん)


 七瀬さんの人の好さを垣間見たことで、余計なことも織り混ぜて考えながら、彼女のフォローを無駄にしない為に、話に乗った。


「そうなのか。ごめん。てっきりずっとそうなのかと思ってたからな。じゃあ、そうだな……明日の昼休み、七瀬さんの教室に行って、その時渡すから、クラス教えてくれるか?」


「あ、えっと……え? 綾崎さんが来てくれるんですか?」


「ん? もしかして問題とかあったりするか?」


「いや。……私がサインを頂く方なので、流石に綾崎さんに失礼ではないかと」


「全然。俺のプライドなんてそこら辺のウジ虫程度のもんだから気にしなくて良いぞ。というか……正直言うと、俺の方が困るんだよな」


「……? 何故ですか?」


「いや。まあ立場的に、な。ほら、俺って友達なんて相良ぐらいしか居ないだろ?」


「は、はあ……えっと。はい」


「だから相良ぐらいしか教室で話さない訳」


「は、はい」


「で。結果的にクラス内の俺の評価と言えば、口数が少なくて地味な男子生徒Aなんだよ」


「……はい」


「そんな男子生徒Aに突然教室に女子が訪ねて来たらどうなると思う? 只でさえ相良と話すぐらいしか口を開かない地味な男子に何で!? てか居たっけ!? ってどう反応していいのかわからない微妙な雰囲気になるんだぞ?」


「…………はい」


「多分その場が静まり返るんじゃねえかな。……うん」


「……」


「みたいな感じな理由だから。俺が行きたいんだが」


「……えっと。なんとなく理由は分かりましたので」


「そっか。ありがとな」


「……」


「……」


「それで……あの」


「ん?」






「何か、すみませんでした……」


「…………おう。こっちもなんか悪かったな」


 先程までの和やかになった空気は何処に行ったのだろうか。

 結局、俺は自分自身で、最後の最後で壊してしまった。





▣ ▣ ▣ ▣ ▣ ▣






 七瀬さんとの会話を終わらせ、斉藤先輩の元に戻った。


 これから、休憩前に聞いた話でシュート練習をするらしい。


「このゴールの両端に置かれたコーンを狙ってシュートを打ってくれ。因みにウチのセレクションでも、これと似たように、指定された所へシュートを打つ試験があるから、本番だと思ってやってくれ。だがその前に──」


 そこで、斉藤先輩は足元に強めなパスを出してきた。


「──!」


 余りに突然だったため、動揺してしまったが、難なく足裏でピタリとトラップした。


「──軽くパスでウォームアップだな」


 何故か不敵な微笑を浮かべた先輩。


「分かりました」


(なんか挑戦的な感じだな)


 それに一々口で構うことはなく、了承した後、既に目先五メートル程に立つ先輩にショートパスにしては強めなボールを出し、対して先輩も難なくインサイドでトラップする。


「ははっ。といっても、もう出来上がってるみたいだし……ダイレクトでいいか?」


 そう聞いてきたので


「──ええ、構いませんよ」


 恐らく、今から小手調べでもしようとしてるのだろう先輩に、何故か俺は、心が何処か、高揚していた。








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