岬にて
風渡る
今
飛び立とうとした日傘を
強く握りしめ
石碑の背にある海は
青く
深く
見つめ返して
打ち付けては
砕かれていく
波を覗きこみ
泡沫の中で
不確かなものばかり
想っている
書きかけの
言葉のつづきを
その距離を
あての無い
はじめましてを
水平線から流れ出す世界へ
うなじを露にすれば
脈打つ皮膚
潮風に撫でられ
光に光を連ねれば
輝く水面
やわらかに
喘げ
声音の中で
密やかに泣け
出会うことへの
さりげない
喜びとかなしみ
風渡る
私からあなたへと
ひと知れず贈る
岬にて