表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/15

Last Christmas

 失恋ものです。

 去年のクリスマス、僕はメアリーに僕の心をあげたんだ。けれどまさにその翌日、メアリーはあっさりと僕を捨ててしまったんだ。

 彼女とは大学で偶然隣の席になって以来、よく話す仲だ。美人で明るくて気さくなメアリー。僕には高値の花だったけれど、クリスマスに出かけることをOKしてくれたから、てっきり彼女も僕のことを好きなんだと思ってしまったんだ……。


「ごめんね、クリス。寂しかったからついOKしてしまっただけで、恋愛感情は持ってないの」


 僕は目の前が真っ暗になった。どうして君を好きになってしまったんだろう。心が痛くて涙がとまらないよ。

 今度は自分自身を涙から救うために、メアリー、君以外の誰かに心をあげるつもりだ。

 あんな思いはもう二度としたくない。

 今だって僕は君をわざと避けている。君を諦めたいから。それなのになぜか君は僕と目を合わせようとしてくる。

 なぁ、教えてくれよ、メアリー。

 僕の気持ちををまだ覚えているのかい?

 あれからもう一年がたつんだよ。

 君がたとえ僕の気持ちを覚えていなくても不思議じゃないよ。君にとって僕は大した存在じゃないなんてことはよく分かってる。

 去年のクリスマス、僕はネックレスをラッピングして君にプレゼントしたね。 "I love you"と書いたメッセージカードを添えてね。

 勇気が出なくて直接言うことができなかったんだ。今思うとそれが良くなかったのかもしれないな。

 でもね、メアリー、僕は本気だったんだよ。

 僕は本当にバカな男だ……。

 もし君が今僕にキスをしてくれたらまた僕は君に騙されてしまうだろう。本当にちょろいものさ。



◇◆◇◆



 今年のクリスマスパーティーは親友のジョンの部屋でやることになった。メアリーと会いたくはなかったけれど、ジョンの家なら行かない訳にもいかない。部屋が狭いから友だちと肩がぶつかる。そうしてお酒を飲んで騒いでいるといつの間にか深夜を回ってしまったから、みんな疲れた目をしていた。

 僕は君という冷たい氷のような魂を持つ人から逃げ惑うばかり。それでも君は近寄って寄りかかってくるんだ。


「あなたって頼りになるもの」

「えっ、僕が?」


 メアリーの声やぬくもりに勘違いをしてしまいそうになる。その場限りの慰めの相手として選ばれただけの存在なのに。

 後から知ったのだけれど、メアリーの恋人の顔はジョンだった。複雑な気持ちだった。相手がメアリーじゃなかったら、いくらでも恋の応援をしたのに。

 ジョンの親友だからか、今だってジョンのことを僕に相談してくる。心の中でジョンへの嫉妬の炎がメラメラと燃え上がった。

 かけがえのない大切な親友なのに、こんなことを思ってしまう僕はなんて醜い心の持ち主なんだろう。ジョンは何も悪くないのにね。

 メアリー、君は僕の心をバラバラに引き裂いたんだよ? 分かっているの?


「メアリー、真実の愛を見つけたから、僕はもう君に騙されないからね」


 僕は思わず嘘をついてしまったんだ。新しい相手なんてどこにもいないのに。

 ひょっとしたら来年のクリスマスには、メアリーよりもずっと素晴らしい彼女が……なんて希望を持つくらい、いいよな。一人ぼっちのクリスマスは今年で最後にしたい。

 そう思いながら、ジョンの部屋に飾られたクリスマスツリーを見つめた。

 Whamの「Last Christmas」の歌詞を元に独自の解釈を加えたものです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