勘違いなさらないでっ! 【1】
連載抱えてますが、書きたくて書きたくて手が止まりましたので、発散させました。
「なぜお前がここにいるんだ」
本日の主役の1人である花婿が、白い正装姿でこれ以上ないくらい眉間に皺をよせ私を睨んでいる。
「あら、わたくしだって来たくて来たんじゃありませんわ。どーしてもって懇願されたので、わざわざ来てさし上げたのに。随分と失礼な態度ですこと」
ふんっと鼻で笑い、頭1つ以上高い金髪に青い目をした秀麗な花婿を睨む。
おそらくわたくし達の間には、バチバチッと見えない火花が飛び交っているだろう。
「セイド、何してるんだ」
そんなわたくし達の間に、焦った様子で割り込んできた青年がキッとわたくしを睨む。
「せっかくの式の前に君の顔を見るとはな。おおかた花嫁に難癖でもつけに来たのだろう。さっさとあっちへ行け」
「あらあら、なんて態度でしょう。言われなくてもそういたしますわ」
大げさに呆れてやると、2人の青年は更に睨んできた。でも、そんなことは気にしないとばかりに踵を返し、わたくしは赤いドレスを翻してさっさと離れた。
庭が見える白い回廊を通っていると、前方から本日の主役が2人の介添え人を連れ、白い純白のドレスを着て静々と歩いてきた。
「まぁ、シャナリーゼ!」
花嫁はわたくしに気づいて驚いた声を上げた。
淡い金髪を高く結上げ、真珠をちりばめたベールを羽織った清楚な美少女は、わたくしと同じ年の19才。子爵令嬢だったが、本日付けでさきほどのセイドリックの妻になり、侯爵家の一員となる。
「ごきげんよう、レイン」
さっと顔色を変えたのは介添え人の2人。
おおかたセイドリックから、わたくしを近づけないように言いつけられていたのだろう。
花嫁の前に守るように立ちはだかろうとした介添え人の2人だったが、一足早くレインが駆け出してわたくしに抱きついてきた。
「来てくれたのね!嬉しいわ」
「もちろんよ、レイン。仕上げは最後まで見届けるわ。だから今はまだ、わたくしに笑顔を見せてはだめよ。あなたはわたくしに怯える儚げな花嫁なんですから」
レインを抱きしめるかわりに、そっと肩に手を置いて距離をとった。
「さぁ、その崩れた化粧をさっさと直しに行ってはいかが?ついでに言えば、もっと違うデザインのドレスはなかったのかしら?そのドレスではますます子どもに見えてよ。あぁ、彼の趣味だとしたら、幼女趣味かと疑われてもおかしくないわね」
ずけずけと言えば、レインはふふっと笑っていた。
その後ろの介添え人はものすごい形相でわたくしを睨んでいたが、どうやら彼女達から見ればイヂワルな令嬢が花嫁を貶している構図となっているらしい。
「笑わないで。式の最後までしっかり怯えてちょうだい」
「はい」
絹のハンカチで潤んだ目元をそっとぬぐってあげると、さっと介添え人が花嫁の横に付いた。
「さぁ、参りましょう。あちらで気分を落ち着かせてゆっくりお待ちしましょう」
「きっと花婿様もすぐこられますから」
介添え人たちはわたくしを押しのけるように、花嫁を守りながらその場から立ち去った。
その後ろ姿をじっと見て、ふっと肩の力を抜いた。
「これで記念すべき10組目ですわ」
そこへひゅっと強い風が吹いて、ハンカチが宙に舞った。
「あっ」と見上げれば、少し離れた植木に引っかかっていた。
庭に出れば取れそうだが、ハンカチを取る為に庭の植木にジャンプしているわたくしを見られたら、今日までのわたくしのイメージが一気に崩れてしまう。
仕方ない。諦めよう。誰かが拾って捨てるか、使うかするだろう。ここは教会で、今日は結婚式で貸し切っているが、通常は平民も訪れる憩いの場だ。
自分でコスモスを刺繍したそのハンカチをもう1度見て、はぁっとため息をついてその場を立ち去った。
その時わたくしは、その拾った誰かが問題になるなんて思いもしなかったし、すべて見られていたことも気づかなかった。
