世界で一番、美しい片思い
まだ風に当たると肌寒いこの季節。高校を卒業した私、小鳥遊蕾は幼馴染である、日下部旭と一緒に旭の部屋にいた。
「いいのー?花園さんほっぽって私と一緒にいて〜」
「いいんだよ美桜とは来週卒業デートするし」
「ノロケうっざ〜」
旭の彼女、花園美桜さんは控え目で可愛らしい人。まさに花園の中にある美しい桜と言う言葉が似合う。
「それにお前と過ごせるのはあとちょっとだろ?大学アメリカだろ?」
「……うん」
私は国外の大学へ進学する。だから旭とこうして過ごせるのもあとちょっと。
「でもなんでよりにもよってアメリカ?」
「ん、ちょっとね〜」
私がアメリカの大学に行く理由は旭の側にはもういることはできないから。私は旭が恋愛対象として好きだった。旭も中々勇気が出ないだけで私のことが好きだと思ってた。でも違った。その気持ちを知って、側にいることなんて出来ない。旭はもう好きになることすら許されない人間になってしまった。人の彼氏を好きになって側にいることなんて出来ないよ。私はそれほど強くない。
「花園さんと付き合ったのって高校2の冬だっけ?」
「なにそれいきなりだな、まぁ、そうだけど」
私の方が……誰より早く恋をしていて誰より長く彼の側にいて誰より好きだったのに……。そんな醜い想いが心の中に浮かぶ。ううん、本当は分かっている。大事なのは、早く恋していたとか長くいたとかどれだけ好きだったからより「好き」をちゃんと使えられる事だって。でも、思うの。もっと旭に好きを伝えられていたら、私を気になるくらいアピールして伝えていたら。もしかしたら私が……。そんなこと今さらだとら思ってるしタラレバなのは分かってる。
「蕾?具合悪い?」
「え?いや大丈夫!」
いけない。こんな考えしてたなんて旭に言えるわけない。具合悪いと思うほど暗い表情してたのかな私。でも、心配してもらえるのは嬉しい……なんて。それにすら少し高鳴った胸が苦しい。
「そういえばアメリカ行く日見送りとか」
「別にあんたの見送りとかいらなーい」
どこまで私を苦しめれば気が済むんだこの男は。それにきっと私が今日ここですることをしたら来たくても来れないと思うし。むしろこれを実行して来れたら無神経とか無配慮とか無感情かよと睨むだろうな。そんなことを思って窓に目をやるともう太陽が結構傾いてる。まだそんな遅くない時間なのになぁ。
「まだ3時半なのにもう陽が傾いてるな」
「そうだね……私、もう帰ろうかな」
そう言って私は立ち上がり鞄を持つ。そして私は鞄の中から単語帳を出して旭に渡した。
「単語帳?これお前の方が必要じゃね?」
「これはあんたが持ってないと意味ないの!私が帰ったら中見ること!いいね?」
旭は首傾げて「はいはい分かったよ」と言う。きっと、次に会うのは長期休みでこっちに帰ってきた時だろうな。だから最後に私の顔を忘れないくらいに刻み込んでやろうと思った。ここまで耐えたんだから、これくらいの嫌がらせくらいは許してもらわないと私が困る。そして私は旭の部屋を出ようとしたが出る直前に振り返る。
「あ、そうだ……言いたいことあるんだ」
「ん?何だよ?」
私はひとつ深呼吸して今出来る限りの一番の笑顔を浮かべて振り返りその笑顔のまま言った。
「旭、大好きだったよ」
旭に渡した単語帳には旭の好きなところを書いた。私はそう言うと驚いた旭をその場において旭の家を出た。あぁ、これで終わりだ……。言いたいことも渡したいものも全部出来た。これで思い残すことはない。やっと、やっと長い長い恋を終わらせられる。次、会った時には、私を選ばなかったことを後悔させてやるくらい綺麗になってやる。でも私の恋はここで終わりだ。やっと……終わりを迎えたんだ。
バイバイ、私の初恋。




