レプテリアンの血
隼人の子供を産めば一生安泰。
そんな邪悪な考えが頭から離れない。
私は役の上で恋人なんだし、体を求められたら黙って差し出すしかない買われた女なんだし、寝たら駄目な理由は……私には無いけど、隼人にはあるんだ。
私の設定って隼人と母親違いの兄と妹なんだよね。
生き別れで、今まで会ったことが無いから役者だってバレてないだけで、隼人は妹だと思っているから手を出さないんだ。
監督さんが設定をつけたの、私が妊娠して子供作るのを避けるためなのかな?
でも、私は兄だって知らない設定なんだから、好きだって迫って姦ってしまえば不可抗力だ。
うーん、正直なところ結婚なんてしないつもりだったし、妊娠出産子育を出来る自信が無い。
自分の両親を思うと……ろくでもない毒親で高校を卒業して看護学校の寮に入ってから会ってない。
金でベビーシッターを雇っても子供と遊んであげる自分の姿が想像できない。
毒親みたいに虐待して親権剥奪なんて目に遭わされる可能性も……
やっぱり三億六千万円もらって一生遊んで暮らすのが一番かな……
正直なところ、女優になって売れたらイケメン芸能人と付き合いたい願望はあった。
目の前に陰謀論以外は最高の条件を満たした男が現れたけど悩む。
結婚は相手の性格が大事って本当なんだな……
いや、性格は悪くない。
優しいし、気が利くし、ケチらないし、何か頼まれても嫌がらない。
ココまで誘惑しても紳士で我慢強くで変なこともしない。
陰謀論にハマっている以外は理想的な男なんだけどな……
一番の問題は私の正体がバレた時だ。
金で雇われた役者だとバレたら関係が破綻する。
悩んだけど結論が出ない。
本気で隼人の子供を妊娠する決心がつかなかった。
悩み抜いた末に意思決定を放棄した。
隼人に求められたら寝る。
妊娠したら産む。
自分の人生を成り行き任せにした。
地下室でいつものようにしていると、隼人が困った質問をしてきた。
「真矢は父親のことをどう思っているんだ?」
設定通りに答えて上げた。
「ロクに会ったことも無いわ」
隼人は深刻な顔で訪ねてきた。
「母親の事はどう思っている?」
私の苦手な演技だ、実の親は最低の毒親で絶縁している。
私には好い親がイメージできない。
設定通りに上手く誤魔化すしか無い。
「お母さんは大好きよ」
隼人は深刻な顔で断言した。
「もう黙っているわけに行かない、真矢を殺そうとしたのは俺の父親だ」
「酷い毒親ね!」演技じゃなくて、実の親に対する気持ちが出てしまった。
私は隼人と腹違いの兄妹の設定だから、殺そうとした男は私の父親でもある設定なんだよね。
「父さんは、母さんや子供を愛していないわけじゃ無い……」
「長い年月の間に血が薄まってしまった」
「だから遺伝的に離れた女に子供を産ませて母親違いの子供同士を結婚させることで血を濃くしようとしたんだ」
えっ、私達って実の兄と妹で子作りさせられる設定なの?
いや、コイツは私と姦りたくなって妄想をご都合主義に方向修正したんだ。
この流れだと、体を求められるのかな……
隼人は真剣な顔で妄言を吐いた。
「レプテリアンの交配相手として人類を作ってから長い年月が経ちすぎた、もうレプテリアンの血が濃い人間は多くない」
「純血種と呼べる人間は父さんと俺と……」
隼人は頭をかきむしると叫んだ。
「影の政府に支配される時代は終わりにすべきだ!」
「マイクロチップで思考をコントロールしちゃいけない、人間は自由意志で生きるべきなんだ!」
コイツ、目の前にぶら下がってる女に欲情して妄想を拗らせてる。
陰謀論者なんて都合が悪くなればいくらでも妄想を改変する論理的整合性の無い連中だ、ハメ倒してしまえば役者だとバレでもご都合主義に妄想を改変するかも……
邪悪な考えが頭をよぎった。
脱げば姦れるかも。
スカートの中に手を入れて下着を脱ごうと思った瞬間、頭痛がして急に自分が気持ち悪くなった。
打算で男と結婚して、頼んでもいないのに私を産んだ実の母親と同じ……
私は毒親と同じ人間……
自分の体に子宮があるのが急に気持ち悪くなってきた。
急に言葉が脳裏に浮かんできた。
『SEXなんて無理』
急激に嫌悪感が湧いてきた、気持ち悪くなって涙が出てきた。
私は演技を続けることが出来なくなって部屋に引きこもった。
夕食の時間になると、隼人が呼びに来た。
隼人は頭を下げた謝った。
「さっきは、すまなかった」「俺は子孫を残さないけど、真矢は自由にして欲しい」
コイツ、面倒な拗らせだな。
自分から求めないけど、察して姦らせて欲しいって遠回しに言ってるんだ。
私は子供を産んで幸せになる未来が想像できない。
人生は金さえあればなんとでもなる。
コイツと寝るのはやめよう……