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初見殺しとブレイカー  作者: siro kisi
6/10

神器者

ふと、意識が戻る。

まだ、瞼を開けず暗いままだが、

離れた所からであろう生徒の話し声が

聞こえる。つまり、学校内。

そして、微かに漂う薬品の匂いからするに

ここは保健室ということが分かる。


_そうか、オレ。気を失ったんだっけ・・・。


そう思い、やっと瞼を開ける。

見慣れない天井、ベットの周りはカーテンで遮られていた。

自分がいる場所が保健室だということが分かっても

今が何時なのか、あの後どうなったのか

そこまでは、わからなかった。


_誰か、いないのか。


体を起こそうとするが、何やら体が気怠く、重い。

久しぶりの形式保存エクスポートがかなり体に負荷を

掛けていたのかも知れない。

必死の思いで、上半身だけ起こす。

_ん?


オレは自分が被っている掛け布団の膨らみに違和感を感じた。

_あれ・・?なんでこんなに膨らんでるんだ。


それは、明らかにおかしかった。

上半身を起こした今の状態なら

布団の中にはオレの下半身だけが入っているはず。

しかし、そこにはその膨らみだけではなく、明らかに

もう一人いるであろう膨らみ方をしていた。

_ま、まさか。


慌てて、布団をめくる。

体が軋む。しかし、そんなのは気にも止めない程の

衝撃が走った。

そこには、可愛らしい寝息を立て、無防備な姿で寝ている

大和 涼菜の姿があった。


〜日常〜


_Why?

突然、英語になる。英語は苦手だったはずなのに

唐突だと出てきてしまう。それほど、困惑しているという事だった。

この状況が上手く掴めず、まずは目に見える事から整理していく。


ここは保健室。うん問題ない、至って普通。

カーテンで仕切られたベッドの上で休んでいる。うん、これも大丈夫。最近はプライバシーとか

がうるさいからな。うん。

そして、目の前に寝ている大和。はい、ここです。問題はここです。


問題は分かった。

なら、次は頭を使う。自分が気を失うまでの

事を必死に思い出す。それで、何か分かるかも知れない。


能力アビリティを使い、柱の火の玉を弾く。

そしたら、変な声が・・。


_くっ、、!!


