仲間
「今回の任務は全員で行ってほしい」
「ほう」
「珍しい」
「でも任務を4人で行くのはリスクが高いですよ」
「みんなで行った方が安全じゃないの?」
と華椰葉が質問をした。
「普通はな。ただし忍者の場合は少なければ少ない方がバレずに任務を遂行できる確率が高くなる」
「憂斗の言う通りだ。私たちは通常1人、多くても2人だ」
「じゃあ今回はどうして」
「仲良くなってほしいから!」
「は」
みんな同時に言った
「ハモるねー、仲いいねー!」
「ふざけないでください」
「いや、ふざけてないよ」
「ならなんで」
「忍者も人間だ。いつもバラバラだと辛いだろ。たまには鍛え合っている者同士、仲間として行動しないとな」
内心嬉しいが
「辛いとしても任務が成功しなければ本末転倒では?」
「今回は4人でも大丈夫そうな任務を見つけてきた。だから大丈夫でしょ!」
「はぁ。とにかく任務内容は」
「窃盗犯の捕獲だ」
「これもまた珍しい」
「そう、いつもはスパイ行為を基本としているからな。だから少人数がいいのだが、今回は捕獲だから4人でも問題ない」
「でも先生、それは治安隊がする仕事ですよね? なんで忍者の私たちが」
みゆりの言う通り、これまでは治安隊が取り締まっていた
「今回の任務地もすでに治安隊が取り締まっている。しかし、最近は窃盗犯の動きが活発になっているんだ。治安隊は一度取り締まった場所を再度取り締まることはしないからな」
治安隊のプライドなのか、取り締まった場所にまた窃盗が起きている事実を認めたくないのだろう。
「その窃盗犯について聞きたいのですが、まさか地下人のではないですよね」
「いや、そのまさかだ。軍の華椰葉なら馴染み深いだろう。だからこそ華椰葉にもついて行って欲しいんだ」
「わかりました」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「先生ひどいよぉーーーーーー!」
「泊にピッタリだろ」
「ピッタリって、確かに僕は影が薄いよ! でも、窃盗犯に紛れ込んで話を聞けだなんて無茶に決まってるじゃんかよ!」
「泊……」
「華椰葉! そんな『可哀想』って目で見ないでもらえるかな! それもそれでまた傷つく!」
「あ、ごめん無意識で」
「あはは! 華椰はほんと面白い!」
そうこうしているうちに
「着いたね」
目の前には廃墟が広がる
「結構栄えていた街っぽいけど」
「彼らの窃盗方法は非道すぎるの。市民が戻れなくなるのも当然」
華椰葉は辛そうにそう言った。
「華椰葉、俺らはその窃盗方法を知らないのだが聞いてもいいか」
「うん。その方法は自然災害を装うの」
「自然災害?」
「そう、山火事とか地震とか。人々が生活を送れなくするレベルのものを発生させてね」
「それで人が街からいなくなったタイミングで盗むのか」
「でも山火事なら発生させられそうなイメージだけど、地震って起こせるのか?」
いつもふざける泊がまじめに質問をする
「うん、爆発でね。地下人だからこそ地下にたくさんの火薬を用意して大規模な爆発を起こさせる。そうすると地震に似た揺れが地上で起きるから」
「結構大量な爆薬が必要そうだね」
「うん、だから地震のはめったに起こさないけどね」
「でも、そんなに爆薬を用意するのなら街を燃やした方が早いと考えるのでは?」
「んなわけないでしょ! そんなことしたら盗む金品も丸焦げじゃない!」
「うわぁそうか! でもなんかみゆりに指摘されるのムカつく~!」
「ふっ! まだまだね!」
「とにかく、説明感謝する」
「うん」
段々と日が沈む
「暗くなって奴らが来たら作戦開始だ」
作戦内容としては
1.泊が犯人から情報収集
2.ある程度情報を得たらみゆりの術で確保
3.再度窃盗が発生しないように窃盗犯に混乱忍術を施す
そう、先生ははじめに捕獲と指示していたが忍術界に常人を留めておくことは危険。
そのため、混乱忍術という恐怖を与えることで犯人が再犯しないのはもちろんのこと、恐怖を周囲に言い広めることを目的としている
そのせいで都市伝説のある場所ができてしまうが、窃盗されるよりはマシだろう
皆の準備が整った
そして、
「来たぞ」
窃盗犯が来たタイミングで泊は移動する
「治安隊が調査した後は盗み放題だから最高だな!」
「最高かよ、こんなボロ売ったっていくらにもならないじゃねえかよ」
「ところで何を盗めばいいんだ」
「お前今更何言ってんだよ、いつも通り家電だろ。こういう重いのはゆっくり盗めるこのタイミングしかないからな」
「そうだったそうだった」
泊は話に参加してもばれる様子はなかった
「よし、お前はそっち持て」
「あ、うん」
グウォン
「お、お前力強いな」
「そうかな、これくらい朝飯前さ」
それを見ている3人
だが
本当に気付かれない泊の様子が面白くてたまらなくなり、みゆりは身体をピクピクと震わせ笑いを堪えていた。
「ちょっと、みゆり大丈夫?!」
コソコソっと小さな声で話しかける
すると
「ブフォッ! あははははぁーーー!」
堪えられなくなり、吹き出してしまった
「ちょ! 静かに!」
焦った様子でどうしようもなくなり華椰葉はみゆりの口を塞ぐ
しかし、それは手遅れだったようで
「だれだ!」
声が聞こえた方に向かう窃盗犯たち
「猫でも迷い込んだんじゃないか。それよりも早く盗んだ方がいいと思うが」
「それもそうか」
ジロっと泊を見る
「……ってお前、誰だ。そんなこと言うやつはいないと思ったら紛れ込んでいたのか」
「くそっ、バレたか。泊は影を消せば何とかなる。だから俺たちは逃げるぞ」
憂斗の指示に従い逃げようとしたその時
「みーっけ」
窃盗犯のひとりに見つかった
その瞬間、華椰葉と憂斗は素早く距離を取ることができたが、
みゆりが捕まった
「みゆり!」
華椰葉の大きな声が響き渡る
そのまま連れ去られそうになるが
「私のことは大丈夫! だから3人は逃げて!」
これのどこが大丈夫なのか
怒りで頭がズーーーンと重くなる
「華椰葉、華椰葉! お前大丈夫か」
憂斗が声を掛け華椰葉の顔を覗くと
華椰葉の目は光がなくなりくすんでいた
「このまま逃げるなんて、できない」
「絶対助ける」