汗が宝石という病気
「ただいまー」そう言うと最初に元気な感じを思い浮かべるだろう。だが、私の娘は違う。バイトで夜遅くに帰ってきて、部屋に縮こまりながらゲームをする。いわゆる引きこもりってやつだ。そんな娘は最近妊娠が発覚した。珍しく娘が楽しそうに話しかけてきたので嘘だとは思わなかった。(まぁ、そんな嘘ついてもすぐバレるだろうけど)そして今夜もう一つ娘から報告をもらった。なんと妊娠した子供の持病がみつかったのだ。どんな病気か聞いてみると、汗が宝石になって流れ落ちると言うものだ。私も娘もそんな病気は聞いたことがなかったのでびっくりした。でも、海外ではよくあるらしく治療法も最近みつかったそうだ。私はそんなにお金を持っていないので、娘を利用してみることにした。
出産当日、それは意外にも早かった。病室で娘の夫とみた光景は今でも昨日のことのように覚えている。でもそこからが長かった。1年、2年、3年と時は過ぎていくのに、どれだけ経っても症状が出始めないのだ。もちろん何度も汗を流させようと必死だった。長袖で真夏にランニングさせたり、サウナに何分も居させたりとできる限りのことはした。病気は間違いだったのか、そんな病気はやはりなかったのか。そう心配になる程だった。だがそんなある日、いつもどおりランニングを限界までさせていると、急に汗が宝石となって流れ始めたのだ。最近家事をやるようになってきた娘に報告してみると、驚いた様子で目を見開き、孫に本当にそうなのか何度も尋ねていたのを覚えている。もちろん今日こそはと待っていた夫にも報告しておいた。夫は、驚くと言うよりにやにやしていた。娘や孫に病気の症状が出始めたと聞いたら、大抵の人は家族なのだから悲しむに決まっている、なんなら泣くと考えるはずだろう。だが、宝石が汗となって流れ落ちてくると聞いたら、誰でもそうはならないだろう。なんなら、悲しくて泣くなんてもっとありえないと思う。さて、私はそれと同時に病気が発覚したその日から考えておいた計画を実行することにした。
前より汗が出やすい環境を作り、汗がいい具合に流れたら、皆に「少しお買い物に行ってくるね」と嘘をつき、宝石屋などの宝石をお金に変えてくれるところに行き、戻ってきていた。でも最近は皆少し気づき始めているようで、よく怪しそうな目で見てくる。もうダメだと分かっていても、嘘をつき続けてしまう。そのいわゆる金持ち大作戦はもう完全に気づかれてしまったようで、最近夫や娘の夫、娘までもが私はおかしいと言い、孫と引っ越しの話までし始めている。孫も、3人の上手い誘惑についに負けてしまったようで、引っ越しの話を4人揃ってよくしてくるようになった。でもおかしいと思う。だって目の前に金がもらえる手段があるのだから、それを利用せずにはいられないのが普通だと思う。
ついに本格的に引っ越し準備が始まり、とうとう引っ越し前日になってしまった。その日の食卓はとても暗い雰囲気で静か…というわけでもなく、私を除いた4人での会話は普通に盛り上がっていた。なんなら、いつもより少し盛り上がっていたような気もするのは私の気のせいだろうか。そして何事もなかったかのように、引っ越し当日は迎えられた。なんてことない1日だった。やはり私抜きで引っ越すらしく、私も行けるかも⁉︎という淡い期待は「もちろんお前抜きでな」という一瞬の一言でぶち破られてしまった。そんなこと考える暇もなく時間は過ぎていき、計画を正直に話して娘を引き留めるなんてことは引き留めることは愚か、話すなんてことすらできなかった。4人は追うことができないようにあえて遠くを選んだらしく、私が朝ごはんを食べ始める頃にはもう出発の準備ができるところだった。こうなることを予測して土曜を選んだのだろう。いつもは準備もろくにできなくて同居を開始して早々嫌になった夫でさえも、もう準備ができている。私が席を立つ前に家を出て行ってしまった。ぽつんと1人取り残された私はどうすることもできず、ただただ呆然と立ち尽くしていた。席に戻って無言で黙々と朝ごはんを食べ続けるその姿は今思えばまるで本当に貧乏人のようだった。
その後すぐに、全く連絡してくれないと思っていた最近キッズ携帯を持った孫からこっそり電話をもらった。覚えている範囲で書き出してみたので、みてみてほしい。「…ばあばの電話であってる?最近ママたちが異様に大金を持っているの。全員最近お仕事を辞めちゃったし、ニヤニヤしながらスキップでどこかにいくの。だから変なのって思って後をつけたの。そしたら宝石で交換こしたお金でお買い物したり、お酒飲んだりしてたの。おかしいでしょ?」私は最後まで親身に黙って聞いていた。私が何かを言い出す前に、孫が「そろそろバレそうな気がしてきたからいったん切って逃げるねー」と言って電話を切った。その後のメールによると、ギリギリ後をついて行っていたことはバレなかったそうだ。その後も同じような連絡を何度かしてくれ、その度に私は親身に聞いた。そんな一ヶ月ほどが経ったある日、孫から一件の連絡がきた。その内容は、家に私が来てもいいか3人に聞いたところ、悩んだ末okをもらったそうだ。なので早速来週に行くことにした。飛行機の乗り継ぎとバスでやっと着くそこは、何時間もかかるようなところですぐに飛行機などの予約をした。
そしてその当日、体が溶けるような努力をし、やっとついた孫たちの家はそれはもうひどい有様だった。散らかったゲーム機やお菓子のかけら、つけっぱなしのテレビと全く掃除をしていないことが丸わかりな部屋たち。言葉に言い表せなかった。ご飯も遊びに金を使い過ぎたのかろくになく、これが育児放棄かと感じるほどだった。娘は真夏に冷房なしだからか、全身汗だくだった。私は汗が流れ落ちる度に娘たちにバレないように持ってきたバッグに宝石を詰め込んだ。特にこれと言ったおもてなしもなく、ただ単に宝石を集めて金にし、遊び倒したいという気持ちが伝わってきて、ああそうですかと思った。ゲームに夢中でわっわきゃっきゃと子供のように騒ぐ娘たちをおいて、私と孫は宝石屋をたまたま見つけ、身だしなみも整えずに怒りをぶつけるように直行した。
そして店員さんにお金に変えてもらうと、ATMでお金を下ろして、病院に向かった。手術に必要な額をきっちり提示すると、今からできますか?と聞いた。お医者さんは少し戸惑いながらも、事情を聞くと、ありがたいことに手術を準備が出来次第開始してくれると言った。孫には家に来ていいと連絡が入った時にやっと伝えることができた。すぐに納得してくれた。もちろん娘たちには秘密だし、孫も秘密にしておいてくれたそうだ。3人には言わないままでに手術は開始し、無事成功に終わった。孫はこれから私の住んでいる、もともと住んでいたマンションに帰りに娘たちには秘密でついてきてくれることになった。
その後、娘たちには秘密で帰ることに成功し、娘たちはお金がなくなって生活が困難になり、3人そろって1日中バイト生活になったらしい。娘の汗は普通の汗になり、今は無事たくさんの友達と一緒に小学校に通っている。1人で育てるのは前よりもはるかに大変だけれど、絶対にあの人たちを家に入れたりはしないと2人で固く決めています‼︎




