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「響け!ユーフォニアム」をヤクザ映画として観てみる。

作者: ムクダム
掲載日:2026/11/02

 「響け!ユーフォニアム」は古き良きヤクザ映画の精神を受け継ぐ傑作アニメーションシリーズである。先日、映画「最終楽章 響け!ユーフォニアム 後編」(タイトル長いな)を観ての結論だ。

 簡潔に言えば、本作はひたすらに部活での内輪揉めを描いた作品であり、私の好きなヤクザ映画の構造と一致するということである。

 

 テレビアニメ第1期からリアルタイムで鑑賞しているシリーズの完結ということで、公開早々に映画館に足を運んだが、テレビアニメ第3期をベースにしつつも、一つの映画作品としての完成度の高い出来に仕上がっており、満足して劇場を後にすることができた。吹奏楽というか、音楽関係と縁遠い人生を歩んできた身であるが、本シリーズには随分と入れ込んだ方だと思う。仕事の関係で京都に住んでいた時期があるが、仕事もそこそこに本作の聖地巡礼に血道を上げた記憶も今や懐かしい。


 音楽的センスが皆無であり、音楽の授業にも良い思い出が皆無な学生生活を送ってきた。そんな人間がなぜ吹奏楽部を舞台にした作品にハマったのか。それは、高校の吹奏楽部というコミュニティで繰り広げられる人間関係の描写に惹かれたのだと思う。

 なので、本作の白眉と言える合奏描写について、実はそれほど良さが分かっていない。上手い、下手が分からないとまでは言わないが、あるレベルを超えたらどの音も同じように上手く聞こえる。誰がどの音を出しているかも覚束ない始末。音楽に挫折した自分にとっては、楽器を扱えるというだけで雲の上の人間と同義である。

 したがって、感動するのはクライマックスの合奏シーンではなく、そこに至るまでの道のりということになる。


 「響け!ユーフォニアム」は吹奏楽部員たちが全国制覇を目指して切磋琢磨する姿を描いた作品であり、正念場はもちろんコンクールであるが、他校との争いという描写は希薄である。

 その代わりにメインに据えられるのが、部活内での軋轢、分けても、部活の運営方針や大会出場メンバーの選出を巡っての争いである。

 これはヤクザ映画の定番であるところの、組の凌ぎの方針を巡る対立、跡目を巡る組内部の小競り合いといった描写と意外なほどに重なる。

 また、外部組織の存在が、あくまでも組織内部の揉め事に対するカンフル剤に過ぎないという点も、ヤクザ映画と共通する。広島ヤクザの縄張りに九州や関西のヤクザがちょっかいを出して揉め事が起こるというのはヤクザ映画の定番だが、基本的に火種はあくまでも広島ヤクザの勢力争いであり、外部勢力の存在は物語を展開するためのキッカケにすぎない。

「最終楽章」では九州からの転校生が波乱を引き起こす役目を担っているが、問題の火種は実はシリーズ序盤から燻っていたものである。

 組織としての利益を取るか、個人としての思いを優先するかという普遍的な悩みがテーマの一つとなっている点でも、「響け!ユーフォニアム」と「仁義なき戦い」シリーズを筆頭とするヤクザ映画には親和性がある。


 何より、「響け!ユーフォニアム」の登場人物はヤクザ映画でも通用するタフさを持ち合わせている。

 誤解を恐れずに言えば、本作の登場人物は軒並み、嫌〜な性格をしている。主人公である黄前久美子は思ったことをすぐに口にしてしまうという癖を自覚しながら、それをうまく利用する強かさを持っているし、久美子の相方とも言える同級生の高坂玲奈は上昇志向で他人を顧みない一面がある。

 どちらも自分に正直というと聞こえは良いが、現実にいたら近寄りたくない種類の人間である。吹奏楽部顧問の滝昇に至っては、ハラスメントという言葉の擬人化と評して差し支えないような教師だ。

 何せ登場人物の多い作品であり一人一人言及していたらキリがないので、ざっくりとまとめると、登場人物の多くが利己的な性格を自覚しつつ、我を通すために他人を蹴落とすことを否定しないという傾向にあると言える。

 全国制覇という目標に向けて、悩み苦しみながらも決して妥協せず、ストイックに自分たちの力量を磨いていく姿は、学生の部活動としては些か苛烈に映るかもしれないが、全国で戦う強豪校というのはこういったものなのかもしれない(私の母校の合唱部はそれこそ全国大会常連の強豪だったが、顧問の強力な指導のもと、日々、過酷な練習に励んでいた。後年、合唱部の同級生と当時の話をする機会があったが、部員のほとんどが顧問を心から憎んでいたというから恐ろしい話である。部活で全国大会に出るということは、憎しみすら覆い尽くすほど人の心を掴んで離さないものなのだろう。部活に打ち込むことの崇高さを改めて感じる。学生時代にこのような経験をした人間はきっと丈夫な企業戦士となるだろう)。


 爽やかで健全な青春活劇に心躍らせるなどとは信じられない気持ちだったが、そこに見出していたのは血で血を洗うヤクザ映画の真髄だったのである。10年越しにそのことに気がつけたことが非常に感慨深いことである。

 「響け!ユーフォニアム」シリーズのファンの皆様には、是非とも深作欣二監督がメガホンを取った「仁義なき戦い」シリーズ」を観ていただきたい。終わり


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