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退魔の英雄  作者: 明太子
外界之魔陰
59/64

54-2 真理への到達

毎日投稿三十五日目。

はい。第零話の回収です。後半部分は面倒でコピペしてます。


では楽しんでください!!

 京都は存外に現代的であると祐は知った。

「通りによるんだろうけど、結構高層ビル乱立してんだな」

 かの街を思い出させるような、ガラス張りの高層ビル。

 山が開けた南に昇ろうとする太陽が、煌々と光りそれに反射する。

 まだ時間は浅い。だがどうしてかこの街は人が多かった。地元に住む人間も居るが、やはり観光客が多すぎるのだ。

「昨日みたいな犯罪が起きるかも知れねぇってのによ.........」

ガヤの中、一際目立つような異音が頭上で鳴る。

 ふと祐は顔を上げた。痛ましい光線が目を焦がし、紙一枚分に眼を細める。

 修築かそれとも新築かは分からないが、工の字に奥行きを持たせたような鉄筋が上に吊るされていた。


 感が冴える瞬間。それはどうしてか突然訪れる。それは(まじな)いじみたモノに留まるわけではない。

 ────始めて行く飲食店。それが何故か行列だと分かる刹那。

 ────学校に行く道中。何故かふと(よぎ)る抜き打ちテスト。


 ──────何故だか鉄筋が降りる未来。


 読めていたのかは不明だが、落ちるより先祐は体が動いていた。

 不幸中の幸い、その鉄骨が降り注ぐ筈であった人間は二桁と居ない。数にしてざっと四。恐らく人家族程度であった。

 闘力によりまず先に二人の子供を回収し、そして夫妻を安全地帯に連れ帰る。瞬く間の一瞬にその一家は、この世の歪みに触れたのかと勘違いさえ起こす。

(これで間に合........人!?)

祐の数え漏れか。それとも突然そこに降り立った人間か。

 振り立つ地点に一人の男が立っていた。

 祐の瞳の色と同様の髪の毛を携えた外人は、濃くなる影を見てかすっと上を見る。

(クッソ間に合わねぇ!!.......)

着弾までの猶予にして0.5秒。再び闘力を回しても連れ帰る事が出来ない刹那の間。それでも祐の足は前に進む。

 だが現実は無情にも祐の行動を待ってくれない。

 この世の物理法則に従い、真下へと堕ちる。


 




 ──────だが。途端人を殺す影は四散した。

 厳密的に言えば、着弾するはずであった鉄骨が分子レベルにまで崩壊を起こした。

 在り得ない話である。

 それは考える事さえ烏滸(おこ)がましい人類への冒涜。

 異形な常識で異常な光景。まるで鉄骨が翠髪の外人を避けたような。

「..........何だ今のは?」

祐は未確認飛行物体を初めて目にしたように、驚嘆と言葉を漏らした。

 それは祐の意志とは関係なしに、脊髄がそうさせた。

 湧き上がる疑問、不可思議な情景への探求が祐の中で駆け巡る。自問自答の繰り返し、だが返ってくるのは不明と言う単語だけ。

 唯一明確な返答を寄越したのは、かの翠髪の男が


 魔術師である。という端的な事実だけであった。


「.......まさかこんなものが落っこちてくるとはね。もしかして今日は、良くない事でも起こるのか──────な」

瞬間、二つの異能の目が合った。

 それは必然であり、遅かれ早かれ起こりうる未来であった。

 二つの異能共々体を動かそうとはしない。一生即発な訳ではない。ただどうしてか魅入ってしまったのだ。

(仮にだ。仮にあいつが魔術師だとして、詠唱はどうした?それに今あいつ、指一本動かしちゃいねぇ......)

