始まり
頑張ります。
世の中は、アビリティの量産化に成功してから
劇的に変化していった。
アビリティの能力は様々で
”加速”や”倍加”なその能力を有するアビリティを
手に入れることで所持者の身体能力の増加。
”火”、”水”などを意のままに操るといった特殊なことも
可能になった。
これらは最初、この世にあってならぬ異能の力とされ
太古より封印され、人目につかぬ場所に保管されていた。
しかし、その異能はとても強力なもので
当時、異能が封印されていた場所を守護していた
大和一族の長、大和タケルはこのままでは封印がいずれ
解け、世界に多大なる影響を与えると
考え、一人の天才学者にこの異能の力をどうにか
できないかと依頼した。
そして___。
ドンッ。。
鈍い音がした。と同時に頭に痛みが走った。
オレはその痛みで目が覚めた。
机の上でうつ伏せになっている体制から
ひょこっと顔だけをあげ、前を見ると
そこには眉間にしわを寄せ、いかにも怒っている表情をした
担任の如月 千代がいた。
「五十嵐くん?」
と言い、その後に無言の圧力をかけてきた。
「せ、先生そんなに怒るとさらにしわが増え、、」
「あぁ?」
やばい、思わず口が滑ってしまった。そして
無言の圧力がさらに増した気がした。
_鬼みたいだな。。うん。
と思っていたその時
「先生」
どこかで聞いてような透き通る綺麗な声がした。
「あ、ごめんなさいね。つい。」
如月先生はその一言で我に帰ると
てへ、と小さく舌をだした。
_おい、可愛くないぞ。
「ごめんなさいね、大和さん。じゃあ、続きを読んでくれる?」
と如月先生が言う。
「はい。」
その透き通る綺麗な声は一言返事をした。
その声がした方を見ると、そこには
席を立ち、両手で教科書を持ち
途中で終わってしまったアビリティの歴史についての続きを読んでいる
一人の女の子がいた。
_どこかで聞いたことがあると思ったら
さっき、うっすらと聞こえていた声だ。
この娘が音読してたのか。
ってこんな娘いたっけ?
オレはそう思い横の席の女の子に聞いた。
「あんな娘このクラスにいたっけ?」
オレはなるべく小さくかつ隣の女の子に聞こえる声で話しかけた。
「一昨日、転校してきた大和さんだよ。五十嵐くん昨日、一昨日と学校休んでたから
知らないのも無理ないと思うけど。。」
隣の女の子もオレと同じように小さな声で答えた。
_そっか、転校生だったのか。って大和さんだって?
それもどっかで聞いたことあるような、、、
あっ!!
思わず声が出そうになった。
しかし、音読中の彼女の邪魔、そして
この静かな雰囲気を壊すまいと必死に両手を抑えた。
何より、先ほどまで鬼の形相を浮かべていた
如月先生にまた怒られたくはなかった。
_大和って言えばさっきうっすら聞こえてきた
アビリティの歴史に出てきた異能の封印を守護してきた
大和と同じ苗字じゃねーか。もしかして、、。
「__と、なりアビリティは今では私たちにとってなくてはならない
ものになりました。」
音読を終えた大和は自分の席に着いた。
そして、さっきまで読んでいた
教科書からオレへと視線が移るのを感じた。
そして、一瞬だけ目が合うと
また、視線を教科書の方に戻した。
_なんだ。さっきの音読を中断させちまったから
怒ってんのか?
