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第二幕:密室の寒気

やあ、君。もっとこっちに寄ってくれない? 何もしやしない。君だってそうだろ。それにこんなに寒い小屋の中で、ボクらに何ができる? 第一幕では、ファウストの魂を受け継ぐ者、巳之吉をボクらは見つけた。そして、彼の飽くなき知識欲を。茂吉に対する憎しみも知った。あの後、彼らは家に戻ろうとしたけど、帰り道には、越さねばならない大きな河がある。渡し船に乗って、行き来をしなきゃいけない。だけど、船は河の向こう側に、停められて、ボクらは船は使えない。渡し守は帰ったんだ。温かい我が家に。他に手段はないのかって? 橋がある時にはあるけど、この時代の橋に安全性を求めたらダメだ。橋は使えない。わかったね? 近くに小屋がある。ボクらは、渡し守の小屋で一夜を過ごす事になる。あんな小さな冒涜的な小屋に、ボクらは押し込められる。

やあ、君。もっとこっちに寄ってくれない?何もしやしない。

君だってそうだろ。

それにこんなに寒い小屋の中で、

ボクらに何ができる?


第一幕では、ファウストの魂を受け継ぐ者、巳之吉をボクらは見つけた。

そして、彼の飽くなき知識欲を。

茂吉に対する憎しみも知った。


あの後、彼らは家に戻ろうとしたけど、帰り道には、越さねばならない大きな河がある。

渡し船に乗って、行き来をしなきゃいけない。だけど、船は河の向こう側に、停められて、ボクらは船は使えない。渡し守は帰ったんだ。温かい我が家に。


他に手段はないのかって?

橋がある時にはあるけど、この時代の橋に安全性を求めたらダメだ。

橋は使えない。わかったね?


近くに小屋がある。

ボクらは、渡し守の小屋で一夜を過ごす事になる。あんな小さな冒涜的な小屋に、ボクらは押し込められる。


なんて事だ。小屋には、火鉢も火をつけるとこさえない。

茂吉のシワだらけの着物を焼けば少しはマシだと思う。もしくは君の服を焼こうぜ。でも、この不潔な小屋も丸焼けになりそうだ。ああ、寒い。


なるべく外の冷気が入らないように、巳之吉と茂吉は窓や入り口をしめた。

温かさをもとめてか、茂吉は無遠慮に巳之吉を撫で肩を寄せる。彼は無言だ。

なぜかって?

寒いからさ。ここで触るなというと、別の危険があるから。巳之吉は分からせられた額を無意識に撫でた。


始めは、寒さは酷だとは感じない。

だけど外が暗くなり、吹雪もやまない。部屋の寒さは、語りたくもない。


二人は藁を集めて、それぞれ身にくるませた。巳之吉の嫌悪感は、彼を眠らせなかった。不愉快でたまらなかった。


茂吉は、いつでも浅く眠る。

寝つきもいい方だ。茂吉は彼をその場に置き、小屋の奥へと離れた。

茂吉の鼻音が不快な音を立てたのだ。

「これで少しはマシになるー」彼は呟き、下唇を噛んだ。握った拳がブルブル震えた。


巳之吉は小屋の扉を眺めた。

このまま、外にでて雪の上にうつ伏せになった方が、彼は幸せなのかもしれなかった。


巳之吉には、神さまはいなかった。

この国には、とにかく馴染みがない。

隣人愛を強調された方が、マシかもしれない。彼の魂は吹けば飛ぶような場所にいた。


ガタッ、がだがた...と外からぶつかるような音がした。

彼は目を細めて、ジッと扉を見つめ直した。

茂吉が音に反応し、寝返りをうつ。

扉の音はしばらくすると、大きくなる。隙間から、悪魔の嘆きのような、ダンテの神曲にある地獄、その二層目の愛欲の嵐で響くような音がヒューヒューと音を弾く。ほかの表現をつかうなら、名探偵シャーロックホームズが自慢のヴァイオリンの、音合わせをしてるかのようにだ。キーキーした不協和音が扉を完全に押し開けた!


そこに立っているのは、一人の女。

黒髪と冷たく整った顔には、氷の目を輝かせた女がいた。唇は青紫、肌は雪と同じく白かった。着物も白いから、服を着てないと錯覚までする。

背が高く、ほっそりとしてるが、決して弱くない。

彼女は何者なのだろう。

月が彼女の肩越しから覗き見る。

それは、まるで蛇のウインクに思えた。


(こうして、第二幕は女の目と月が重なり、幕を閉じる。)


ガタッ、がだがた…と外からぶつかるような音がした。彼は目を細めて、ジッと扉を見つめ直した。茂吉が音に反応し、寝返りをうつ。扉の音はしばらくすると、大きくなる。隙間から、悪魔の嘆きのような、ダンテの神曲にある地獄、その二層目の愛欲の嵐で響くような音がヒューヒューと音を弾く。ほかの表現をつかうなら、名探偵シャーロックホームズが自慢のヴァイオリンの、音合わせをしてるかのようにだ。キーキーした不協和音が扉を完全に押し開けた! そこに立っているのは、一人の女。黒髪と冷たく整った顔には、氷の目を輝かせた女がいた。唇は青紫、肌は雪と同じく白かった。着物も白いから、服を着てないと錯覚までする。背が高く、ほっそりとしてるが、決して弱くない。彼女は何者なのだろう。月が彼女の肩越しから覗き見る。それは、まるで蛇のウインクに思えた。(こうして、第二幕は女の目と月が重なり、幕を閉じる。)

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