レインの結婚式は華やかに、そして感動的に終った。
最後に花嫁がわたくしの前に立ち(もちろん、隣には睨みつける花婿)、わたくしはいままでの意地悪の数々を頭を下げて詫び、それを花嫁が許してお友達になりましょうと宣言すると、周りからは割れんばかりの拍手が沸き起こった。
もちろん抱き合ったわたくし達に花婿と、その友人達はいい顔をしていなかったが、とにかく無事に終ったので良かった。
清楚で慈悲深く、優しい花嫁は、今はハートミル侯爵家の若奥様として頑張っている。
「あらあら、新婚旅行先から手紙を寄こすなんて、手紙書いてる暇があったらべったりくっついてればいいのに」
式の後、10日間の予定で各地へ旅行しているレインを思い、ふふっと笑いがこみ上げる。
きっとこけないようにと、隣でセイド様がしっかり腰を抱いているだろうと容易に想像ができる。
次の手紙を見ると、去年伯爵家に嫁いだイリスからだった。
19才だったイリスは、32才の伯爵家次男で軍の役職に就いている彼に一目惚れした。
わたくしは彼にまとわりつき、散々周りをかき乱してやり、うんざりした彼がイリスという安らぎを得る顛末で結婚することになった。あの時の彼のやつれっぷりは見事で、イリスからも本気で怒られたが、だったら諦めるかと問えば口を閉じた。
恋する女は自分に正直でよろしい。
あの人がかわいそう、と引いたとたん他の強者に浚われてしまう。
恋は浚った者勝ちだ、とわたくしは思う。
「え?彼が最近淡白?」
結婚して1年弱で何を言っているんだ。しかも処女のわたくしに相談するのはおかしいだろう。
しかし、知ってしまったからにはどうにか知恵を、とわたくしは本棚に近づいた。
一般的な令嬢の部屋には似つかわしくない、壁一面の本棚を前に、わたくしはじっとその片隅を見ていた。そこには雑貨から服、穴場スポットなどあらゆるもののカタログと雑誌が揃えてあった。
その中の1冊を手に取り、わたくしはイリスを思い浮かべながら2着の夜着を選んだ。
透け度が少ないが、ふんわりした裾の短いかわいらしい夜着と、大人な女を演出できそうな裾の長い、スリップのような真っ赤な夜着。これを贈ろう。着るかどうかは彼女に任せる。
気心の知れた部屋付きメイドのアンを呼んで、早速贈り物の手配をお願いした。
2週間後、イリスからお礼のお菓子とともに喜びの手紙が来て、3ヵ月後に懐妊の報告が来るのだが、予想内過ぎて驚きもなかったというのは秘密だ。
次の手紙はお茶会のお誘いだった。
メンバーは気心知れた5名で、とのことだったので、さっそく予定を空けておく。ちなみに出席者のうち3名は既婚者で、これまたわたくし絡みという結婚をした友人だった。
そこへトントンとドアがノックされる。
返事をすると、茶色のくりっとした目をしたかわいらしいわたくしの心友、アンが入ってきた。
「シャーリーお嬢様、先程の白い夜着には、オプションでウサギ耳のカチューシャがつくそうですが」
「すぐ追加して」
「はい、そうだろうと思って追加致しました」
小柄なイリスだが豊満なので、あのチョイスは萌えるはずだ。旦那が一般的な男ならだけど。まさか師団長やってるからって、見た目通りお堅い男なら逆効果かもしれないが、まぁイリスと一緒にスイーツ巡りをしてくれる旦那だから大丈夫だろう。
……ストライク過ぎて、イリスが大変な目にあうかもしれない。
「メッセージカードに追加してもらって。カチューシャは着用3回目からの使用って」
「かしこまりました」
「じゃあ、わたくしも準備しようかしら」
すくっと立ち上がると、3面鏡の化粧台の前に座る。
鏡に映ったのは自分で言うのもなんだが、一言で言うなら気の強そうな美人、だ。
