表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/42

異世界ロケット作成中 41



「まず神殿騎士だが、あいつは忠誠心がバカ高い真面目っ娘だ。ただ、真面目な忠誠を向ける相手は国と父親だ」


 融通が利かない頑固者で、父親に騎士である自分を認めて欲しくて命令に忠実に応えようとするファザコンちゃんだな。


 勇者に対しては父の命だからと己を殺してはいるが、本音を言えば苦手なタイプなんだろう。


 会談でも消極的に勇者を庇う事くらいはするだろうが、国と敵対する気かと責めれば積極的に勇者を諌める側にまわると思う。


「次に魔術師だが、知っての通り才能はある。だが性格は難あり。プライドが高く周りを見下しがちだ」

 

 最年少で宮廷魔道士になったのは親の七光りだけじゃなく、ちゃんと実力がともなっての事だ。


 ただ、周囲全てを自分より劣る馬鹿だと思っているフシがある。


 内心では勇者すらもこき下ろしているだろうが、そんな彼女がパーティーに加入した理由はメルリーゼへの対抗心だ。


 実は勇者パーティーに魔術師枠で一番最初に加入を打診されたのはメルリーゼだったが、アイツはあっさり断った。


 彼女は自分が二番目だった事にプライドを傷つけられたらしく大いに憤慨した。


 あんな陰キャエルフより自分の方が優秀だと証明するために加入を決めたらしい。


 そんな奴だから馬鹿にされる立場になるのを酷く嫌う。


 勇者パーティーは国賊に騙されたままの愚か者の集まりだと一部の界隈で噂されているとか言っちゃえば、自分まで馬鹿にされるのは耐えられないと勇者に反抗しだすんじゃないかな。


「で、聖女モニカだが……多分最初から勇者を諌める側にまわるはず」


「そうなの?勇者に対してパーティー内で一番献身的だと聞いたんだけど」


 献身的ねぇ……。聖女としてって感じなんだろうけど。


 でも多分聖皇様と神殿長あたりに釘さされてると思うんだよね。しかしそれを話せないしなぁ。


 うーん、何て説明しよう?


「あいつはパーティーの中で一番現実的だ。置かれた立場くらい理解しているはず。それに現金なヤツだから金か物でも釣れるぞ。ただ勘がするどいから余計なことは言うなよ。俺やメルリーゼの事は特にな。困ったらギルマスの名前を出せ」


 治癒の聖女の二つ名の通り治癒魔法は世界屈指だが、冒険者時代からその勘の良さでいくつもの修羅場をくぐり抜けてきたヤツだ。


「アイツが右こぶしを握ってそれを左手で覆うようにかぶせたら要注意だ。それは怒りを抑えてようとしてる合図だからな」


「やはり()()()()()()()()()()だから詳しいわね」


「まーね」


 モニカはメルリーゼの次に加入したパーティーメンバーだった。


 加入当初は聖女ではなかったし、治癒魔法も初歩クラスしか使えなかったが、アイツは俺達の中で一番実力が伸びた。


 前世の知識から考案した俺の特別メニューを乗り越えて、欠損すら一度に複数人回復させる事が出来るようになった。


 そしてメルリーゼとは違い神殿経由の勇者パーティー加入の話を受けた。


 それだけが理由ではないが、結果的に俺達のパーティーは解散した。


 俺としてはモニカと勇者は性格も能力も相性が悪いのでやめとけと説得しようとしたのだが、本人の意思は固かった。


「あいつは神様に対してはそれなりに信心深いが、神殿に対する忠誠心はかなり低い」


 加入話を受けたのも、神殿に対しての反骨心からだ。


 自分を軽んじて雑なあつかいをしてきた奴らに対し、いつか見返してやるっていつも言ってたからなー。


 まあそんなメンタルタフネスぶりが聖女にまで上り詰める事に成功したんだろうけど。


「聖女モニカはパーティーの運営と渉外担当も兼ねてるようね」


 他の面子が面子だからな。神殿騎士が会話で相手を怒らせないだけまだマシってレベル。


 だから勇者と魔術師が何を言おうとも会話を進める相手はモニカにしろよ。


 濁さない返答が欲しい場合は神殿騎士がいいかな。真面目だからはい、いいえの返答はちゃんとするからな。

 

「わかったわ。これだけ材料がそろえば有利に話を進められそうね」


 そもそも今回の件はゴランドさん完全にえん罪だからな。勇者以外は神殿の沙汰を疑っていない。


 だからどれだけ強気に出ても問題はないぞ。


 むしろこっちは神殿の意向に従ってるんだから文句があるなら神殿に行けって突っぱねればいいと思う。


「勇者が機嫌を損ねて何かしらの強硬手段に出る可能性は?」


「それはない。アイツは臆病者だからな」


「臆病者?ウザナンパナルシストじゃなくて?」


 それも間違ってないと思うけど。


「アイツは神様にもらいすぎたんだ」

 

