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異世界ロケット作成中 44


 ミュリスをひとしきり褒めたゴランドさんがモニカを見つけて一悶着あったが、事情を説明して納得してもらった。


「まさか癒しの聖女がタカのパーティーメンバーだったとはの。お主、王都では相当に名の知られた存在だったんではないか?」


「まあそこそこね。そのせいで面倒事に巻き込まれそうになったからパーティーが解散してからちょっとして王都を出たんだよ」


「私に一言もなくね」


 メルリーゼが恨めしそうに言った。


 お前、王都から出る気がないって言ってたじゃん。


 それに俺が王都を出ようと決めた時、会いに行ったら仕事やら研究やらが立て込んでて忙しいからまた後日に来いって追い返されたし。


「それでもそんな大事な事だったらちゃんと伝えるべきだったんじゃないか?」


 だからちゃんと手紙をポストに入れたじゃん。


「忙しい時にポストの中なんて見ないんだよ。そもそも手紙に気づいたのも数カ月経ってからだし!」


 そりゃちゃんとポストの中身を確認しないお前が悪い。


「いーや、直接伝えなかったタカが悪い!」


「そうね、タカが悪いわね」


 モニカまでメルリーゼの肩を持ち出した。


 お前には直接伝えただろうが。


「『来週くらいにちょっと王都を出て他の街に行く』としか聞いてないんだから、何かの依頼で出かけるとしか思わなかったわよ!」


 別にいーだろ。パーティー解散したんだし。


 モニカは勇者パーティーに、メルリーゼは魔法研究省に就職決まってたし。


「「よくない!」」


「何でだよ」


「あのー、タカさん達は三人パーティーだったんですか?」


「違うよ。もう一人男がいた」


「アルジェも!」


「そうだな、アルジェも含めれば四人と一頭だな」


 冒険者証を掲げるアルジェのケモ耳をモフモフすると、満足げにうなずいた。


「どんな方だったんですか?」


「騎士だ。ノアガルトって奴でね、ミック達みたいな騎士っぽい冒険者じゃなくて本物の、国外の貴族家に仕える騎士家出身だ。護りが上手くてパーティーの守備者(タンク)役だった」


「お若い方だったんですか?」


「ああ、パーティーに加入したのが成人してすぐだったからな。モニカと同い年だ」


 モニカも成人してすぐに冒険者になって、ヒーラーを探していた俺達の話を受付で聞いて自分を売り込みに来た。


 俺達は落ち人と賢者の師弟パーティーって事で将来を有望視されてたから、成り上がりたいって野心マシマシだったモニカの自己PRはまあ凄かった。


 どう凄いか一言で表現するなら、『覚悟決まりすぎ』。


 俺も就活でさんざん自己PRは練習したし、前世でバイトの面接官もした事あったけど、モニカレベルは初めてだったわ……。


 とはいえモニカはかけだしの神官だったから、使える魔法はヒール(小)とターンアンデッド(弱)のみだったが。


 じゃあついでにタンクも探そうかとギルド職員に声をかけたら、ちょうど活きのよい騎士職の新人がパーティーを探していると聞いてそのまま面接。


 お古感満載の騎士装備をした兄ちゃんが礼儀正しく挨拶してきた。


 個人的な事情で成り上がるために隣国から来た、根性だけは人一倍あると言うもんだから模擬戦で試してみたら確かに耐久力だけは凄かった。


 その分攻撃はイマイチだったが。


 二人同時に競うように鍛え上げた結果、モニカもノアガルトも物凄い勢いで成長した。


 モニカなんて聖女にまでなったしな。


「何で解散したんじゃ?」

 

「ま〜色々理由はあったんだけどさ……」


 モニカが教会から勇者パーティーに入るよう指示を受け、ノアガルトが実家から急ぎで戻ってこいって連絡が入って、その他の面倒事が重なって。


「別に喧嘩別れってわけでもなかったし、潮時だったんだよ」


 元々モニカとノアガルトは自分達の目的を果たすためにパーティーに加入したわけで、それが果たされたから辞めるのは自然の流れだった。


 メルリーゼもパーティーを解散するかもって話を聞きつけた魔法研究省から勧誘を受けてOKをしたし。


 皆、独立したってわけだ。

 

「で、身軽になった俺は途中であちこち観光しながらこの街を目指したってわけ」


 元々異世界の色んな場所を見てみたいってのもあったし、食生活が日本寄りと噂の日本人落ち人が作った街にも興味があった。


 その結果、この街に永住しよっかなーってレベルに腰を落ち着けたわけだが。


 やはり食生活、大事。


 魚の刺し身や鳥の唐揚げなど日本食が簡単に食べられるって凄いんですよ。


「王都ならもっと稼げたのではないんかの?」


「金より生活のしやすさだよ。俺は王都のゴミゴミした人の多さもあまり好きじゃなかったし、治安も実はそこそこ悪かったし、冒険者間の競争意識も面倒だったし」

 

 前世でも実家のある都内よりじいちゃん家があった就職先の地方都市のが居心地良かったし。


 人が多いと治安も比例して悪くなるし、王都は警備体制も良くなかった。


 実はこの街は警備にかなり力を入れているから街の規模に比べて治安が国内で一、二を争うほど良い。やはり元日本人なら治安維持に力を割くよね。


 そして冒険者達の過剰な競争意識。


 これは王都の冒険者ギルドは田舎から一旗上げてやるって奴らが集まる場所なので、どうしても起こってしまうところはある。


 俺自身はそんな事全然なかったんだけど。


 が、パーティーが解散してソロになり、今まではパーティー単位で受けていた高難易度の依頼から、ワンランク難易度の低いソロ向けのものを受けるようになるとなぜか格下扱いをし始めたりライバル視する奴らが増えた。


