長髪の女性。
なんとか追われながらも、逃げ延びたソラ。
再び普段通りの生活へと戻りつつも、生きる為にも必死に迷い、もがきながら前へ進んでいた。
そんな彼らに、忍び寄る恐怖とは─
─第1話─
2935年。日本のとある街。
『はい、いらっしゃーい!』
ココは、ジャンク屋エレガント。
何でも揃うと評判の店であり、店長はソラと言う少年であった。
この少年の他に4人の店員が働いているのだが、どの顔もまだ幼さの残る少年少女であり、戦争による親を失い・親から捨てられた子ども達でもあった。
ココのジャンク屋を御用達にしていた、レジスタンスの1人と店長であるソラは、日常的にも当たり前の相談をしていた。
『特殊セラミックは、手に入りますか?』
最近良く来る、頭にヘッドホンの様な物を乗せて目の周りが緑色の、不思議な女性だった。
だが─
正直買ってくれるなら、誰でも良かった。
仕入れた商品はとにかく売り捌かないと、意味がない。
生活の為とは言え、独自のルートと言いながらも仕入れ先は、ジャンク屋の店員以外には、誰にも明かしてはいなかった。
ましてや、店自体も独立戦争の流れ弾による攻撃を受けた為に、2回も壊れた過去を持つ。
今後の為にも尚更に、修理費用も含めて生きて行くお金が必要であった。
『今ある分だけで、足りるかい?』
この前A.I.の倉庫から調達し、残っていた4箱の半分は売れていたが、この女性はいつも3箱以上の大量注文をしていた。
レジスタンスの中でも特に珍しい、毎回大口注文をしてくれる、お得意さんでもあったのだ。
『2箱でも欲しいですね。ですが、また仕入れが出来ましたら、連絡を貰えますか?』
そう言うと、端末を渡して来た。
この時代に、携帯端末を持ち歩いてる者など居なかった。
当然ではあるが、A.I.からの盗聴や侵食を恐れて持ち歩けないのが当たり前である。
だが─
聞けばこの端末は特殊電波を使用している為に、盗聴や侵食をされる恐れは全くないと言う。
『マジかよwwww』
そう言いながら、半信半疑で女性から端末を受け取ったソラ。
早くても明日以降になると伝えると、その女性は特殊セラミックを積みこみ、帰って行った。
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『また、今夜仕入れに行かなきゃな……』
店じまいが終わった後に、店員全員を集めて話をするソラ。
しかし─
店員の1人であるイチがまた行くんすか?と、暗い顔をしながら聞いて来た。
『仕方ないだろ?ジャンク屋が注文受けて売れないは、ダメだろうな。』
そう言うソラも顔には出さないが、不安が全くなかった訳ではない。
最近は特に、成功とは紙一重であった。
今だって、どうにかこうにかギリギリで成功しているだけなのだと言う事は、誰よりも承知していた。
そして─
今回倉庫へと盗みに入ればこの2週間だけで5度目となる。
前回は割と、ジャンク屋から近い所まで追われた。
それを考えても、中々リスクは高いのもわかりきっている。
それでも、やるしかなかった─
その日の夜22:30─
いつもの抜け道を使い、A.I.の倉庫裏へと辿り着くと、いつも通りの侵入口を使い倉庫へと入っていく。
見張りのAI兵士は全部で4名。
いつもより、少ない─。
これなら、行ける!!
5人でいつもなら3箱持ち出す所を、今日は1人1箱ずつ持ち出す様に、途中で作戦を変えた。
見張りの目をかいくぐり、倉庫の外へと運び出すとそのままジャンク屋へと走り出した。
『なんだよ、いつもより簡単じゃん』
追手の気配もなく、追われる事もなく、抜け道を戻るソラ達5人。
安堵の表情を浮かべながら、談笑をしながら自分たちの根城へと歩くジャンク屋の面々だが、抜け道の出口には何やら妖しい赤い光が見えていた。
『なんだよ、あれ……?』
ソラがいち早く気づくと、周りも言葉を発する事を辞め、口を真一文字に結んだ。
どの顔にも、緊張と恐怖と不安が浮かんでいた。
静かにその場に立つ妖しい赤い光をよく見ると、それは人型で刀を持ち、左手には何やら手袋を着けた瞳を赤く染めた長髪の女だった。
赤い光が一瞬大きく光るや、目にも止まらぬ速さで間合いを詰めると、ソラ達へと襲いかかる女。
振られた刀は、野太い大木すら一撃で切り倒す程の腕前である。
切られたら、ひとたまりもないだろう。
悲鳴を上げながら何とか躱して、気が付けば、それぞれが分散する形で逃げていた。
『後で合流するぞ!』
そう声を掛けると、ソラは闇へと駆け出していた。
目を赤く染め、突然襲いかかる長髪の刀を持った女性。
この女性は果たして、一体何者なのか─!?
ソラ達は、逃げ延びる事が出来るのか─!?
今後の展開を、お楽しみに─。