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退魔の英雄  作者: 明太子
外界之魔陰
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62-2 魔術と言う名の人形。

毎日投稿八日目。

最近ずっと頭が痛くて怠い。ってか中途覚醒治したい定期。


では楽しんでください!!

「魔術師じゃない?──────なら、この人は何者だって言うんですか?」

時雨は世嗣の持った白鞘の大太刀を受けとり、随分な推理に顔を歪める。

「只の人間だ。恐らく魔導士ですらない只の一般人ってのが、答え何だろうな」

世嗣の言葉はやけに情報が少なかった。思考された上での言葉なのだが、そこに至る経緯が根こそぎ落とされている。

「いやもしかしたら一般人ってのモノ、間違いなのかもしれねぇ──────こいつは、殆ど死者と変わりが無い。何かしらで廃人と化した人間なのが最適か?」

「世嗣さん?」

せめてもの報告として、口にしていた言葉は自問へと挿げ変わる。不完全な解答の修正。それだけの為の自問へと。

 世嗣は煙草を指に挟み込む。煙草の先は微細に灰へと変化し、果たして重力に負けた。

 煙草一本を無駄にする行動であると言うのに、世嗣はそこに意識を向けようとしない。

「──────いや、廃人であるからこそ。傀儡になれるのか」

途端に結論をはじき出す。

「あの世嗣さん。そろそろ私に教えてくれても良いんじゃないですか?」

「ん?あぁすまんすまん。ちょっと集中しててな」

痺れを切らしたように、時雨は世嗣の名を強めに呼ぶ。

「あくまで俺の結論だし、そこに学術的意味合いは当然ねぇが。恐らくこいつは魔術を組み込まれた人間だって事だ。それも生気を失ったな」

「つまり人形と?」

世嗣は無言の肯定を残す。新たな煙草を再び葉加瀬から頂戴すると、それを口に咥える。

「一緒にするつもりはねぇが、四季と似たようモノだと思えば良い」

「ですが、突然元の人間に戻ったというのは?」

「それはお嬢の魔術封印の影響だろうな。──────このまま暫くほっとけば、こいつはまた己を魔術師だと豪語するはずだ」

憶測だと云う割に、世嗣の意見はかなり的を射ていた。


 静寂に成り切れない、不完全な静謐。常に風にあおられる柳の葉のような不安定さに、突風が吹いた。

 「  」と眠り続けていた葉加瀬の身体が、痙攣する。詰み込まれていた紙の山は、ぞろりと崩れ落ちる。

「...........ん?何だ、今日はやけに客人が多いのぉ」

葉加瀬は天井に吸い込まれるように、上へと伸びた。喘ぎまがいな声がやけに艶やかとする。

「おや。懐かしい顔ではないか──────禁忌を犯した儂を殺しにでも来たか?必中の魔術師殿よ」

生殺与奪を奪われる側であるが、彼女は平然と普段通りを魅せる。それは取り繕った訳でも、覆いかぶさった川でもない事は目に明らかである。

「そんな事はしねぇし。したら俺がババアに殺されちまう......それより寝起きの所悪いんだが、一つだけ訊いていいか葉加瀬?」

「なんじゃ」

「魔術を埋め込まれた人間ってのは、歴史上に存在したか?」

突発的な問いに対して、葉加瀬は黙然とした。膨大な知識を読み返すように、天井を見つめる。

 おーーーーーーん、という換気扇の音。壁に駆けられた時計の秒読みの音。二度目の不完全な静謐が空間を覆いかけた所で、葉加瀬は口を開く。

「ある。それも一度や二度なんて話では無い程に──────嘗て、キリスト信者は排他的な性格をしておってな。特にイスラム圏の人間をここぞとばかりに毛嫌いしていたんじゃ。まぁ有名な所で言えば十字軍などがそれに該当するがな。そしてキリスト教こそ全てとする法王は、他宗教者を殺す為に魔術を使うだけの人形を五万と用意したとされている。

 戦争は、するだけで膨大な金がかかる言わばある種の賭け。勝てば巨額の富が得られるが、負ければ悲惨な結末を迎える。そこで金を掛けずに勝負を挑むにはどうしたらよいか、思考した結果。法王は男から身寄りのない子供や女、そして奴隷なんかに魔術を与えた」

葉加瀬の説明は、学校教育では触れる事さえ出来ない知識の詰め合わせであった。それ故に話は長くなるが、それ以上に分かりやすくもあった。

「完璧にさえ思えたこの戦法じゃが、一つだけ重大な欠点が存在した。それが持たぬ者に持たせるという禁忌じゃ。魔力も無しに魔術は当然回せん。では、どの様にして魔術を駆使するのか?──────それは魂を魔力に変換する等価交換的な魔術を内に組み込ませる方法じゃった。当然そんな事を繰り返して居れば人は、廃人へと成り下がる。片腕を失ったその男のようにな」

話ながらに指に挟んでいた煙草を口に運ぶと、火を点けた。

 彼女はまるで人の心を読んだかのように説明を終える。

「つまりこいつは、廃人だから魔術を埋め込まれたんじゃなく。埋め込まれたからこそ廃人へとなったのか?」

「そうじゃな。倫理観が設備された現代で、こんな暴虐を許すとは......大陸の魔術師とは随分、狂気を煮詰めた存在だわい」

 ホープの銘を並びで吸う二人は、不思議とかみ合っていた。

「──────と言うか世嗣よ。お主は随分と老けたのぉ.....一昔前は絶世の美男子だったと言うのに」

「変わらんあんたらが可笑しいんだ。俺は普通だ」

「それはそうと世嗣よ.....儂の灰皿知らんか?」


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初見でしたら第零話から読んでもらえると助かります。

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