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お礼小話1  ~サイラスの出会い~ 

 あの、わずか10日ばかりの間に、なんとお気に入りが2350件突破し、感想もお褒めの言葉ばかりを頂いて、とうとう感謝爆発しました。

 本編ではないのですが、どうかお読みいただけると嬉しいです。

 いつかは書こうと思っていた、サイラス視点です。

 ぶっちゃけ腹黒です。今更ですが、イメージは崩れず、より強固なものになりそうですね。

 それから後でお知らせがあります。まずはどうぞ!

 俺が彼女のことを聞いたのは、隣国の式典に参加するため王城に滞在していた時だった。

 ライルラド国の皇太子である友人のライアン・エディ・ライルラドが、世間話程度に聞いてきたことだった。

 「お前の妹、今いくつだっけ?」

 「10だ。それがどうした?」

 「いやぁ、ちょっと聞いた話なんだけどさ。うちの上位貴族の38才のある侯爵がさ、12才の令嬢を婚約者にしたいって届出があったらしいんだ」

 「は?」

 どんな幼児趣味だ、そいつ。

 速攻で変態のレッテルを貼り付けた。

 ライアンはこの国では多い金髪に、琥珀の目をしていた。剣術の邪魔になるからと金髪は短くしていたが、体質なのか鍛えてもなかなか筋肉が付かず、すらりとしていて、巷で話題の理想の王子様という姿をしていた。目はとても優しげで、黙っていても尋問ができると言われた俺と比べると、天使と悪魔くらい違いがある。

 ……ちなみに目つきは祖父似らしい。

 孫の中で泣かなかったのは俺だけだ。なんせその目つきは毎日鏡で見てるからな。

 「それで、その届けは受理されたのか?」

 「そうなんだ。なんでか受理されたらしくて、管轄してる奴らが大騒ぎでさ。本来なら議論になるはずなのに、簡単に受理されたんで職務怠慢じゃないかって話が出てて。でも騒いだからって、1度受理された貴族の婚約が簡単に覆るわけないだろう。だから可愛そうだって話が出てるよ」

 「金銭がらみだろう」

 良くある話だ、と思う。

 金銭問題で婚約が成立するのはどこの国でも良くある。たとえ商家といえど下位貴族と縁を結ぶのは珍しくないし、それが貴族間でのこととなると当たり前がまかり通る。

 「いや、特にその話はないみたいだけど、その令嬢がかなりの美少女らしいよ」

 「へぇ」

 特に感情はなかったが、正直予想できた答えにドン引きした。

 「俺達も16になるから、そろそろそんな話も現実味を帯びてくるけど、まさか社交界デビューも前で3倍以上の相手に嫁ぐとか、俺なら逃げるね」

 「12の子どもが逃げられるわけないだろう」

 親が逃がすか、家のために嫁がせるかどっちかしかない。

 そのときは他人ごととして聞いていた。



 3年後。

 12才の幼い令嬢の婚約話も、変態幼児趣味侯爵の話もすっかり忘れていた。

 俺が彼女を初めて見たのは、ライアンの誕生日のパーティーに招待された時だった。

 着いたばかりだったが、剣術が少しは成長したか見てやろうとライアンを探して中庭近くの廊下を歩いている時だった。

 丁度太い柱の向こうに、ライアンが見えた。

 なぜか中庭のほうをじっと見て、動かない。

 何かあったのだろうか。

 手を上げ、声をかけようと口を開きかけた時だった。

 「何うじうじしてますの!?さっさとお行きなさいませっ!」

 少女の甲高い声とともに、ライアンが前方につんのめった。

 良く見ると、金髪の少女がドレスをたくし上げ、見事に右足を蹴りだしていた。

 細い足だったが、一応鍛えている男が倒れるくらいの力があったらしい。

 哀れ、ライアンの背中にはしわがない服が災いして、くぼんだしわができていた。

 年下の少女は俺が言うのもなんだが、目つきが悪かった。だが、すらりとした背に、出るとこでた体型。幼いとは思うものの、なぜか不釣合いな色気を持った美少女だった。

 「リシャーヌ様があちらで殿下の取巻きに囲まれてますのよ。さっさと行って告白してさらってきたらよろしいですわ!」

 「えぇ!?君がいつものように意地悪に見せかけて助ければいいじゃないか。それを俺が慰める」

 「そのパターンはもう飽きましたの。いい加減鈍いリシャーヌ様に、わたくしも作戦変更せざるを得ませんでした。リシャーヌ様は夢見る少女ではなく、現実しか見ない方です。もはや単刀直入にズバッと告白がベストです!」

 「えぇ!?まだ心の準備できてないよ!」

 「んまぁっ!なんてバカなんでしょっ!!」

 「え、君、俺、王子なんだけど……」

 「好きな女に告白できないような男などゴミですわっ!」

 「!」

 男はあまりの衝撃に、その場にがくりと膝をついた。


 ……あれは誰だろう。


 目つきの悪い年下の美少女の言葉に、驚き、焦り、呆然として膝をつく男。

 努力家で、一直線な前向きで明るいライアンはどこ行った!

