トンネルの出口
仕入れの帰りに刀を持った長髪の女性に襲われた、ジャンク屋の面々。
散り散りになりながらも、必死に逃げたメンバー達が続々と集まり始めたのだが─
─第2話─
集合場所の公園─
1人…また1人と、いつもの集合場所へと当たり前の様に集結して来る影に、口には出さないが安堵の表情を浮かべながら闇を見つめるソラ。
その影へと近付くや、声を掛ける。
『何とか逃げ切ったか。。』
そう声を掛けるも、声を掛けられた影はうなだれたまま返事をしない。
イチだった。
『ユマが来ないんだ……。』
俺を逃がすために、囮になるって言い出して。アイツ……。
その唇は震えていた。
『マジかよ……。』
ユマは仲間の中では1番足が速く、その速さを生かして、例え最後に逃げ始めたとしても、集合場所にはいつも、ソラの次には集まって来ていた。
時間を間違える奴でもなかった。
そんなユマが来ない。
もしかしたら、公園がバレたくないから、ジャンク屋の方へでも逃げたんじゃないだろうか?と、みんなで無理矢理納得をすると帰路についた。
『居たか??』
ジャンク屋の中で、ソラが声を掛ける。
くまなく探した。
だが─
そこに、ユマの姿はない。
その日以降、ユマがジャンク屋に帰って来る事はなかった─。
ユマが消えてから、3日後。
いつもの、ヘッドホンの様な物を乗せた女性が特殊セラミックを買いに来た。
『今日は、ユマさんが居ませんね。』
そう声を掛けられ、誰もが一瞬、口ごもる。
しかし─
いつまでも隠し通せるものでもないだろう事を、ジャンク屋のメンバーは悟っていた。
この端末を渡して来た女なら、何かわかるかもしれない。
そう思うと、言葉が勝手に口から出ていた。
『ちょっと良いかな?』
目配せをして、全員で頷き合いながら代表して口を開いたのはソラ。
そのままジャンク屋の裏にある倉庫まで連れて行くと、話し始めた。
『内緒の話にして欲しいんだけど、特殊セラミックをさ、A.I.の倉庫から持って来たんだよ。』
『そうでしょうね。』
『そこから逃げる時に、ユマだけ帰って来ない。』
『なるほど。』
いつもの様に目の周りを緑色に染めた、不思議な女性は相槌を打ちながらも、その頭の上に乗せたヘッドホンの様な物から、小さなアンテナの様な物を伸ばしていた。
『端末は全員に渡しましたか?』
そう聞かれ、うん。と頷くソラ。
『ならば、こちらでも調べてみます。』
女性の言葉に、藁にもすがる思いでお願いしますと告げると、次の仕入れには、誰か護衛を付けるとまで約束してくれた。
いつもの様に小型のバギーに特殊セラミックの箱を積み込むと、女性は出発して行った。
それを見送りながら、護衛って一体誰が来るんだろうな─
俺達に、ついて来れない様な足手まといなら、必要ないんだけどな。
と、ぶつぶつとボヤきながらも、残ったメンバーに先程の女性との話をする。
『それって、また行くんすか?』
イチが不安そうに聞く。
元々、心配性なイチからはネガティブな言葉が、口から出て来る。
良くも悪くも…その疑心暗鬼な性格は逃げるルートの新規開拓や、仕入れ先に忍び込むルートの確保等ジャンク屋の中でも役立っていた。
『行くしかないだろ?売らなきゃ、終わりだよ。』
生きて行く為に仕方ないとは言え、仕入れが毎回毎回成功して来た今までが、本当にラッキー過ぎたのかもしれない。
でもユマは、きっとどこかで、必ず生きていると信じていた。
あれから、5日が過ぎた。
あの女性からの連絡はまだない。
はやる気持ちを抑えつつも、全員で今夜仕入れに行こうかとジャンク屋の中で話をしていた時だった。
─Prrrr.....
ソラの端末が鳴り出した。
驚きながらも端末を見ると、画面に文字が表示されていた。
【ユマさんのおおよその場所はわかりました。】
その文字を見ながら、全員固唾を飲んで続きの文章を見守っていた。
生きていたのかもしれない!そう思うと、嬉しかった。
【その件で話があります。今から向かいます。】
この人なら─!!
直感に身を任せる形で遂に、仕入れ先を大口取引してくれる女性へと告げた。
果たして、ユマは生きているのか─!?
今後の展開を、お楽しみに─