いつものオレなら女子と目が合うと
こいつオレに気があるんじゃ、、。
なんて、思うところだが流石に今回は勘違いで済む
レベルの視線ではなかった。
その少女の目はとても冷たく冷酷なものだったからである。
キーンコーン
カーンコーン
と授業の終了を告げるチャイムが鳴った。
アビリティの授業は4限目で次の時間は
昼休みだった。
_ってオレ4限目まで寝てたのか。。
最近、疲れてんのかな、オレ。まだ16なのに。。
「なーに、辛気臭い顔してんのよ、慧。ほら、ご飯食べるわよ。」
といきなり背中を叩かれた。
オレは後ろを振り向くとそこには幼馴染の東城 涼華の姿があった。
「痛いな、いきなり叩くなって。」
「なによ、寝起きで辛気臭い顔してたあんたを起こしてあげる為に私がわざわざ
叩いてあげたんじゃない」
「叩いてあげたって、お前な。。」
涼華は昔から何かと上から目線で(何故かオレにだけ)話してくる。
「ほら、これ。」
と言いながら涼華はオレの前に弁当を置き
オレの机を挟んだ向かい側に座る。
「お、いつもありがとな。」
オレはそう言いながらその手作りであろう弁当を開けた。
そこにはびっしりと一面真っ白なご飯が詰められていた。
と言うよりそれしかなかった。
「おい、涼華なんだこれは。。新手のイジメか?おい。」
オレは高校生の昼休み、そして幼馴染の手作り弁当。という
最高のシチュエーションで期待に胸躍らせていたにも
関わらずこの仕打ちはなんだ。せめて日の丸だろ。なんだよ
一面真っ白って。
「ごめんなさいね、慧。今日は生徒会の役員の集まりで朝
お弁当作る時間、なかったのよ。」
といい、てへ、と舌を出す涼華。
_いや、オレはそんなのに惑わせられないぞ。
確かにこいつはオレの目から見ても可愛い部類に入るだろう。
黒髪ロングにパッチリと開いた二重の瞳
童顔と思わせるほどの顔つきにも関わらず、出るところはしっかり出て
引き締まるところはしっかりと引き締まっている大人っぽい風貌との
ギャップを兼ね備え、噂では校内にファンクラブまであるとまで言われる
ほどらしい。
だが、そんなの知るか。オレの食べ物の恨みはそんな
てへ、で許されるものでは決してない。
「そんな、怖い顔しないで、慧。お詫びに何でも言うことひとつだけ
聞いてあげるから♡」
涼華はまるで小悪魔のように言ってきた。
「なに、、?何でもだと。」
一般の男子なら涼華にそんなこと言われたら
思わずその目線を胸元まで下げてしまうだろう。
だが、オレにとってそんなことはもはや日常茶飯事であった。
_たく、いつもこうして話を反らすんだよな、こいつ。
はぁ、
とため息を吐いた。しかし、こんな事を誰かに聞かれていたらあらぬ
誤解が、、と思いオレは視線を涼華から横にずらしクラスを
見渡した。幸い周りにはあまり人はいなかったが
オレの視線は涼華戻るのではなく、窓際にいた一人の女の子を
見ていたそこには
先ほどの授業で音読していた大和が一人で昼食を食べる姿があった。
「あ。」
今度はおもわず口に出してしまった。
「どうしたのよ。慧。」
と言うと涼華もオレと同じ方向を向く
「大和さんがどうかしたの?」
涼華が訪ねてくる。
「お前、あの娘の事、知ってるのか?」
「そりゃ、そうでしょ。なんたってこの学校に転校してきたってだけで
注目浴びるのに、さらにあの大和一族の末裔なんだもの。」
「やっぱり、そうだったのか。」
「まぁ、彼女がこの学園に来るのは必然だったのかもね。」
そう言うと涼華は目線の戻し、購買で買ったであろうパンを食べて・・・。
「って、お前なんでパン食べてんだよ!!」
「え?お腹が空いたからだよ?」
などと涼華はとぼける。
_くそぉ、、この白飯だけで一体オレは
オレはどうしたら。。
なんて、自分でも思うほど
能天気な事を考えると同時に涼華の言った。
「「彼女がこの学園に来るのは必然だってのかもね。」」
と言った事がどういうことなのかを
考えていた。
しかし、答えは至ってシンプルなもの
だった。何故なら、オレが今いるこの学園、
鳴斎学園は日本有数のアビリティを武力と考えた学園であり、
それを、制御し、有することで国を維持できると考えた
初代理事長である柱鳴斎が建てた学園である。
だが、これだけでは大和との関わりはないと
思われるが、何を隠そう太古に封印された異能の扱いを
大和タケルから依頼されたのがこの柱鳴斎なのである。
つまり、この学園は初代理事長の考えを元に
建設された学園であると共に大和の一族の意思を象徴したとも
言える学園なのである。
だが、オレは分からない事が一つだけあった。
それは、オレが一瞬感じたあの冷たく閉ざされた冷酷な瞳だった。