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悪魔のドルチェ

 甘すぎて死にそうになりました←

 恋愛ものになります。

 空を飛んでる!?

 わたしがみつけたのは黒い翼の生えた人のようなものだった。


「ひょっとして……悪魔?」


 これは幻覚?、と思っているうちに、悪魔かもしれないその人はバランスをとれなくなったのか落下し始めた。しかもよくよく確認するとこちらに向かって落ちてきている。


「に、逃げなきゃ」


 わたしはそう思いながらもなぜかその場を離れることができなかった。其の人は私のいた近くの場所に全身を打ちつけるようにして落ちてきたが、不思議なことに地面がへこんでいないし、その人が落ちた衝撃音もしなかった。


「あの、大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫ですよ」

 

 わたしは目を見開いた。

 目の前で体を起こし立ち上がったそれは黒髪に緑の瞳の美しすぎる青年だった。冷たそうじゃなく、少し真面目そうな顔立ち。それに薔薇の花のような香りを纏っている。

 彼の背からいつの間にか黒い翼が消えていた。


「私はディオ。ところであなたは人間ですよね? どうして悪魔である私の姿が見えているんですか?」


 ディオは驚いた顔でわたしを見ている。


「えっ……分からないです」


 そう言うとディオと名乗った悪魔は考え込んでしまう。

 そこで名を名乗ることを忘れていたことに気づいてわたしも名乗った。


「あっ、わたしは榛名寧です」


 そう言ってにっこり笑う。


「あなたは寧さんと言うんですか。素敵な名前ですね」


 優しく微笑まれて、わたしの頬は赤くなる。


「ありがとうございます」


 反射的にはにかんでお礼を言った。


「……でも残念ですね。見られてしまいましたからには、仕方がないですよね」


 ディオは始めはいたずらっぽそうに、次は優しく微笑んでくれる。ディオはわたしの目の前でひざまづき、愛しそうな顔で私の手をとった。


「あなたに永遠の忠誠を誓います。どうか私だけの花嫁になって下さい、寧さん」


 美しい声が耳に残っている上に、すごくキレイなディオの顔が私をみつめている。緑の瞳に囚われてしまいそう。

 ……なんだかすごくクラクラする。これが悪魔の力なのかな?

 はっと気が付くと、なんだか視線が痛いような……と思ったら、いつの間にか人が集まっていた。特に女の人たちは私を羨ましそうに見ている。


「返事をいただけますか?」


 ……この状況での答えは一つしかないでしょ!


 わたしは精一杯幸せそうに微笑んだ。


「……喜んで」


 そして予想通り、周りがうるさくなってしまった。



❤❤❤



「もう! どうしてあんなことを言ったんですか!」


人間界用のディオの家に着いた後、すぐに私は怒った。


「ごめんなさい。つい……」

「ディオさんの容姿は目立ちます。人がいるところでプロポーズをしたら、噂が広がって、ディオさんと絶対に結婚しなくちゃいけなくなるじゃないですか!」

「私は構いませんよ。寧さんはとても可愛いですし、側にいてくれたらすごく嬉しいです」


 ディオは微笑みながら言う。まだ出会ったばかりのディオに何が分かると言うのだろう。


「可愛くなんかないですよ。わたしぐらいの容姿の子なんてどこにでもいるんですから」


 わたしがそう言うと、ディオは首をかしげた。


「どうして他人と比較するんですか? 寧さんは一人しかいないのに」

「えっ……?」


 驚いているわたしとディオの目が合ってしまう。わたしはひきつけられて、目が合ったまま動けなくなってしまった。

ディオはクラクラし出したわたしに真剣な表情で言った。


「全員が違うからこそ人は誰かを好きになるんです。寧さんは寧さんにしかない魅力をちゃんと持っていますよ」

「……っ」


 この人はやっぱり悪魔だ。優しそうな顔をしているけど、わたしを誘惑してくる。危ない人だ。

 そう思ってもひかれている自分に気づいてしまう。


(悪魔に恋なんて、不幸にしかならない気がするもの)


 わたしは絶対に好きになってはいけない、と思った。好きになったらディオにいいようにされてしまうだろうから。


「……それにしても、男の前でそんな顔しちゃダメですよ。食べたくなってしまいますからね」


 そう言ってディオは微笑んだ。

 わたしはドキドキしすぎてディオの顔をまっすぐ見れなかった。


(わたしの心臓、持つかなぁ……)


 わたしは不安でいっぱいだった。



❤❤❤



「誘惑しているのは私じゃなくて寧さんですよ」


 平静な顔のまま寧の側に居られず、すぐに逃げてきてしまったディオ。


(寧さん、私の家について来ちゃだめでしょう)


 悪魔なのに寧の危機管理の薄さに思わず頭を抱えたくなってしまう。


「寧さんの笑顔を初めて見た時に、恋してしまったのでしょう。私としたことが……」


 ディオは苦笑しながら髪をかき上げた。


(寧さんほど清らかで美しい魂は見たことがありません。その魂を堕落させれば甘くなるはずなのですが……)


 悪魔にとって人間の魂を堕落させることは、退屈を紛らわせるゲームとしては素晴らしいものだった。それに神の聖なる力を弱めることができるので、そういう意味でも一石二鳥だった。


「私は、悪魔失格ですね。今ですら、寧さんを手放せる自信がありません……」


 ディオは深いため息をひとつついた。



❤❤❤



 悪魔は優しい顔をして人間の乙女を誘惑する。全てはその魂を手に入れるため。けれど先に魂を奪われてしまったのは悪魔の方だった。


「寧さん」


 前を歩く寧に声をかけるディオ。


「何ですか」


 振り返って小首をかしげる寧を見て、頬を緩ませるディオ。


「寧さん、好きですよ」

「! ……そ、そんなこと思ってもいないのでしょう!?」


 動揺して赤くなった寧は顔を見られないように早足で先に歩いて行ってしまう。


「逃がしませんからね」


 色欲の悪魔はくすくすと笑った。


 ――悪魔のドルチェ(デザート)は、いつも赤くて甘い。

 だいぶ前に書いたものを若干加筆して投稿しました。

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