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退魔の英雄  作者: 明太子
外界之魔陰
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54-1真理への到達

毎日投稿三十四日目。

今回は二部制で書いています。多分次は五千文字かもっとか......


では楽しんでください!!

 七月二日。

 祐は高校二年の夏休み二日目の日付を跨いだ。

「........風呂入ろ」

祐は頭を掻いた。まるで茂みに手を突っ込んだようなこそばゆい感触が途端走る。祐は見ずとも己の寝癖が動転としている事が分かった。

 伽藍洞のように何もない空間に一人祐は目覚めた。

 珍しい事に、アラーム何てお助けアイテムを使わずに祐の眼は覚める。

 さらり、と足の裏と畳とが擦れる。

 乱雑に置いた荷物から、下着を取り出すと祐は廊下に繋がる襖をガラリと開けた。

「おはようございます鬼川祐様」

咄嗟祐を呼ぶ声が聞こえた。だがどうしてかその声の主は姿が無い。

「──────どぅわぁぁぁぁああ!!!──────」

試しにと下を向いた祐は、喧騒たるどよめきを屋敷にまき散らした。

 この世の怪異を知っている筈の祐は、まるで幽霊でも見たかのように尻もちを着く。

 

 そこには一人の老婆が居た。

 だが途轍もなく小さい。小さく可愛らしい老婆と言えども限度を超えていた。

「朝ごはんの支度が出来ました」

だがこの老婆は、鼓膜を破壊するような祐の叫びに反応も見せず頭を厳かに下げる。

 

 清玄の仕えは嘉美(きみ)と祐に名乗った。自身の隣に置いた脚付き膳の食事を祐の一室にそっと置いた。

 何故日本人は白米を銀シャリと呼ぶのかという疑問を返すよう銀色に白米は輝きを放っていた。豆腐と葱だけの味噌汁、切り身の焼鮭、そして切り干し大根。これ以上もこれ以下も欲そうとは思わない究極の朝食であった。

「それでは失礼いたします......」

嘉美は部屋の外で再び祐に頭を下げた。

「膳はそのまま置いて頂ければ、私の方でおさげいたしますので」

襖に手を掛けると嘉美は襖同士が触れ合う音の立てず、身を退いた。

 半覚醒の祐は、思考が随分と滞っていた。

 網膜に光としての情報を取り込むことに異常は無い。

 だが不思議と登たつ湯気に臭いを感じなかった。

「頂きます..........」

両手を丁寧に合わせると祐は箸を取った。

 何の手順であるかは祐も不明だが、味噌汁を少量口に含む。

「うめぇ.........」

嗅覚と関わりの深い味覚。それだけは嫌と言う程働いていた。


 一日一善とはモノの例えか、祐は四季(しき)の元に頭を差し出しに行った。

 だからと言って、生首を差し出すわけでも無い。

「.............」

解析魔術と修復魔術の連用。四季は昨日以上の集中力と時間を要して祐を診る。

 二度目の触れ合いだというのに、祐は少々気まずかった。それはこの四季という女性が人間らしからない装いを見せるからだろう。

『.......結論:解析が完了しました。報告:修復率0.03パーセント。解析率22パーセント』

殆ど機会と変わりのない説明を聞き入れた祐であったが、正直理解には及ばない。

「えぇっと四季さん。その数字を出来るだけ分かりやすく説明してくれたりします?」

瞼を開けた祐は、申し訳なく頼んだ。

『承諾:分かりました。私としても更なる説明をと思っておりましたので、説明させていただきます』

四季は咳ばらいをするでもなく、祐をじとりと見つめると口を開く。

『論理:鬼川祐様の脳、身体、もとい魔術の回路、魔力など諸々の解析を行う為まず修復魔術を施しました。結果:破壊されていた部分の大凡0.03パーセントの修復に成功。解析魔術は修復情報と以前から刻まれていた情報からの22パーセントの解析に──────

「ストップ。ストップだ四季さん。落ち着いてくれ」

祐は自動音声のように刻まれた言葉を強制的に断ち切った。

『論理:それはどうしてですか?』

事初めて四季は、首をちょこんと傾げた。

 それがどうしてか祐には可愛げに思える。

「えぇっと説明してくれって頼んだのは俺なんだけどさ........もう少し分かりやす、いや。むっちゃくちゃ分かりやすく説明していただけると助かる。うん。ほんと」

畳に正座をしながらに祐は頭を下げた。

『解析:むっちゃくちゃ。という定義は如何ほどでしょうか?』

余りに真面目に疑問を返されたが故に祐は、ピタリと固まる。そして自分自身の中でその定義を定めた。

「あぁ......それじゃあ小さい子供に説明するみたいにお願いできる?」

『承諾:(かしこ)まりました。──────まず鬼川祐様の脳や身体、その他流れている魔力そして魔術回路は酷く傷が付いている状態なのね。簡単な話、水に濡れた本の文字を想像してくれると凄い助かるのね。どうして魔力が使えなくなったのか、そして魔術が使えなくなったのかを解析するためにはその大元の情報を修復する必要があるんだ。──────とこのように喋ればよろしいでしょうか』

祐は途端目を丸くして四季を眺めた。

 先程までマニュアルに従ったような喋り方をしていた彼女は、いきなり声色も喋り方もが変化した。

 冷徹としていたそれは丸く温かい。

『..........質疑:よろしいでしょうか?』

「えっ?......あぁうん!!今みたいな感じでお願いします」

狐に化かされたように、何処か遠くに飛んでいた意識を引きずり戻す。

『承諾:かしこまりました。それでは続けさせていただきます。──────その修復を最初に行ったんだけど、その修復状況が全体の0.03パーセント程なんだ。つまりまだ端も端しか治せていないのね。けど元ある情報から解析した結果昨日の部分と合わせて22パーセント解析が完了したんだ。大凡の原因は突き止めたんだけど、まだ完璧とは言えない状態なんだ。──────と言う訳でございます』

要所要所の切り替えが、鋭角で素早かった。

「じゃあまだ全然って事?」

えらく砕いた表現を指せたと言うのに祐の纏めは恐ろしく端的であった。

『肯定:その通りでございます。三日、と昨日ご説明しましたが修復を完全に終える為には三千三百三十三日。ざっと十一年は掛かりますね』

本来の予定の実に千百十一倍もの時間の目途が立った。

 そんな莫迦げた単位の時間だというのに、四季は平然と口にする。

「噓でしょ!?」

『否定:嘘ではありません。論理:しかし私の修復魔術の能力が向上すれば短く済む場合も考えられます。しかしながら今回の目標は解析による原因の特定です。その場合ですと掛かる日数は十日ほどだと考えられます』

「...........確かに。そうだね」

冷静なツッコミに祐は前のめりにしていた体をぐっと引いた。

『結論:予定が三倍ほど広がりましたが、夏休みの期間には確実に終わると考えられます。明日もご協力お願いいたします』

足の痺れを感じさせないように、四季は素早く立ち上がった。

 コンビニの前で待たされている犬のように座る祐を見下ろすと四季は深々と頭を下げた。

 

 発条ぜんまい仕掛けに動く人形。

 暗く昏い眼の奥の闇。それは祐を呑み込む漆黒。

 どうしてか祐は、彼女を見て人間を感じられなかった。

 だからと言ってそれを機械として見ることは出来なかった。

 ──────ひたすらに感じる思いは、三年前。初めて見た傀儡のような自身と同等であるという事だけ。

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初見でしたら第零話から読んでもらえると助かります。

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