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時計うさぎとネコの剣士

ほんわか系、ちょっと切ない、恋愛物のお話です。

 にんげんたちの住む世界のとなりには、どうぶつたちの住む世界がありました。どうぶつたちの住む世界には、いろんなどうぶつたちがくらしています。


 にんげんたちは、どうぶつたちの住む世界には行けませんが、どうぶつたちは、にんげんたちの住む世界に行くことができました。

 そしてどうぶつたちの中には、にんげんの友だちになったり、にんげんのふりをして、楽しくくらすものたちがあらわれました。



 ――「どうぶつたちの世界のお話」



 .☆.。.:.+*:゜+。 .゜・*..☆.。.:*・°.*・゜ .゜・*..☆.。.:*・°.*・゜ .゜・*..☆.



 ある森の中に、うさぎの女の子がおりました。耳はぴん、と立っていて、白くてふわふわとした体に、くりくりとした黒い目が、とても可愛らしいです。

 その女の子は、みんなからうさぎちゃん、と呼ばれています。


 うさぎちゃんは、むらさきの屋根をもったレンガのおうちに、一人で住んでいました。


 うさぎちゃんはおきにいりのレースがついた、むらさきいろのワンピースを着て、せっせと洗濯物を干しています。

 空にはふわふわとした雲が、うかんでいました。


「今日はいい天気!」


 物干しざおに干された洗濯物が、風にたなびきます。

 うさぎちゃんは空になった、洗濯かごを抱えて。とことこ、とおうちの中に入って行きました。


 うさぎちゃんはいつものように、寝かしておいたパイ生地を、とだなから取り出します。真っ赤ないちごといちごのジャムをのせて、オーブンに入れました。


 えんとつからは、おいしそうなにおいが、もくもく、と立ち上がりました。そのにおいにつられて、うさぎちゃんの所に、あるどうぶつがやってきたのです。

 りーんりーん、とすずが鳴ります。ドアベルの音です。


「ごめんなさい、ちょっと待っててもらえないかな?」


 うさぎちゃんはドアにむかって、大きな声でそう言います。


 そうしてから、てきぱきとお客さんへのじゅんびをします。


 タルトをオーブンから取り出しました。

 あまいあまい、いいにおいが鼻をくすぐります。


 うさぎちゃんは、焼きあがったばかりのタルトに、切れこみをいれました。さくっ、さくっ、といい音がします。


 いちごのタルトと紅茶のポット、カップを、トレーにのせました。お庭にある白いテーブルセットに、それを運びます。


「ネル、いらっしゃい。待たせちゃってごめんね」

「いや、早く来すぎたオレが悪い」


 ネルは、はいいろの長いふわふわとした毛に、空のように青い、すんだ目。腰には、きらりとひかる剣をさしています。

 うさぎちゃんは、笑顔をうかべます。


「冷めちゃうし、食べましょう?」

「ああ、そうだな」


 紅茶を、カップになみなみとそそぎます。白い湯気がたちあがり、いいかおりがしました。


「いつも通りうまい」

「! ふふ、うれしいなぁ」

「ありがとう、そろそろ仕事に戻る」

「うん、分かったわ」


 紅茶をのみ、タルトを食べ終わると、ネルはその場を後にしました。


 ネルはうさぎちゃんの思い人でした。けれど種族もちがいますし、何より彼には仕事があります。


「ネル・・・・・・」


 うさぎちゃんは、ネルと会った後、いつも涙を流すのでした。



 .☆.。.:.+*:゜+。 .゜・*..☆.。.:*・°.*・゜ .゜・*..☆.。.:*・°.*・゜ .゜・*..☆.



「今日もうまかったな・・・・・・」


 ネルは仕事場へと、歩いています。


「うさぎ・・・・・・」


 ネルは、はぁ、とため息をつきました。ネルにとっても、うさぎちゃんとの時間は、大切なものだったのです。


 ネルも、うさぎちゃんのことを思っていました。けれど、ネルは門番として、やってくるいきものたちと、たたかうこともあります。種族もちがいます。


 それでも、ただただ会いたいのです。えがおを守りたいのです。


「いまは何をしているんだろうな・・・・・・」


 ネルはきょうも、だいすきなうさぎちゃんと、この世界のへいわを守るため、門番として仕事をしているのです。

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