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退魔の英雄  作者: 明太子
外界之魔陰
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56 力の変換

毎日投稿二日目。

最近かなり頭が痛い。そろそろ息絶えるかもしれません。


では楽しんでください!!

  たった一度の神速であり神業と言えるそれを受けた祐の眼を裕に肥えていた。

 景千代の先手の一撃を祐は、掌底受けで下とす。前傾姿勢になった景千代の顔面に目掛け祐は最速の右後ろ回し蹴りを間髪入れずに差し込む。


(速い.....)


──────景千代は身体を引くことはしなかった。仮に引いたところで鼻先を掠められ、祐に戦況を握られると判断した上である。

 前傾姿勢の身体を更に前に寄せた。紙一重で祐の蹴りは空を裂く。

「ッア!!......」

出し終わりの祐の軸足を景千代は、捌かれた右手で救い上げる。ひょいと崩れた祐は、二撃目の格好の的と挿げ変わった。

 奥足の横蹴り。腰、膝、足首を連結され捻った一蹴は祐を見事取らえる。

 だが感覚が鈍かった。

 痛快に差し込んだはずの足業。そして蹴り込まれたはずの腹とが織りなす音は重低とする。

「へへっ。見えてるよ」

「やるじゃない」

厳密には祐の腹部に蹴りは届いていなかった。右手を蹴りと腹部との間に緩衝材の役目を果たす。無論それでは骨が砕け血肉が四散しかねない。

 だからこそ覇力を一点に集中させる事が必要となる。

 橋爪との一戦後、祐は覇力の精度が格段と上昇していた。



 二人は距離を取る。


 遠くに十メートル。


 傍からすれば完全なる間合いの外。だが二人からすれば間合いの範疇に他ならない。

(見てから反応は何とかできる......あとは、丁寧に捌いて返す)

(思ってた以上に速いし、強い。けど何て出鱈目な力の使い方するのかしら)

二人の闘い様は恐ろしく似ていた。まるで自身を模倣(トレース)した傀儡であるように。

 ただ体内から溢れ出る闘力の在り方は随分と違った。

 穏やかな清流さえ背後に移り込む景千代に対し、祐は氾濫直後の荒々しい濁流と評せた。

「止め止め.....大方の所お前の実力は分かったし。一体手合わせは終了」

景千代は首をぐるりと回すと、音が二度鳴った。

「えっ....まだ二手しか攻防してないけどそんなんで分かるのか?」

「俺を誰だと思ってんだ!?.....徒手空拳歴代最強とまで謳われた天才よ」

文字の表面となぞれば余りに自惚れで自画自賛と言わざるを得ない。

 だがこの女。その言葉に嘘偽りは無かった。それは鬼川祐と言う別種の天才から見ても明らかな事実である。

「そんじゃあ今日の鍛錬はもう終わりって事で良いか?」

「駄目に決まってんだろ!!今のは小手先調べってやつ。これからあんたの事を鍛えていくんだから勘違いすんな!!」

早朝の声量とは考え難い張りがあった。


 はぁぁぁ.....



「それはそうとして、景千代さんから見て俺って強いか?」

「凡」

食い気味の評価は、残酷であった。

「とは言っても、それは私のレベルと比べればって話。普通に異常なくらい強いよお前」

「何が足りないんだじゃあ?」

祐が顔を顰めると、わざとらしく景千代は喉を鳴らす。

「まぁ端的な話。力の使い方がまるで成っていない。それ以外は完璧だけど、それが余りにゴミ過ぎてあんたの評価を下げてるって感じかな」

酷評と高評の二重螺旋に祐は反応を困らせた。

 どうやら景千代は単に口が悪いだけではないらしい。

「さっきの闘いで分かったこととして。───一つ。あんたの闘力の量はちょっと....いやだいぶおかしいって事。量が多すぎるって意味でね。二つ。それを無駄に湯水の様に使ってるって事。三つ。単なる格闘センスはずば抜けて高いって事」

