後日談:地味な俺の「嘘発見機」スキルが、救ったはずの美少女たちに全力で愛の告白(真実)をぶつけられ続けて死にそうな件
あの「公開処刑」とも呼べる校内放送から一週間。 俺、佐倉太郎の人生の目標だった「平穏な卒業」は、跡形もなく粉砕された。
「……はぁ」
放課後の放送室。かつては俺の安息の地だったこの場所は、今や「学園で最も注目されるスポット」へと変貌している。 ミキサー卓に向かう俺の視界には、相変わらずあの数値が浮かんでいた。
1. 「学園の女神」の0%
「太郎くん、お疲れ様。今日の差し入れ、手作りのお弁当なんだけど……食べてくれるかな?」
ドアを開けて入ってきたのは、白鳥美咲。 かつてLIES: 95%という虚飾の鎧を纏っていた彼女の頭上には、今、驚くべき数値が表示されている。
『LIES: 0%』
「……白鳥さん、これ、タコさんウインナーの形が全部『ハート』に見えるんだけど」 「えへへ、バレちゃった? 嘘偽りなく、私の『真心』を込めたから」
0パーセント。つまり、彼女は今、一分の隙もなく本気だということだ。 以前の彼女なら「ファンへのサービス」という嘘でコーティングしていただろうが、今の彼女は俺の前でだけ、その防壁を完全に脱ぎ捨てていた。 正直、95%の嘘よりも、0%の純粋な好意の方が、俺の心臓には悪い。
2. 「才色兼備の共犯者」の独占欲
そこへ、もう一人、凛とした足音が近づいてくる。
「ちょっと白鳥さん、抜け駆けは感心しないわ。佐倉くん、午後の部活動の前に、私の『新作のモデル』になってもらう約束でしょう?」
生徒会長、雪村凛だ。彼女は今、堂々と美大進学の準備を進めている。 彼女の数値もまた、以前の50%超えが嘘のように安定していた。
『LIES: 3%』
「会長、その3%は何ですか」 「……『芸術の勉強のため』という建前よ。本音は、ただあなたを独り占めして見つめていたいだけ。これ、真実(0%)に書き換えてもいいのよ?」
彼女の射抜くような知的な瞳が、微かに熱を帯びる。 生徒会長に「独り占めしたい」と真顔で言われて平気でいられるほど、俺の神経は図太くない。
3. 「命がけの恩人」の直球
さらに、窓からひょいと顔を出したのは、運動部エースの新庄葵だ。
「よっ、太郎! 凛も美咲も相変わらずだな。ほら、太郎、部活のドリンクの味見してくれよ。お前に一番に飲んでほしいんだ」
『LIES: 0%』
彼女は嘘を吐くのをやめたらしい。 以前、美咲を守るために隠していた暗い表情は消え、太陽のような笑顔がそこにある。 だが、その笑顔から放たれる好意のエネルギーは、もはや「友情」の枠を完全に踏み越えていた。
変わってしまった世界と、消えない「影」
俺の能力は、相変わらずだ。 嘘を視認すれば頭痛がする。だが、最近の悩みは、彼女たちの「0%」の真実があまりに眩しすぎて、頭痛とは別の意味で眩暈がすることだ。
一方で、学園の平穏が完全に守られたわけじゃない。 七瀬鏡は学園を去ったが、彼女を操っていた「組織」の尻尾はまだ掴めていない。 窓の外、遠くの校舎の屋上に、時折見える**LIES: 100%**の黒服たちの影。
(俺の戦いは、まだ終わってないんだろうな……)
俺はヘッドホンを装着し、マイクのスイッチを入れた。 今夜もまた、この学園の「嘘」と「真実」を仕分けし、彼女たちの居場所を守るための放送が始まる。
「皆さん、こんばんは。……星条学園の『裏方』、佐倉太郎です」
隣で美咲が嬉しそうに微笑み、凛が満足げに頷き、葵が親指を立てる。 かつて「無」と表現された俺の日常は、今、世界で一番やかましくて、世界で一番熱い「真実」に満たされていた。
「……あー。今日の相談は、『好きな人に嘘をつかずに告白する方法』について、ですか。……難問ですね。俺も、今まさにその答えを探しているところです」
俺の頭上の数値は、今、何パーセントを示しているだろうか。 それを確かめる術はないが、胸の鼓動だけは、嘘を吐いていないことだけは分かった。