神が織りなす奇跡とも言えような瞬間の芸当。それは無言無動で繰り出された。

 祐は救った一家の真隣でその魔術師を見つめる。

「..................君、名前は?」

無言の見合い。それを切り開いたのは、魔術師の質疑であった。それを皮切りに閉じきっていた祐の聴覚は開け、無数のガヤの音がねじ込まれる。

「お.......鬼川、祐」

固唾を呑み込み祐は、何度も何度も読み書きしてきた自身の名を歪に口にする。

「おにかわゆう。かい........」

(笑った?.....)

復唱するように祐の名をぼそりと呟くと、魔術師は瞼を下ろし満足げに微笑んだ。

「祐。ここは人が集まるだろうし、カフェにでも行かないかい?お代はこちらで出すから」

魔術師は小川のせせらぎのような声色でそう誘う。

 迷う事は無く祐は首を縦に振るった。






 五分程の逃亡を経て、二人はカフェに着いた。アングラでいてレトロな雰囲気を残したそこに客は居なかった。唯一の従業員は眼付も愛想も悪い老店主が受け持っていた。

 パイプ椅子に足を汲んで座り新聞紙を広げ、煙草を口にする。

「二人だけど良いかな?」

「───あぁ好きな所に座ってくれ。注文は席から声を上げてくれればいい」

「どうもありがとう」

魔術師はにこやかに対話を終えると、窓際の二人席に腰を下ろした。立ち尽くしていた祐を見て魔術師は向かいの席に手を伸ばす。

「座っていいんだよ」

「あ、あぁ......」

祐はやけにまごついて席に座った。やけに祐を湿っぽく見つめるその眼が妙にむず痒い。


 魔術師はブラックコーヒーを祐はカフェオレを頼むと再び沈黙が二人を襲う。

「さて鬼川祐君....君の疑問を先に消化しよう。僕は大陸の魔術師が所属する教団、法王の籠に属する大陸最強の魔術師であり魔法使いである人間だ。いや人間と言うのは余り適切ではないね。何せ僕は千年生きているのだから」

「──────はい?」

途端に魔術師は口にしていない祐の問を答えた。

 酷く端的であり、酷く適当で、酷く嘘くさかった。

「ん?君は僕の存在を不思議と思ったからわざわざカフェまで付き合ってくれたんだろう?」

その通りではあった。これ以上に無い程の正当性を含んだ答えに祐は呆然と魔術師を見つめる。

「......まぁそうだな。えぇっとまぁ最初の情報はまぁとして千年生きてるってのは?」

「寿命ではないよ。当然の事魔術で引き延ばしてるに過ぎないけどね」

ふと微笑んだ魔術師に覆いかぶさるよう店主がコーヒーカップを机に乗せる。「カフェオレはもう少しお待ちください」と言い残し店主は去る。

 その背を眺めキッチンに入るタイミングで祐は口を開く。

「何でそんなことしてるんだ?」

「──────約束なんだよ。ある男とのね」

「へぇぇ.....」

波紋のないコーヒーの上に魔術師の淋し気な口元が転写する。

 指二本しか入らないカップの取っ手。そこに指を入れ魔術師はコーヒーを喉に通す。蒸し暑い京都の真夏だというのに魔術師はホットであった。

「─────君は退魔の衆に所属しているんだろ?」

「どうしてそれを?」

確定系の疑問に対し祐は首を傾げる。

「通常の人間は、あんな疾く動けない。それに僕の最初の説明を疑おうともしない一般人なんか居る筈がないよ」

淡々として説明は、合理的であった。

 


 暫くの事、二人の間には静寂が訪れる。祐は魔術師であり魔法使いと名乗る男の顔を見ては、その景色を傍観する。

(静かだなぁ.......きっと俺の感知が戻ってもこの静けさは変わらないんだろうな)

哀愁漂うな雰囲気を醸し出しながら祐は、頼んだカフェオレを待つ。

 頻りと魔術師はコーヒーを口にし、カップを戻すタイミングで祐を見つめるを繰り返した。代り映えすることの無い一定の景色に何故か魔術師は愉悦としている。

(さっきの鉄骨を破壊した技、どういう原理で起こったんだ?──────いや考えるのは()そう。疲れるだけだ。ただ大陸の魔術師ってのが凄いって事だけで良いんだ)

