華椰葉の忍術
「で、華椰葉はどんな術を使ったんだ」
憂斗が負けを認めた流れで質問をした。
「私は......」
「忍術の無効化」
サッ!
それを聞いた途端、みゆりと泊は一瞬で華椰葉から距離を置いた
その反応に少し悲しげな表情を見せる
しかし1人は興味津々な顔をして、話を聞きたそうにしている
その様子を見てほっと肩をなでおろす
「私の忍術は忍術と言えるのかどうかわからないの。怖がらせてごめんなさい」
「この間けがをしたとき、一色家所属の唯一の治癒忍者が私を治そうと忍術を使ったの。そしたら、その人は私にだけ治療を行えなくなってしまって。自分の力に気付いたとき、すごく不安な顔をしてその人も私から離れた」
そんな話をしていると、先ほど離れた2人は申し訳なさそうゆっくりと華椰葉に近づく。
その様子を見て華椰葉も申し訳なくなり
「まだ会って1日そこらの人を信用できないのは当然のことだし!」
明るくして、場を和ませようとした。すると、
「その力を持った人って他にも華椰葉の身近にいるのか?」
突然の質問に驚いたが
「いないよ、私だけ。だから怖がられて売ら、いや治療も受けにくくなったし、自分で治す術を身に付けたいなと思って」
「そうか……」
憂斗は少し考えたあと、ハッとした表情を見せた
「それって俺らのほかに誰が知ってるんだ! その忍術が使えること!」
「ん-、一色家所属のその人と、その人がそれを父に相談したから父親でしょ、あとは……母親も知ってると思うけど」
「先生には?」
「別に聞かれなかったから、まだ言ってないよ」
「今知っている人だけに留めておけ」
「な、なんで?」
みゆりは不思議そうに質問した
「だってお前らでさえこの反応なんだぞ。他の奴らが知ったら何をしでかすかわからない」
「それもそうだな」
「うん、私たちも口外しないようにしよう」
そして華椰葉も、
「わかった、気を付ける。でも先生にはいずれ聞かれるんじゃ」
「その心配はない。あの人は他人にめっきり興味がないからな」
「なるほど」
他人に興味がないからあんな感じなのかと、しっくりきた
「そういえば先生がもう任務割り振ってたよ」
「はやっ! 先生しごできすぎぃ~!」
「で、どういう割り振り」
バっ!
憂斗が持っていた紙をみゆりが奪い取り、何やらじっくりと見ている
「えぇぇぇーーーーーー!」
一同に耳をふさいだ
当の本人も自分の声がうるさく耳をふさいでいる
「なんだよ! そんなでけぇ声出して!」
「ちょっとちょっと! これ見て! 華椰もう任務入ってるよ」
「いや、そんなはずが」
次は憂斗がみゆりから紙を奪い返す
「...…ほんとだ」
「僕らは入学して2週間、憂斗でさえも1週間は忍術を仕上げる期間があった」
「ふ、2日目って先生さすがに間違えてるよね。ちょっと先生のとこ行って確認しよ」
職員室にて
「ん? 華椰葉も今日から任務だぞ?」
「……え?」
帰りの廊下にて
「先生のあの『当たり前でしょ?』って顔見た?! なんかムカつくよね~! あんなにも美人なのに。勿体ない」
「先生って本当に綺麗だよね」
確かにあの美しさは罪だ。
光を透す深いブルーの髪色を高めの位置で束ね、べっこう飴のような瞳を持っている。
「あんなに美人なら忍者なんかしないで、芸能界とか行けばよかったのにね! せっかくの顔も忍者は隠さないといけないんだから」
「まぁ、見た目は別としてあの人は中身が、ちゃらんぽらんだからな」
「ほんと憂斗の言う通り! でもなんかつかみどころもないんだよねぇー。」
前から知っている3人ですら先生のことは基本見た目の話になる。そして、中身のことは知らないらしい。
まだ出会って間もないが、華椰葉はそんな謎めいた先生のことも知りたいと思った。
すると、
「よしっ、じゃ僕とみゆりはササっとお掃除してきちゃいまーす!」
「うん! 気を付けて!」
「華椰こそ気を付けるんだよ、初任務なんだから! 憂斗がいるから大丈夫だろうけど」
「だね、気を付ける! ありがとう!」
この日はみゆりと泊のペア、華椰葉と憂斗のペアに分かれての任務だった。
先生は華椰葉が初任務だから憂斗とペアにさせたのだろう。
「さっきからなんでキョロキョロしてるんだ。別に誰かに後つけられたりはしてないはずだが」
「いや、なんかここら辺見たことあるような......」
そんな会話をしていると任務地に到着する
「あぁ、ごめん。任務地の説明してなかったな。実はここなんだ」
すると、
華椰葉の目の前には馴染み深い景色が広がる
「えっ」
「待って、ここって」
「……軍事施設?!」