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気だるい日

作者: 案菜

汗が床に滴り始めているのを確認し、私は服を着替え始めた。


どうも梅雨と夏の谷に私は囚われやすい。なぜから、私は毎年この時季には体調が優れたことはないからだ。窓から見える新緑の中にそっと入り、死んでみたいと考えるくらいに私は今、私の体から抜け出したい。じめじめとしたこの感情の行場は見つからない。寝ることも、考えないことも、生きることも疲れてしまった。

着替えを終え、私は布団へ入った。睡魔はやってこない。天井に浮かんでいる木目は怒った誰かの顔に似ている。誰かは思い出せないけれど。熱はどんどん上がってきているような気がする。心臓の音が首の後ろ側から聞こえている。うるさい。

ドカドカトントン。バッタバッタ。ドカドンデンドン。ズンチャカスッチャ。音の渋滞が起きている。

時計のカチコチという規則正しい音が、私の体をメトロノームにしているように感じる。私は機械になっている。暑いとか痛いとか苦しいとか人間が持つべき正しい衝動から解放された存在だ。そう思うと気が楽になる。苦しい気持ちをそっと遠くに飛ばすのだ。夕暮れに飛ばす紙飛行機のように。笹舟を小川に流すときのように。

しかし、気持ちは直ぐに戻ってきた。

ドッコドッコドッコドッコ。

ああ。いつもの太鼓の音が聞こえてきたぞ。それは救急車のドップラー効果よろしく、近づいては離れ、離れては近づいてくる。私の体を突き抜けたと思ったら、私の体に留まることもある。私の体を蝕んでいく。

苦しいという文字が頭の中で反響し続けるのが分かった。でも、どうもしない。ただ時が過ぎるのを待つしかないのだ。

さて。眠りの淵に飛び込む練習を始めるとしようか。

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