何時ぞや那須世嗣が口にした言葉が祐の思考を止める。

 だが皆が皆あれほどの芸当を成し得るかと言われればそれは違うのであろう。そうでなければ大陸最強の名が啼くというモノだ。

「はいお待ちどう」

上に広がる形の硝子のコップには、九割目までにカフェオレが注がれていた。

(氷で嵩増(かさま)してる訳じゃないのに......)

まるで分野に造詣が深い人間であるかのように祐は小さく鼻を鳴らし、カフェオレを口に含んだ。ほんのり甘く、コーヒー独特の苦みが良く絡み合っている。


 会話は広がらない。ただひたすらな静寂だけが二人を結びつける。

「あのぉ.....俺に何にか用でもあるのか?」

「これと言った疑問はないかな......単に僕が君と一緒に居たいだけだ」

「じゃあお代は置いていくからもう出て行っても良いか?」

「それは困るよ。まだ僕は君を堪能していないからね」

どういう訳かこの魔術師に目的は無い。

 好きな人と一緒に居たいという単なる願いの言動に似通っていた。

「それじゃあ何かしらの世間話でもしようぜ。あんたは良くても俺は良くないんだ」

祐は眉を顰めてそう切り出すと、魔術師は手にしていたカップを置く。ガラスとガラスどうしがぶつかり合いチン、と甲高く鳴る。



 「君は、転生したらスライムだった件。という作品を知っているかい?」

突発的な切り出しだった。自身の故郷の話や、魔術師としての話を振るのかと思いきやこの魔術師は日本のラノベタイトルを口にした。

「は?」

短い疑問詞を祐は口にする。どれ程思考の猶予があろうとも恐らく祐はその疑問詞の末尾を伸ばす事しか出来なかっただろう。

「おや、知らないのかい?日本の有名なライトノベル作品だと思うのだが。それでは無職転生はどうかな?」

続けて魔術師は二つ目のタイトルを口にする。日本作品が好きな外国人なのだろうか、と祐の中で思考が巡るがそれでもまだ順応には至らない。

「もしかしてそれも知らないかな?ではRe.ゼロから始め──────

「ちょっと待ってくれ。あんた何が言いたいんだ?」

これ以上は知恵熱を出して意識が飛んでしまう一歩手前、祐は咄嗟に魔術師の話を遮った。

「世間話だと言うからアニメの話でもしようかなと。それで知っているのかい?」

「あぁぁ....名前くらいは知ってるけど。それがどうしたんだ?もしかしてあんたの好きな作品だったりするのか?」

「いいや」

即答だった。自分自身で振った話の種だというのに魔術師は、アニメ好きという訳でも無かった。

「...........はぁ?」

掴みどころのない言動の一切に祐の演算処理は、そろそろ限界を迎えそうだった。これがデフォルメされている世界であれば祐は頭から煙を出し始める頃合いだろう。

「私の弟子のひとりにアニメが好きな子が居て、誘われて見てみたのだが。魔法や魔術の精度、その他もろもろの魔術師としての出で立ちなどがどうも私には刺さらなくてね。だから、日本人であり退魔の衆の一員でもある君はどう思っているのか知りたかったんだけど。どうやら無理なようだね」

「あぁ....折角話広げようとしてくれてたのに、何か悪いな」

暖かな笑みを絶やすことの無かった、魔術師がふと萎れて見えた事もあってか祐は申し訳なさげに頭を下げる。

「いや良いんだよ。私も内容について語り合おうなど毛頭思っていなかったからね......そうだね、では少し違う方面で話でもしようか。君は、異世界転生についてどう思う?」

