44-1 平和な二日目
毎日投稿二十一日目。
色々ありきで本当に忙しかったので、今回は一話を二分割して登校しようかなと........
まぁホントに青春の一ページだと思ってもらって。
「ってわけなのよ」
坂城の断片的な回想が終わりを告げる。七つばかりは年の離れた時雨ではあるが、流石は女であった。荻野内雅が何故にかの鬼川祐を好いたのか分かる気がしたのだ。
「何だかんだと言いましても、彼並々には良い顔立ちですからね」
淡々とした時雨の評価に、周りの三人は合わせて首を傾げる。
「.......ですが、余りその様な雰囲気は見せませんよね彼女」
「雅ちゃん。結構ツンデレさんだから。口にするのが恥ずかしいみたい」
坂城の補足説明にて時雨はなるほどと首を再び縦に振る。
随分と直観的で、雰囲気を取り繕ったような感想であるがやはりあの姿をした女子が純粋な好意を見せるのは考えにくいのも事実であった。
「しかも、普通に接することも意識しちゃうみたいで......結構つんけんしてるからねぇあの子」
「ホント勿体ないよねぇ.....けど鬼川君が強いって信じられないよね」
その事柄については時雨も同様の感想を抱いていた。
仮に霧太刀時雨が純粋な女として生を受けたのであれば、あの中性的な見た目に強さを見出すのは少々無理な話であるからだ。
腕は半端に細く、顔立ちは少々女じみていて、尚且つ髪はまさに女のような鬼川祐に対して。
──────
二百メートルメドレー。鬼川祐と土屋の共通の友達であり、かの天童高校の三莫迦のもう一人。八田弘明の競技を応援中の事である。
「べっくしッ!!!!.......べっくしッ!!!!」
特大のくしゃみを二度かき鳴らして祐は、鼻の下を掻いた。
「あれ?風邪かい鬼ちゃん?」
「風邪じゃねぇ。何かむず痒くなっただけだ」
祐は鼻をすすると、長水路で競技中の八田の帽子を追う。最下位とは半往復分のリードを付け一位を悠々と泳いでいる。
全国の表彰台に一度乗ったことがある以上当然ではあった。
「八田ちゃーん!!頑張れいー!!」
気の抜けた炭酸のような何とも言えないだらけた声援を土屋は送っていた。しかしながらその隣に居座る白髪の男もまた淡々と応援をしていたわけだ。
結果は火を見るよりも明らかであったが、八田弘明が余裕綽々と言わんばかりに手のひらサイズの金メダルを首にかけている。
「いやぁ今年もまたまた優勝しちゃいましたよ。はっはっはっ」
ジャージ姿に濡れた髪を携えた八田は、胸をぐっと張り上げる。金のメダルは縦軸に従いその面を様々な角度を二人に写した。
「相変わらずここいらじゃあ八田ちゃんは。よっ素数番街一!!」
「そりゃな。何たって俺去年全国六位の人間ですから!!」
土屋はえらく八田を持ち上げる。だからと言って八田が謙遜する訳もなく、より一層声を高らかにし笑った。
「そう言えばよ八田。お前この後の棒倒し出るのか?」
祐はその笑いを遮るようにしてそう尋ねる。すると哄笑は止んだ。
「えぇ?いや普通に出るけど何で?」
その問いの意図に気が付かぬよう八田は眉を顰め祐に顔を寄せた。
「あぁいや、体力しんどくないのかなって.........杞憂だったな」
祐は脳をぐるりと働かせ、自問に対して素早く自答を返す。もし祐が修行僧なのであれば一度の生で悟りを開くに至るのかもしれない。
「けど、髪とか乾かさないといけないから。先に二人だけで向かっといてくれていいぜ」
そして八田は二人と別れた。素早く振り向いたせいかもしれないが、祐のジャージには一センチの半径にも満たない水玉がわらわらと群を成していた。
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