中編
第三章:裏切りの告白
ルシアはすぐに二人の関係に気づき、そのことで心中穏やかではなかった。ある日、ついに彼女はカスパーに問い詰めた。
「カスパー様、最近あなたの様子が変わったと思いませんか?私を避けるようになって、何かあったのでは?」
ルシアは冷たい目で王子を見つめた。
カスパーは一瞬黙り込むと、やがて口を開いた。
「ルシア、実は…好きな人が出来てしまったんだ。」
その言葉に、ルシアは驚きとともに冷や汗が流れるのを感じた。
「な、なぜ…私がいるのに!」
「君は完璧すぎるんだ。君の完璧さに圧倒されて、自分が小さくなってしまう。エリスは、僕を自然に受け入れてくれるんだ。」
カスパーの言葉は、ルシアの心に深く突き刺さった。
「ふざけないで!」
ルシアは声を荒げて言った。
「私がどれだけあなたを支え、完璧な女性としてあなたを輝かせてきたと思っているのですか?なのに、そんな…男爵家の娘に!?」
カスパーはしばらく黙っていたが、やがてため息をつき、静かに言った。
「もう君とは一緒にいられない。エリスと共に生きたいんだ。」
その瞬間、ルシアは心の中で怒りと屈辱に震えていた。彼女の誇りが、無残にも砕け散ったような気がした。
第四章:婚約破棄
婚約破棄の決定は早々に下され、王宮内で広く知れ渡った。カスパーは王子としての立場からこの婚約破棄についてはかたくなに譲らなかったのだ。自分の幸せを守るため、エリスとの結婚を決意した。しかし、エリスには思いもよらぬ問題が待ち受けていた。
「カスパー様、私たち、これからどうするのですか?私、王族になるのかしら?それとも爵位をいただくことができるのかしら…」
エリスは心の中でうれしさを感じながら、満面の笑みで言った。
「心配することはない、僕はエリスと共に生きることを決めたんだ。」
カスパーはエリスに微笑みながら曖昧な答えをかえした。
エリスは一抹の不安を感じたが、気づかないふりをしてカスパーに寄り添った。
「嬉しいです、カスパー様」
一方、ルシアは冷徹にその動きを見守っていた。彼女の心の中では、カスパーに対する怒りと悔しさが渦巻いていた。
ルシアはその夜、鏡の前で静かに呟いた。
「こんなことになるなんて…どうしてあんな女に心を奪われたのよ…」
その後、カスパーは次第に王宮内での評判が悪化し、ついには王家からも見放され、王族としての資格を失った。カスパーは、男爵家に婿入りするしかなくなったのだ。
エリスは次々と不満を漏らし始める。
「カスパー様、私はこんな生活を望んでいませんわ。」
エリスの計算に狂いが生じ、結婚後の生活が困難になってきた。男爵家の財政は悪化し、王子との結婚が逆に重荷となっていったのだ。
第五章:裏切りの代償
ルシアの心は冷ややかだった。
「カスパー様、エリス嬢、二人とも最終的には破滅してしまうのね。」
ルシアは内心でほくそ笑み、冷徹につぶやいた。
その頃、カスパーとエリスは完全に貴族としての誇りを失い、困窮していた。
「こんなはずじゃなかったのに…!」
エリスは悔しさを露わにし、本性丸出しでカスパーに対して不満をぶつけた。
「僕だってそうだ。君にだまされたんだ!」
カスパーもエリスを責めたが、もはや取り返しがつかないことを悟っていた。