お年玉
ほのぼの系のお話。
年越し、お正月。
両親に連れられて大好きな祖母に会いに来た小学生の孫、〇〇。
「おばあちゃん……!」
〇〇ははしゃぎながら、嬉しそうに祖母に抱きついた。しかし祖母は怖い顔でピシャッ、と〇〇を叱った。
「あたしゃ耳が近いんだよ! もっと小さな声で、遠くから話しておくれ」
〇〇は今にも泣きそうな顔でショボンとしてしながら、祖母から二メートル距離をとった。
「……」
もじもじしながらぼそぼそ話す〇〇。
「いやいや、あたしこそ急に怒ってごめんねぇ」
慌てた様子の祖母に、〇〇はブンブンと首を振った。
「仲直りしてくれるかい」
「……!」
〇〇はにっこりと笑って祖母に近づき、指きりをした。
「はい、お年玉だよ。大事に使いんしゃい」
祖母は〇〇にお年玉を手渡した。
「……!!」
先ほどよりももっと小さな声で、〇〇ははしゃぎながら返事をした。
「……」
祖母は嬉しくなって思わず〇〇の頭をなでたのだった。
□■□■
〇〇は車に乗り、祖母に向かってずっとずっと手を振っていた。祖母も庭に出て、笑顔で手を振り返していた。
祖母はゆったりとした足取りで玄関まで戻って来た。
「本当にこの耳は不便だねぇ……昔より耳が遠くなってくれて助かったよ。まぁその分、まだまだ長生きするのかもしれんな」
居間にやってくると数年前に亡くなった、〇〇の祖父と祖母が仲良く笑い合う写真が飾られていた。
「今年も孫が元気で安心したのぅ、じぃさんや。ひ孫を見るまではそっちで待っていておくれ」
祖母の心は温かかった。
□■□■
「お父さん、お母さん、次におばあちゃんに会えるのっていつかなぁ?」
〇〇ははしゃいだ様子だが、すぐにはしゃぎ疲れて寝てしまうのだろう。
「本当に〇〇はおばあちゃんが大好きだなぁ」
〇〇の父は車の運転をしながらそう言った。
「うん! 大好き!!」
「○○はいつがいい?」
〇〇の母は微笑みながら〇〇の頭をなでていた。
「えーとねぇ……」
車内にも温かい空気が流れていたのだった。
明けましておめでとうございます。
〇〇、そして「……」
そこに入るのは、小学生の時の自分の名前と言葉、かもしれません。