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毎日投稿二十四日目。
明日からは普通に分割せずに投稿できるかなと思います。
では楽しんでください!!
其の廊下。葉加瀬の足は加速度的に回転を速める。ショーケースの中に入り乱れる嘗ての功績が彼女を湿った視線で覆った。
『魔力を電気に変換する功績』
『第五魔法の活用例への功績』
『ヒト型生命体作成への功績』
やけに仰々しい表彰状と幾何学的なガラスのトロフィーが、葉加瀬の視界に入り込む。
「.........第三魔法だけは、本当に何としとしても守らねばな」
そう呟くと彼女は拳を握った。
「糠元先生.......一体彼女は何者なんですか?」
会議参加者の中で最も見た目の若い四十ばかりの男がそうかの科学者に尋ねる。
「おぉ蘆屋君か。もしかして彼女に見惚れたりでもしたのかな?」
「いえそういう訳ではなく。単純に失礼な奴だなと」
目くじらを立てるようにそう口を紡ぐと、蘆屋は葉加瀬の出ていった戸を見つめる。
「そうか君が科学者を志す時には彼女は、既にこの街を去っていたからねぇ.........柳葉加瀬。それが彼女の名前だよ」
手元に置かれていた珈琲をぐっと喉に通してからその名を口にした。
「蘆屋君。久々に君に授業でもしようかね.........素数番街を形成するうえで欠かすことのできないエネルギーとは何かね?」
「それは魔電気ではないでしょうか」
「うん。その通り」
問に対して素早い回答に糠元はやけににこやかと笑う。
かなりのハイペースで再び珈琲に口を付け、再び口を開いた。
「ではオゼル・シェードから供給した魔力を変換する方法は何かね?」
「それは..........未だ完璧な解明には至っていないのではないでしょうか」
「うん。またしてもその通りだよ──────けどそれはあの女を除いた回答ではあるがね」
此度は笑わない。丑三つ時、神社に藁人形を打ち付ける程の覚悟を決めたような怨みに包まれた顔をする。
(.....先生のこの顔。久々に見た)
蘆屋はぐっと固唾を呑むと、ゆっくりと口を開いた。
「どうして、彼女はそれを知っているのですか?」
「........魔力を電気へと変換するかの装置、天変地異。それを作り上げた張本人だからだ」
「彼女が!?」
声を荒げながらに蘆屋は、眼を丸くする。
「........あの女は、この街の根源となるモノをたった一人ですべて創り上げた本物の天才。──────そう私の心から嫌う天才じゃよ」
そして木製の机にコーヒーカップを強く叩きつけた。残響を残さずぴしゃりと音が切れる。
「まさか初出不明の論文や機械の殆ど全ては.......」
何かを察したよう蘆屋は口を開いた。所々に隙間の在る歯をぎしりと噛み締める糠元の顔は見るに堪えない。
悔し紛れに認めてなるモノかと心から鬱憤するよう凝り固まった首を縦に振る。
「なら第五魔法の活用法の論説。神領域への侵犯と感情演算プログラムの共生を用いたヒト型生命体も......」
口にしていながら蘆屋は震えが止まらなかった。
理由は随分に簡単である。歴史上数多の科学者が生まれるが、世界を変革させるほどの発明を残すものなど砂漠の砂から砂粒を持ち上げるに至る確率に相当するだろう。それほどの狭き門をたった一人で三度も開けたのだ。
これほどの異常は数千年生きていようが垣間見ることは無い。
「ん?.......糠元先生?」
蘆屋はふと視線を糠元の肩に落した。振動マシーンに腰を下ろしている訳でも無い筈が、随分と震えていた。
「しかし......あの女が手にした第三魔法さえ奪えばこの街は活気に満ちる。私の名はあの女すらをも超える.........」
野心。そんな二文字が糠元の背には浮かび上がっていた。
『柳葉加瀬様。この度は十代会議にお越しいただいた事感謝いたします』
新円を描く街の端で葉加瀬は二枚目な男に頭を下げられる。
「..........誰の差し金だい?」
しかし彼女は顔を和らげることは愚か、切れ味の在る言葉と視線を突き付ける。
『それはお答えできません』
「ふんっ。相変わらず巫山戯た連中だ.....適当にはぐらかす事もしないとは、余程私を舐めているようだな」
『その様な思いは無いのですが、私めの主人に変わりお詫び申し上げます』
そして再び頭を下げる。
単純な話、葉加瀬は腹が立つ以前に気持ちが悪かったのだ。それは吐き気やどうこうではなく、気味の悪い延長線上とでも言える。
「.......随分とヒト型生命体の精度が上がっているのぉ。貴様いつ頃作られた?」
『私自身は、つい二ヶ月と一週間と三日前ですね』
「ここに来るたびに貴様のようなモノを見なければならぬこちらの身にもなれ」
葉加瀬はそう顔を顰めた。
そうこの二枚目な男。人ではない。いやそれは厳密に言えばの話であろう。
人間の骨格。筋肉。そして思考方法や単純な肉体的能力は、人間と大差がない。いや外の世界の技術程度では、恐らく見分けを付ける事さえままならない。
葉加瀬は、ポケットから煙草を取り出すと揚々と煙草を吹かし始めた。
「何じゃ、これは?」
帰宅早々に葉加瀬は、首を傾げた。ゴミ屋敷に変わりはないのだが、何処か泥棒に入られたように散乱とする。
「いやそれ以前に、結界が開かれていた.......まさか儂が居ぬ間に核を?」
自信の財布から万札が数枚抜き取られてい人のような顔をする。一目散に核を置いていたデスクに走った。
「..........あれ?普通にあるではないか」
憶測は外れていた。それどころか厳重なガラスケースに入れられており警備性が格段に向上している。
「これは..........?」
そんな箱の下に居ちまいの置手紙が置かれていた。内容は随分と簡素である。
『第三魔法が大陸の魔術師に狙われていた。霧太刀時雨』
「剣聖の神子の置手紙?........まぁ本人ではあるだろうな」
葉加瀬は、新たな煙草を口に咥えると火を点けずに核を手に取る。
しかし、姿のない結界を張れるわけでも無い。一種の心象空間を用いた神懸る魔術を扱えるわけでも無い。
「..........これを現状本物であると判断する術は無いしのぉ。先ずは祐でも呼ぶとするかのぉ」
核をガラスケースに素早く入れると、葉加瀬はジッポライターで煙草の火を点ける。
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初見でしたら第零話から読んでもらえると助かります。