 冒険者はなめられたら終わりって言葉もあるが、過度に面倒事を起こす気もなかった俺は適当にかわしていたんだが、それでもストレスは溜まる。


 あーもーメンドー!ってなった。


 で、王都を出ようってなったワケだ。


「この街は、俺みたいな奴にとっては住みやすいことこの上ないんだよ」


「なるほどの。自分で言うのもなんじゃがこの街は良いとこじゃ。お主が気に入るのも良くわかる」


「自慢の故郷です!」


 だよねーと祖父孫と意気投合。


 なんか難しい顔をしているモニカとやれやれ顔なメルリーゼ。


 なんだよ、何か不満なのかよ?


「つーかモニカは俺を一発殴るためにわざわざ探しにきたのか?」


「それだけじゃないわよ。聖皇様から依頼を受けたの」


 コレよ、とメルリーゼが読んでいた資料を渡される。


 なになに……『勇者とそのパトロン達の動向を探られたし。(まつ)ろわぬ神の影が落ちてるやもしれぬ』


 わー、何これめっちゃ物騒な予感。


「なあ、これって例の悪神って奴のことか?」


 モニカとメルリーゼがなにやら目配せをして、メルリーゼがうなずきながらため息をついた。


「そうだね。悪神、とただ呼ばれているけど、神名を呼んではならないって神託を下された神なのさ」


「初耳だな」


「ワシも知らんな」


「私もです」


「はるか昔の話なんだよ。それこそ神代の時代さ。神々が現世に肉体を持って降臨していた時代のね」


 この世界の神々はかつて地上に姿を現す事が普通だったらしい。


 だが、とある神が創世神に刃を向け、地上にて大規模な戦が勃発。


 その余波で人類は大きく数を減らし、世界は大きく後退した。


 創世神は反逆した神をその名を呼ぶことすら禁じた『祀ろわぬ神』として神界に封印。


 さらに神は地上への降臨を一切禁じるとし、神界と地上を繋ぐ道を閉じてしまった。


 神殿は『祀ろわぬ神』の復活を防ぐためにその存在を神殿のごく一部にだけ語り継ぎ、現世で『祀ろわぬ神』を影で信仰する悪しき者たちを監視をせよと創世神から命ぜられた。


 そして『祀ろわぬ神』の狂信者と裏で戦い続けてきたのだが、『祀ろわぬ神』が密かに地上に隠したと言われる『神影の欠片』によって神力を得た狂信者達に劣勢を強いられていた。


 そこで神々が考え出したのが異世界からの『勇者召喚』。


 地上の民に直接神力を与えるのは道が閉じられているため不可能。


 なので異世界から喚び出した者に神力を与えてから今までとは別の、一方通行の道を通して地上へと送り出す事にした。

 

 以来、召喚勇者は神々の代わりに『祀ろわぬ神』の狂信者と戦い続けてきた。


「その代表例がミュリスも大ファンの勇者キョーイチと真竜ヴェレーザのドラゴンナイト物語ってわけだ」


「そうだったんですね!」


「なるほどのう」


「へー………」


 うん、あれですね。勇者召喚は法の抜け穴的な感じで作られたんですね。


「うん?じゃあ勇者じゃない落ち人は何で召喚されたんだ?」


 勇者でない者は俺も含めてけっこうな数が召喚されているんですけど。


「それは召喚した神によって理由は異なるのだよ。本来ならそこを神々から知らされてから地上に降りてくるんだけどね」


「はいはい俺はぼっち召喚でしたよ。で?例えばどんな理由?」


「君も持ってるシャンプーとコンディショナーを作った落ち人だって、美の女神フェウラがこの世界での美容の進展のために喚び出したらしいよ。それにお供えされれば神々も使用出来るようになるらしいし」


 喚び出した理由個神的すぎん?


 そんな理由で異世界転移してたの俺ら。


「まあ、そもそも勇者召喚だってここ最近は不要だったのさ。勇者キョーイチが悪神、正確に言えば悪神の依代を倒して神力もろとも神界に送り返したからね」


 堕竜を依代として顕現した悪神を、勇者キョーイチとヴェレーザは神界へと送り返した。


 これは光の女神様がキョーイチの求めに応じて神界への道を一瞬開いた事により成功したらしい。

 

 悪神の神力までも神界へと送り返した事により神力を得られなくなった狂信者達は弱体化。


 狂信者達のほとんどが呪術師だったため、神殿は呪術を激しく規制してさらに追い込むことに成功。


 これにより世界は平和となり勇者の召喚をする必要性がなくなった。


 キョーイチ以後の落ち人はそのほとんどが技術者系で、この街を作った落ち人も製塩技術を持ち込んで街を発展させた。


 ちなみにアラクネのキクエさんのご先祖も繊維系の技術者だったらしい。


 俺は違うけど。


 単なるルート営業マンだったし。


 俺の中で、歴代の落ち人の中でも俺が一番のハズレだったから神様が誰も迎えに来なかった説あるんですけど?


 いやホントに。


 まあ異世界召喚された事自体は全然問題なかったんで、せめて俺が何すればいいのかの説明くらい欲しかったなー。

 

 


 







 

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