表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/15

お年玉

 ほのぼの系のお話。

 年越し、お正月。

 両親に連れられて大好きな祖母に会いに来た小学生の孫、〇〇。


「おばあちゃん……!」


 〇〇ははしゃぎながら、嬉しそうに祖母に抱きついた。しかし祖母は怖い顔でピシャッ、と〇〇を叱った。


「あたしゃ耳が近いんだよ! もっと小さな声で、遠くから話しておくれ」


 〇〇は今にも泣きそうな顔でショボンとしてしながら、祖母から二メートル距離をとった。


「……」


 もじもじしながらぼそぼそ話す〇〇。


「いやいや、あたしこそ急に怒ってごめんねぇ」


 慌てた様子の祖母に、〇〇はブンブンと首を振った。


「仲直りしてくれるかい」

「……!」


 〇〇はにっこりと笑って祖母に近づき、指きりをした。


「はい、お年玉だよ。大事に使いんしゃい」


 祖母は〇〇にお年玉を手渡した。


「……!!」


 先ほどよりももっと小さな声で、〇〇ははしゃぎながら返事をした。


「……」


 祖母は嬉しくなって思わず〇〇の頭をなでたのだった。



□■□■



 〇〇は車に乗り、祖母に向かってずっとずっと手を振っていた。祖母も庭に出て、笑顔で手を振り返していた。

 祖母はゆったりとした足取りで玄関まで戻って来た。


「本当にこの耳は不便だねぇ……昔より耳が遠くなってくれて助かったよ。まぁその分、まだまだ長生きするのかもしれんな」


 居間にやってくると数年前に亡くなった、〇〇の祖父と祖母が仲良く笑い合う写真が飾られていた。


「今年も孫が元気で安心したのぅ、じぃさんや。ひ孫を見るまではそっちで待っていておくれ」


 祖母の心は温かかった。



□■□■



「お父さん、お母さん、次におばあちゃんに会えるのっていつかなぁ?」


 〇〇ははしゃいだ様子だが、すぐにはしゃぎ疲れて寝てしまうのだろう。


「本当に〇〇はおばあちゃんが大好きだなぁ」


 〇〇の父は車の運転をしながらそう言った。


「うん! 大好き!!」

「○○はいつがいい?」


 〇〇の母は微笑みながら〇〇の頭をなでていた。


「えーとねぇ……」


 車内にも温かい空気が流れていたのだった。

 明けましておめでとうございます。


 〇〇、そして「……」

 そこに入るのは、小学生の時の自分の名前と言葉、かもしれません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