たった二手の攻防。祐は単に捌き返すという行動に手一杯だったその刹那の間。

 しかし藤原景千代にすれば、相手を理解するにたる重々たる時間。

「まずは、お前に力の使い方を教える」

「...............。」

意気込みとは違うが、ある種の宣誓。ただ祐は返事もせず近場に生えた松のように不動としていた。

 当然景千代がそこに反応しない訳もなく、明らかに怪訝そうな顔を向ける。

「何か俺の顔に何か付いてるか?」

「いや別に......ちょっと前におっさんが、俺が景千代みたいだって言ってたけど根本から違うじゃねぇかと思ってさ。あの人は人を見る目がねぇんだな」

祐は、はにかむように笑い後頭部に手を当てがった。

「ふんっ。お前なんかと一緒にするんじゃない。そんな事より鍛錬を始めるからお前ちょっとこっち来い」

遠出の間合いのまま喋り合ってた祐は、すたすたと足を進める。

 気付けば眠気は風と共に散っていた。

 しかしどうしてか尋常とは考え難い疲労感が祐の背にのしかかる。

 早朝一発目の運動としては、土台酷な話だったのだ。

「それで力の使い方って?....」

「例えばの話だけど────お前この石取ってみろ」

景千代は中庭に埋まっていた手のひらサイズの楕円石(まるいし)を手に乗せ祐に見せる。

 首を傾げつつも祐は、それを持ち上げる。

「それ置いて。次は素早く取ってみろ。本気でな」

指示通り祐は楕円石を置くと、呼吸を整え一寸の光陰とでも言える程の速度でそれを取って見せた。

 しかし意味も意図も理解には及ばなかった。

「はいオッケー。それじゃあ俺からお前に質問だ。今の二つ力の使い方において何が違った?」

「違い?......速度に比重を置いたかどうか?」

祐としては考えに考え抜いた回答。特段悪くも無いが良くも無いそれに景千代は小さく溜息を吐く。

「まぁ三角点はやるよ....厳密に言えば、身体を動かす時の力のベクトルの相違だ」

身体的話だと言うのに、どうしてか数学的な話に転換された事に祐は目を細めた。

「初めの行動は、石を摘まむという力。落とさないよう保持する力。そして持ち上げる力。にベクトルが向いていた。けど二回目は、殆どが腕を早く伸ばし引くという力が働いていた。摘まんだり落とさないよう保持したり持ち上げる力ってのは、点で働いちゃいない

 ではどうして石を持てるのかというと、その速度が別個の三者に力を再分配しているからなんだ。イメージで言えば第一宇宙速度を考えれば良い。けど人間はそこに意識を向けないし考えることを放棄する。それは意識レベルを超えた速度で力が色々な方向に変換されているからで、」


「ストップ!!!」


 限界すれすれの祐は、景千代を強制的に止める。

 喉がひりつき若干の目眩さえ引き起こされた。しかし、止めたという実績さえあれば祐としてはそれでよかったのだ。

「どうして、退魔の衆の人間はこうも堅苦しい話方しか出来ないんだ!?もっと簡単に話してくれよ」

「........はぁぁぁぁ。面倒くさいなお前。それじゃあどこから分からなかった?」

景千代は気だるげに頭を掻くと、覇気のない声を残す。

「宇宙なんたらから一切頭に入ってこなかった」

「じゃあもう一回順を追って説明するよ。まずこの世界のモノは重力に従って下に落ちるってのは分かるな?けど人間は歩いたり飛んだり跳ねたりできる。それは下向きに働く力よりも持ち上げるという上向きに働く力が一時的に優位出来るから。第一宇宙速度ってのは、それを一撃で理解させるためのモノだったけど忘れていい」

砕きに砕いた表現を選ぶ景千代の顔は、気難しいと言えた。

 堅い表現を苦手とする祐。反転に柔らかな表現を苦手とする景千代。

 やはり那須世嗣の評価は正しくは無かった。

「それで石の話に戻るが、速く取る時は力が速度に振り切られてた。そこに石を持ち上げる上向きの力は大して働いていない。けど持ち上げられたのは横方向に働く速度と言う力が一時的に下方向の影響を受けずに居られたからなんだけど、言いたい事伝わった?」

「バッチリ。全てを理解したと言っても過言じゃない」

言動から随時溢れ出す阿呆ぶりに、景千代は鼻で嗤った。

「じゃあ質問ね。お前は、そこに意識を向けた?」

言葉の帰結先。それは問いに落ち着く。

 祐は無言で首を振る。

「無論向けてない.....だろ?けど闘いの最中、お前はそこに意識を向けないといけない。じゃないとお前の力も宝の持ち腐れになるって事。これが私の言いたかった全てだ」


 端的に纏められたそれを無理くりに解凍した祐。

 だがそのかいあって祐の脳に情報は知識として刻まれる。

「そしてこれからお前にそれを伝授するから有難く思え」


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初見でしたら第零話から読んでもらえると助かります。

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