またしても突飛な問だった。ただ先程と比べればまだ思考の猶予が在る可愛げな質問だった。

「異世界転生ってあれだろ。別の世界に行ってすげーつえーって奴だろ?それについてどう思うって言われてもなぁ......」

だがどれ程の猶予が在ろうが、そのジャンルの作品を見たことの無い祐にとっては無用の長物と言える。

「少し雑な問いすぎたかな?......私はね異世界に転生するというのは、万物の真理に背く事象だと考えているんだ」

「ん?........」


論理の飛躍とでも言えるのだろう。魔術師は人の尺度では図り切れないスケールの物事を口にした。

「輪廻転生。文字通り全ての生命は流転する。つまり、誰かが死のうがそれは別の誰かに生まれ変わるという事になるから輪廻の陣には常に同量の魂が乗り続けている事になるんだ。ただ異世界に飛ばされるという事は、別の輪廻に足を踏み入れることになる.......おかしいと思わないかい?」

「あぁぁ....ん?あ、いやそうなのかなぁ?....」

魔術師としては相当に話を砕いて祐に説明しているのだろうが、お生憎の事祐の頭では理解するのに時間がかかる。

「要するに一定の魂が乗り続けるという絶対のルールが存在する輪廻の陣から、魂が溢れ出る事はあり得ねぇって言いたいのか?」

「そういう事だね。──────気になったことは無いかい。例えば百の魂が存在する輪廻から一つの魂が異世界に飛ばされた時、その穴はどうなると思う?」

「さぁ.......」

祐は困惑せざるを得なかった。

 外人だというのにこの魔術師は、恐ろしい程流暢に日本語を口にする。だから言葉が分からない訳では無かった。

 単純に、そして端的にこの魔術師の問いの答えが分からないだけなのだった。

「君は退魔の衆に属している以上四神力ししんりょくという単語を知っているだろ。魔力、巫力、覇力、闘力の四大力を指す言葉だが、一体どこから神の文字が溢れたか知っているかい?」

 どういう訳か、この男は答えを知っていながら祐に問いを浴びせ続けた。それと同時話題の切り替え方が余りに校則だった。

「神みたいな力を使えるから?」

「ふふっ。(あなが)ち間違いではない。けど厳密に言えば、かつて神代(かみよ)の人類はその特殊な力は神からの恩恵だと考えていた。だからこそ、そこに神の文字が刻まれているんだ」

「へぇえ....っで、それが一体転生と何の関係が?」

「話が逸れてしまってすまないね。ただ君にはこれからの内容の為に四神という概念を知ってもらいたかったんだ」

魔術師はそう言うと残り少なくなったコーヒーを一気に飲み干した。

 カップの内側にコーヒーの筋道がうっすらと影を残している。

「異世界に転生された魂のせいで、この世界の輪廻には穴が開く。ただ輪廻には穴は開くはずがないという絶対の規則が存在するためにそこで二つの事象が反発を起こす。そこで魔力の神はかつてこんな過ちを犯した。──────


 ──────その穴の代わりに魔力で出来た人を入れようと 


この魔術師は、こんな平穏な日常の一コマにこの世全ての真理を口にした。

 あり得ない話ではない。ただそんな事が可能なのだろうか。いやそもそも神何てモノが存在しゆるのだろうか。祐には男の端から端までの話に理解が及ばなかった。


 だが、否定するには至らなかった。


 どうやらこの魔術師は千年近く生きているのだから。


「ちょっと待てよ。その人の代わりって..........まさか魔陰か?」

「ご名答。その通りだよ.......僕はある男との約束で長生きしてるって言ったけど、この世界の異常を治す方法を探求しているからでもあるんだ」

祐は額から汗を流していた。やけに湿っていて、そして体を良く冷やす。

 この世の真理だというのに魔術師は平然と祐を見つめていた。

 よく知り得た事だからなのだろう。だが限度がある。

 千年と言う時間は人を人では無くす時間なのだろうか。


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