 いや、むしろあのしょぼーんとしているのが本当にライアンなのか!?ニセモノか弟の間違いではないだろうか。

 ごしごしと目をこすり、ついでに目頭を揉んでもう1度確認してみる。


 ……ライアンだ。


 「さぁさぁ!男になるかゴミになるか二択ですわよ!」

 すごい二択だ。

 ライアンはキッと顔を上げ、すくっと立ち上がった。

 「俺は男だ」

 ここでゴミを選択していたら、俺は友人をやめただろう。

 ライアンが力強く宣言すると、美少女はこくりとうなずいた。

 「もちろんですわ。ゴミの王などいりません。とっとと王位継承権放棄して引きこもっていただきたいですわ」

 そうだな、ライアンには弟もいるしな。

 ゴミの王など侵略しやすいだろう。

 他国に攻められる前に、せめて友人の情けだ。うちが侵略()ろう。

 美少女の言葉に同意していると、ライアンはタタッと駆け出していった。

 どうやらリシャーヌという娘の下に向かったらしい。

 「さぁ、仕上げですわ」

 にたりと笑った美少女に、どこか近親感を覚えた。

 あ、あれだ。あの顔は俺が相手にトドメをさす時の顔に似てる。

 ふむっとうなずいていると、いつの間にか美少女は消えていた。

 

 しまった!ライアンの一世一代の告白現場が見れるチャンスを逃した!!


 やけにすばやい美少女の行動に、油断していたとはいえ出し抜かれた俺は、より一層の鍛錬を決心した。

 その後、王城内の1室で、幸せそうなライアンとやや緊張した面持ちの女性を見つけた。

 理想の王子様はいじわる女達からお姫様を救い出し、めでたく思いを告げたのだ。

 うちの妹が喜びそうなことが、まさか目の前で起きるとは。

 おもわず頭が痛くなったが、まずは視界からこの2人を遮断するのが特効薬と、俺は何もせず黙って開きかけたドアを閉めた。

 「あら?今ノックがありましたのに…」

 閉じられた音にリシャーヌは首を傾げた。

 「え?誰か来たかい?」

 すっかり舞い上がったライアンには、ノックの音すら聞こえていなかった。


 ふと中庭を通り、あの美少女のことを思い出した。

 そういえば彼女はどこへ行ったのだろうか。

 まぁ、明日のパーティーには貴族ならほとんどの人々が参加するはずだから、そこでじっくり探せばいいだろう。幸い貴賓席は王族席に近いので、参加者が王やライアンに挨拶するのを間近で見られる。

 だから必ず見つかると思っていた。

 翌日。

 パーティー会場に彼女はいなかった。

 人ごみの中を探し回り、彼女に良く似た目つきの悪い青年はいたが、彼もすぐ見失った。

 帰国前に、幸せそうなライアンを問い詰めた。

 あの痴態を見られていたと知ったライアンは真っ青になり、俺の質問に素直に答えてくれた。

 そこで知ったのだ。彼女が、あの変態侯爵の婚約者から上手く逃げ出した伯爵令嬢だということを。

 

 「あいつは美しくなる。だが、トラウマがあっておそらくまともな恋愛は難しいだろう。なんたって俺を叱咤するくらいだからな」

 偉そうに語るな、ライアン。お前、足蹴にされてたじゃないか。

 ついでにゴミと1度言われただろう。

 俺の生暖かい視線をまるっと無視し、ライアンはあわてたように付け足した。

 「でもリシャーヌと思いが通じ合ったのも彼女のおかげだ。彼女はとても頭が良いし、本当はいい意味で社交性があるんだ。でもそれはこの国では上手く発揮できないだろう」

 残念だ、とつぶやくライアン。

 「良く彼女が協力してくれたな」

 「彼女の兄が騎士団にいる。そのうち近衛隊に配属されるだろう腕前だ」

 「そうか」

 兄がどのような性格か知らないが、主を思って妹に相談したか、己の出世の為か、はたまた違う思惑があったのか。どちらにせよ、ライアンの覚えがめでたい兄は、いずれこの国の王となる人物に大きな貸しを作ったという事だ。

 「見返りは何だった?」

 「見返り?」

 その意味何だったかな、とライアンは一瞬考えたようだ。

 「あ、いや、それが何も言われなかったのだ。彼女もいらないと言うし、兄も妹がいらないというならそれでと言うし。ちょくちょく個人を呼び出すわけにも行かないから、それっきりになってしまって」

 「それおかしくないか?大丈夫なのかその兄妹は」

 訝しがる俺に、ライアンはははっと笑った。

 「大丈夫だよ、サイラス。彼はとてもいい奴だ。それにこのままでは俺もすっきりしないので、何かの時には便宜を図るつもりだよ」

 いや、それが一番厄介じゃないのか。

 何かの時っていつだよ、それ。明日か?数年後か?お前その感謝忘れずに覚えておけよ。

 「ん?どうした?」

 「いや、なんでもない」

 呆れた俺がため息をつくも、ライアンはその意味をちっともわかっていなかった。

 

 そして俺はひそかに彼女の情報を集めだしたんだ。

 シャナリーゼ・ミラ・ジロンド伯爵令嬢。

 知れば知るほどおもしろく、報告する部下いわく、俺は悪魔の笑みが止まらない。

 それは、セイドの結婚式で彼女と再会するまで続いた。

 2度目に見た彼女はすっかり大人の女性だった。

 

 あぁ。もういいかな。


 絹のハンカチを手にした時、自然と呟いた自分の言葉に従うことにした。


 



 お読みいただきありがとうございます。

 実はお知らせがあります。

 こちらの作品は4部作と言っていました。言わないとダラダラになりそうだったんです。でも、どうしても主人公がハッピーエンドになるには、まだまだたりそうにないのです。そこで、最初っから公言すんな!と言われそうですが、タイトルを1~にします。そして、頑張ります。実はラストだけできてるのですw。でもそこまでいくのに納得できないのです。

 ごめんなさい。でも、もしよかったらこのまま読んでくださいね。

 それでは、また本編で!!

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