腰まである濃い金髪は全体的に緩く巻いており、やや釣り目ながらもパッチリとした黄色い目に長いまつげ、ほんのり赤みのさした頬に、ぷっくりとした唇は艶を帯びている。身長は165とやや高めになるが、その分ヒールの低い靴を履いていることで、安定感抜群で堂々とどこでも歩いていけるし、胸もイリス程ではないが、ほっそりした体型のわりに胸もあれば、お尻もある。腰は腹筋という努力の賜物で、無駄のない細さに仕上がっている。
「お化粧次第では清楚なお嬢様になりますのに」
残念そうにつぶやいたのは、クローゼットから外出用のドレスを選び出したアン。
「そんなの今更でしょ」
わざとアイシャドーを強めに引き、唇にはワインレッドの色を重ねる。
「わざわざ目元を強調しなくとも、こちらのピンクの口紅だけでよろしいではないですか」
「それはわたくしのイメージにはない色だわ。アン、あなたに似合うから、それあげる」
「そんな!お使い下さいっ」
「よし、できた」
愛する者達の仲をかき乱し、引き裂こうとする悪女。それがわたくしが5年かけて作ったイメージ。
アンが選んでくれた黄色いドレスも、レースは控えめな大人なタイトなドレス。無駄に開いた胸元には、今日は若草色のショールを羽織って、うっすら隠す。
だって今日の外出先は王都図書館。
無駄に色気なんか晒してられますか。
つばの大きなレースつきの白い帽子を深く被り、わたくしは馬車に乗り込んだ。
白いジロンド伯爵邸が段々小さくなっていくのを見て、わたくしはふっと昔を思い出した。
仲睦まじい両親に3つ年上の兄、4才年下の妹それがわたくしの家族。
父親似の兄とわたくし、母親似の妹。決定的に違うのは目つきだった。
釣り目ながら伯爵家の令嬢として蝶よ花よと育てられ、たくさん着飾らせてもらったし、自分もそれが似合うと喜んでいた。
でも10才になったある日、わたくしがどうしても手放せずにとっておいたドレスを妹が着た時、そこには本に出てくるような優しい可愛らしい妖精のようなお姫様が現れた。
わたくしが着れば優しいもなにも、そこには年相応にみえないくらい凛としたお姫様。
丸く優しい目つきのせいか、妹の姿はわたくしが夢に描いていた理想のお姫様だった。
現実を突きつけられて愕然としたが、まぁ、わたくしもなかなかなものだと言い聞かせ、妹を毛嫌いすることなく、むしろ懐いてくる妹が大好きだ。それは今も変わらない。
12才の時、妙に発育がいいと思うようになる。身長もぐんっと伸びた。
社交界デビューは14~16才が一般的で、その頃から婚約の話も盛んになる。
それなのに、なぜか12才のわたくしに40才手前の侯爵から婚約話が持ちかけられた。
さすがに驚いた両親は、格上とはいえ自分達より年上の男へ嫁がせるのは世間体も悪いと、いろいろ理由をつけて断ろうとした。だが、決定的な断り文句もなく、15才まで待つという侯爵の言い分を覆すことができないまま、婚約が内定した。
侯爵が紳士的だったら、なんとか両親もわたくしも諦めがついただろう。
だが、現実はそうではなかった。
むしろ12才の少女に、婚約を持ちかけた時点でおかしい。
案の定2度の離婚暦のある侯爵は、わたくしが適齢期になる3年の間に数々の浮名を流してくれた。しかも、わたくしがまだ赤ちゃんの域を抜けない頃から付き合っている愛人2人の存在も発覚した。
しかし階級社会だ。
この人幼女趣味です、と名指しで批判するわけにもいかず、しかも愛人は多いが、トラブルはないのでそれを理由に婚約破棄など難しい。
両親は悩んだ。
わたくしも、事の重大さに気づいて助けを願った。
でも、物語に出てくるような、わたくしを救ってくれる男性は現れず、むしろそんな男の所へ娘を嫁にやってでも媚びたいのか、と痛烈な陰口がたたかれ、我が伯爵家は孤立していた。
14才の誕生日、あいかわらず早熟に成長していたわたくしへ侯爵からプレゼントが届いた。中身はどこで知ったのか、わたくしの体型に合った下着や化粧品の数々だった。
……変態だ!!
