わたしの心中
あの子は、挨拶をしてくれた。
笑顔がかわいかった。
あの人と同じで。
抱くと、声をあげて笑った。
喜んでくれた。
あの人と同じで。
激しくて痛かったけど、頑張ったよ。
ほら、見て。産んだよ。
あなたにそっくり。
ねえ、声をかけてあげてよ。
あなたと私の愛の結晶。
どうして、いなくなるの……?
ああ、泣き声がうるさい。
この子はいらない。あの人の気が引けないなら、いらない。
……ん?
あの人に、そっくり。
うるさい。あの人じゃない。こんなに泣かない。
捨ててしまおう。あの人じゃないのなら。
ばいばい、あの人の偽物。
今度も授かった。あの人の子供かな? しばらくは会ってないけど、授かったってことは、私の思いが通じたからだと思う。
服もいっぱい買おう。きっと優しい子に育つはずだから。いっぱい物を買ってあげるんだ。
ちがう。こんなに泣く子はあの人じゃない。またばいばいしなきゃ。
ーーーーこれは、罪だ。分かっている、重大な犯罪だ。でももう止められないよね。あの人じゃないんだもの。
ああ、また探しにいかなきゃ。優しくなって、あの人に好かれるようになって、幸せにならなきゃ。
今度は、遠くの海の方でも行こう。あの人は、海が好きだから。
もううるさい子は、大嫌い。泣くなよ。そうしたら、今度は口を塞いじゃうからね。
ああ、ナイフをもって、来てくれたのね。あの人に殺されるなんて、夢みたいだ……。