そこまで思い出すと急に酷い頭痛に見舞われた。

すると、頭の中をまるで動画を早送りするように記憶のシーンを

思い出す。ぐるぐる頭をそのシーンが回り気持ち悪くなる。

両手で、頭を抑えるが痛みはどんどん酷さを増す。

その時、ピタッと頬に冷たい何かが触れた。

すると、徐々に頭痛が引いていく。


「大丈夫。貴方には私がいるもの。」


声が聞こえる。どこかで聞いたことのある声だ。

その声がする方を見る。そこには、先ほどまで

寝ていた大和の姿があった。そして、あどけないその可愛らしい表情を

見て一瞬ドキッとしてしまう。


「ご、ごめん。起こしちゃったか?」

「大丈夫。そんな事よりもう痛みは引いた?」

「え?あ、あぁ。なんか急に楽になったよ。」

「そう。なら、よかった」

そんな、やりとりの中でも疑問が生まれる。

「てか、なんで頭痛の事を、それに布団に潜り込んだり。あ、あと」

聞きたい事が山ほどあった。

「そんな、一遍に聞かれても困りますよ。ですが、簡潔にお答えするのであれば

そうですね」

そう言うと少し、小悪魔っぽい表情し、笑みを浮かべる。

「貴方と言う存在が我が一族が待ち望んだお方だからです。」

「待ち望んだ?」

何やら、事が大きくなる予感がした。

「はい。人の身にしてアビリティを有する。それが、我が大和一族が古くから

求めていたものでございます。」

「そんなに、珍しいものなのか?人の身でアビリティを扱えるなんて事。」

確かに、過去を振り返ってみると自分以外で同じ様な奴は出会った事は

無かった。それに自分が特別だと考えた事も無かった。

「それはもちろん。歴史上、人の身でアビリティを有する事の出来るお方は

初代大和一族の長である大和タケル様と、貴方様、そしてもう一人の三人しか

いらっしゃいません。」

_三人って・・・。

意外に多いと思ってしまっては自分を特別だと自惚れていたことに

なる。と思いそれ以上それについて考えるのをやめた。

「そのもう一人って?」

今まで出会った事のない自分と同じ様な人物に

少し興味があった。

「はい。イギリスの暴君と言われ、ヨーロッパ全土を治めた。

ラシャール=ヘドガーです。」

イギリスの暴君。その言葉には聞き覚えがあった。

25歳という若さでイギリス兵の隊長になり、能力アビリティ、知力共に

優れる英国の誇るカリスマ。だが、その才とは裏腹に

かなりの野心家だと聞く。

「そんな、奴が・・。」

「そうです。ですが、奴は最低の屑野郎です。もう二度と会いたくありません!」

何やら、訳ありの様な感じであった。それは、この大和の表情を見れば

すぐに分かった。

「会ったことがあるのか?」

「はい。私は最近までイギリスに居ましたから。」

「え?そうなの?」

「と、言っても半年ぐらいですけど。」

「なるほど、彼もまた君達一族が待ち望んだ人だったからか」

徐々に状況が読めてきた。

「お察しの通りです。ですが、貴方とヘドガーはあまりに

違い過ぎます。」

少し、強張った表情で大和は言う。

「何がだ?」

訳ありだと分かっていても聞いてしまう。

「彼に初めて会った時、先ほどと同様な事を言いました」

つまり、大和一族のこと、その身が特別であることなどである。

「私はやっと辿り着いた希望に胸を高ぶらせていました。」

希望?その言葉が胸に引っかかる。

「ですが、彼は・・・」


「特別?そんなのとっくに気づいてる。それに大和一族の事も

知っている。しかし、君の意見は聞きいる事が出来ない。

何故なら、僕はいずれこの世界を手に入れるからだ。」

そう言った後に、手始めだと言われ、大和の所持していた

珍しい能力アビリティ、『能力吸収アビリティポインター』を

持つ”パネル”が狙われたらしい。


「そんな事が・・・。」

「はい。」

大和は静かに返事をした。

「ですが、その後に五十嵐さんの情報が入り驚きました。まさか、同じ

時代に二人も神の器を持つものが現れるなんて。」

大和は一変し表情を明るめ、そして聞き覚えのない単語を言い放った。

「神の器?」

文字から察するに自分の事を表している

のではないか、と言う答えが自分の中に瞬時に出た。

つまり、聞き返したのは問いではなく確認だった。


「神の器とは私たち大和一族の長である大和タケルがそうだった様に

人の身で能力アビリティを扱う事が出来る人の事。そして、

その、能力アビリティを宿した時の者を敬意払い私たちは『神器者じんぎしゃ』と呼んでおります。」

「神器者、、。」

なんとも安直なネーミングだと思ったが、今はそんな事を考えている

場合ではなかった。


つまり、大和は始め、『神器者』の情報を聞き、イギリスにいる

ラシャール=ヘドガーに会いに行ったが、申し出を断られ

さらには命まで狙われて逃げ帰った時にオレの事を聞き

転校してきた、と。

話をまとめ再度確認をとる。


「はい、その通りです。」

なんとも、危険な旅をしてきたものだと同い年ながら

同情の目で大和を見た。

「お前、もしオレの情報がなかったらどうするつもりだったんだよ」

「その時はその時でまた別の手を考えたと思います。」

「そっか」

そう言うと、つい頬が緩む。別に可笑しな会話はない。

面白い事もない。しかし、何故か頬が緩んだ。この娘が可愛いから?

それとも、色々な話を聞き、今目の前に元気な姿でいる事に少し

安堵してるから?なハッキリとした理由はない。だが、

出会って間もないのに何故か安心する。それだけはハッキリと

感じていた。


「まさか、君とこうして話が出来るなんて思ってもみなかった。」

頬が緩んだせいか、つい思ったことがぽろっと出た。

「なぜですか?」

大和はその綺麗に整った顔に疑問の表情を浮かべ

首を傾げる。

「だって、一番最初、教室で目が合った時の視線スゲー

恐ろしかったからさ」

はは、と笑い話の様に話す。今となってはというやつだ。

「はい、恥ずかしながら最初の頃の私は前の一件もあり

どこかピリピリしていたのかもしれません」

そう言うと、大和は頬を赤らめ俯く。

それは、なんとも可愛らしいものだった。

_やっぱりか。


話を聞きてて、もしかしてとは

思っていたがあの目はオレ個人に対して恨みなどではなく

『神器者』という者に対する注意深い目であることが

分かった。そして、その事に関して懸念を抱いていたが

自分の事ではないと分かり彼女に対する

警戒の念が解けた。


そうすると、その後は時間を忘れ、(元々何時だか分からないが・・)

大和と会話が弾んだ。


そう、心配しに見舞いに来た

あいつが来るまでは。。












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