とうとうわたくしの中で何かが音をたてて崩れた。
待っているだけでは助けは来ない。
激怒した兄は猟銃を持ち出し、玄関ホールで必死に止める執事達と揉めており、両親は顔面蒼白でただの人形のようにそこに座っている。もしかしたら、座ったまま気絶していたのかもしれない。
ただ、何も知らない妹だけが「綺麗なお化粧品ね」と、口紅パレットを見て無邪気に笑っていた。
どうにか猟銃を取り上げ、執事が真っ赤な顔で激怒した兄を連れて戻ってきた。
わたくしはそんな兄と、真っ青で血の気の引いた両親にゆっくりと宣言した。
「わたくし、これから悪女になります。いつでも縁を切るなり、尼院に入れるなりしてくださいまし」
こうしてわたくしは14才で社交界デビューした。
社交界デビューのその日は婚約者か父がエスコートしてくれるのだが、わたくしは「侯爵様とはこれからもずっとご一緒しますので、今回は父と」と可愛らしくおねだりしてことなきを得た。
それからは自分のできる限りで必死に体型、美貌を磨き上げた。
3ヶ月もすれば、婚約者がいるとはいえちらほらと言い寄ってくる男がいた。
全員年上だったが、侯爵よりはマシだった。
ファーストキスはすぐ犠牲になったが、絶対体は許さなかった。
未婚既婚問わず、わたくしは笑顔を振りまき、同性に嫌われても媚びることを止めなかった。
あの変態から逃げ出したい!!
その一心でわたくしは夜会に勤しみ、時に男女の仲を引き裂いて浮名を流した。
誰も助けてくれないんだもの。わたくしごときで別れるなら、どの道未来は同じでしょうよ、と開き直って罪悪感を打ち消した。
その結果、14才と10ヶ月のある日。
侯爵家の正妻として気品に欠けるという理由で、婚約破棄がなされた。
「勝った……!」
どんな批判をされようが、娘を、妹を見守っていた家族の前でわたくしは人生初のうれし泣きをした。
でも弊害はあった。
婚約破棄の後、わたくしはぱったりと夜会に行かず引きこもった。
理由は男性不信。
どんなに愛をささやいても、彼らはあちらこちらと浮き草のように流れていく。
兄や大部分の人は違うとはいえ、わたくしが関わってきた男性は全てそうだったので、いつしか疑心暗鬼で男性を見るようになったのだ。
わたくしのかわりに、やはり見目麗しく、キリッと男らしい兄は社交界でも誠実な男性として人気で、騎士として頭角も現し、あっという間にジロンド家のイメージを回復させた。そんな兄は女性にもてたが、悪女の妹がいるせいか強く言い寄ってくる女性も少なく、只今ひそかにとあるご令嬢と秘密の愛を育んでいる。
ちなみに妹は今年社交界にデビューした。
もちろん美少女の愛らしい姿に求婚者が続出、と言いたいところだが、そこはわたくしの存在が大きな壁となって立ちはだかった。おかげで誠実な男性を望む妹の願いを叶えるべく、両親はのんびり妹がそんな男性を見つけるのを待っている。
だからこそ、わたくしは悪女を止められない。
大事な家族を守るため、日々努力し、恩も売りながら悪意も売る。
ガタンと馬車が揺れ、動かなくなった。
王立図書館についたのだ。
明るい午後の日差しの中、日傘を差して石畳を歩いていると、すっと影が現れた。
傘をずらして見上げると、そこにはつい1ヶ月前まで頻繁に連絡を取っていた男がいた。
顔は悪くないが、妙に自信ありげな優男で、とっても利用しやすい性格をしていた。
「しばらくだね、シャナリーゼ」
「まぁ、お久しぶりね」
もう名前すら呼びたくなくて、微笑むこともしない。
そんなわたくしをどう勘違いしたのか、彼は悲しげな表情を作った。
「セイドリックのことは残念だったね。俺もレイン嬢を手玉に取れずに申し訳なかった」
あぁ、そうそう。彼にはレインにちょっかいを出すように言っておいたのだった。ものの見事にセイド様から鉄槌をくらって逃げたけど。
ちなみにレインには彼の役割は、セイド様がやきもちをやくためのものだと説明しておいたので、絶対になびくわけがなかった。
「まぁ、お気になさらないで。わたくし、今ではレイン様に許してもらえてほっとしてますの」
「そんな、シャナリーゼ!彼女に許してもらうなんて、美しく気高い君が謝る必要はない!もっとも、君を選ばなかったセイドリックは大馬鹿だと思うよ」
そっと日傘を握るわたくしの両手に、彼の両手が重なる。
「可愛そうなシャーリー。俺はいつまでも君を想っているよ」
あぁ、傷心のわたくしを慰めて近づいてきたのね。とっても典型的で笑いがこみ上げてくるわ。
でも傷心なんてしてないし、もともとセイド様には愛情なんてこれっぽっちも抱いていなかったし、今はレインが幸せになって清清しい達成感で溢れていたのに。この男のせいで一気に気が重くなったわ。
それに、何?今愛称で呼ばれたわ。
……ムカツクわ。
わたくしは添えられた手を冷たく見て、左手でバシッと跳ね除けた。
予想外のことに、男は目を点にして頼りなく1、2歩よろめいた。
あらあら、この程度でよろめくなんて。とんだひ弱な男だわ。
わたくしは意図的に冷たい視線を男に浴びせ、高飛車に言った。
「勘違いなさらないで?あなたに愛称を呼ばれる筋合いはないし、第一お名前も思い出せないの。ごめんなさいね?ひ弱な誰かさん」
ふっと笑ってやれば、男は見る見る顔を真っ赤にさせ怒鳴った。
「なんだと!?お前の悪巧みを全部レイン嬢にバラすぞ!」
「どうぞ。でもレイン様は全てご存知よ?むしろセイド様に嫌われたあなたが、レイン様にお会いできるなんて思いもしませんけどね」
実はセイド様は王宮出仕して、皇太子の覚えも高いエリート貴族。そんな彼に睨まれたこの男にはこの先明るい出世の未来はないし、今とおなじ無職で親のすねをかじり続けるだろう。
「この悪女めっ!」
振り上げた拳に、わたくしは暴力的だったのね、と彼の評価をなくし、ため息をついた。
彼の振り上げた腕をさっと左手で掴み、すばやく体を反転させ後ろにねじりあげた。
「いったたたたた!」
情けない悲鳴を上げる男と、その腕をひねり上げる女に、周囲の好奇な視線が集中する。
「まぁまぁ、女性に暴力はいけませんわ。紳士教育を始めからやり直して下さいまし」
わたしは男性と接する機会が多かったから、ある程度の護身術は習得している。
ぱっと手を離せば、彼は逃げるようにそのまま振り返りもせず走って行った。
あぁ、これでまたわたくしの噂がたつんでしょうね。
わたくしは顔を上げ、いまだに見ている周囲のみんなににっこり微笑んだ。
「勘違いなさらないでね?みなさん。わたくし、暴漢を退けただけですのよ」
だって殴られたら痛いじゃない。
やられる前に防ぐ!これ鉄則。
そのまま何事もなかったかのように歩き出したが、そんなわたくしをにやにや笑ってみている男がいたなんて気づきませんでした。でも、もし気づいていたら、間違いなく自宅に帰りましたとも。
……もっと周囲に目を向けていればよかったわ。
読んでいただいてありがとうございます。
この作品は3部作になる予定です。
ほぼできてますが、手を加えつつ、ゆっくり投稿していきます。
⇒7/26:この作品は4部作に変更します。8/5⇒話数宣言撤回