 表面をどれだけ繕おうとも根っこを変えるのは難しい。


 チートを手に入れても、イケメンにしてもらっても、中身までアップデートできるわけじゃない。


 アイツは()()()()()んだよな。


「あれだけの能力を持っていても臆病な性格は治らないものなのね」


「前の世界からそうだったんだと思う」


 本人から細かく聞いたわけじゃないから推測だが。


 アイツは前世ではイケメンじゃなかったみたいだし、陰キャで思い込みが強いタイプだったんだと思う。陽キャに対して苦手意識があり、ひがみを拗らせていた感じ。


 異世界転生系を嗜んでいたヲタなのは間違いないんだけど。


 だからいざイケメンになって陽キャっぽくふるまってもわざとらしさが目立つんだよな。


 小説やマンガみたいな『ボク何かしちゃいました?』系転生者みたいな発言や行動をするのだが、いかんせん顔がドヤッてるからわざとらしさが鼻につく。


 勇者として仲間との絆を大切にしようと心がけてるみたいだが、そもそもパーティーメンバーは勇者を信頼してない紐つきの取り巻きにすぎないし、本人も仲間が大切と言いつつ仲間の忠告に全然耳を傾けないし。


 今までの人生で人付き合いの経験値が圧倒的に不足しているのが透けて見えちゃうんだよ。


 歩き方ひとつとってもそれは分かる。


 アイツはけっこう背が高いので歩幅がでかいから、普通に歩くだけで騎士以外のメンバーは早歩きになってしまう。


 一番背の低い魔術師が息を切らしてるところに、勇者が運動不足なんじゃない?って声をかけていたの見たし。


 いやいや、ちゃんと周り見ろよ。女の子と歩く時は歩幅を合わせろって。 


「異性とのお付き合いが希薄だったのでしょうね」


 さらにチヤホヤされて調子にのってはいるものの、どうやら本人的には調子にのりすぎないよう己を律しているつもりらしい。


 どこがじゃ!とは思う。


 ただ、あれだけの能力を持って神様が後ろ盾になってるんだから、調子に乗ってしまうのも理解はできるんだが。


 俺だって転生したての頃は調子のってたし。


 でも、何でかあいつは変にビビリなんだよな。


 全ステータス強化MAXなんだから、それこそA級の魔物相手くらいじゃないとカスリ傷一つつかない。


 なのにその辺のゴブリンにすら近接戦闘をしたがらない。


 剣で戦う時ですら相手の攻撃範囲外からスキルで攻撃していたくらいだ。


「ゴブリンにもビビるって相当じゃないかしら」


 一対一ならFクラス冒険者でも無傷で倒せる相手でしょ?と疑問顔のセシリアに、肩をすくめて返す。


「俺達の故郷は世界トップクラスの治安が良い国だって話しただろ。本気での殴る蹴るすらろくに体験しないんだよ。ゴブリンの殺気にも怯むような肝の小ささなんじゃないかな。あと、ゴブリンを殺った後の内臓ぶち撒け状態も気持ち悪くて見たくないとかもあるかな」


 いつまで経っても慣れようとしないし、慣れなくても何とかなってしまう実力だし。


「なるほど。総じて小物なのね」


「身も蓋もない言い方だがそうだ」


 アイツの本質をついた表現だと思う。


「だから勇者に対しては強めに言い返して構わないぞ。セシリアのキリッと顔は手練れの商人すら怯ませるからな、すぐに口をつぐむさ」


「人をそんな怖い顔みたいに言わないでよ」


「美人のマジ睨みは迫力があるって意味だ」


「美人……まぁ、よしとしましょう」


「お嬢様、そろそろ……」


 無言で控えていたじいさんが、セシリアに声をかけた。


 ここに着いてから結構時間が経っているからな。あまり焦らしすぎるのもよくないか。


「じゃあ最後に一つだけ。第三王女との連絡用の通信系魔道具の所持の有無と、持っていたなら第三王女と最近連絡を取ったかを確認してくれ」


「……第三王女が裏で糸を引いてると?」


「それが分からないから念のためってとこだ」


「わかったわ。タカ、ありがとう。これだけ分かれば話を有利に進められそうよ」


「領主様のお役に立てたのならば恐悦至極にございます」


「その胡散臭い演技はやめて。本気で泣くわよ」


「はいはい、頑張れよ」


 会談が終わるまで帰るなと厳命しながらセシリアはドアの外へ去っていき、代わりにメイドさん達が入ってきた。


 俺の相手をするよう言われたらしい。


 フッフッフ、ならばメイド遊びとしゃれこもうじゃないか。




「あがりー!」


 高らかに掲げたカードを叩きつけるように机の上に置くと、メイドさん達から『えー!』『うそ〜』と声が上がる。


「さーて、今度は何をしてもらおうかな〜?」


 グフフフ、メイドさん達からのブーイングが心地良いのぅ。


「じゃあ一番最後まで残った人にこのビキニメイド衣装を」


「何やってるのよ、アナタ達」


 怒りと呆れが混じった声がしたと思ったら、アイテムボックスから取り出した衣装を奪われた。


「な、なな、何なのこの衣装は?!」


「トランプの罰ゲーム」


「人の家のメイドに何させてるのよ!」


「えー、でもみんな楽しんでたぞ」


 メイドさん達も、『着物、可愛かったです』『ネコ耳と尻尾、ありですね』『サメぐるみ衣装ください』と良好な反応。


 ちなみに衣装を着た状態で膝枕してもらったりマッサージしてもらいました。


 俺が負けた時は化粧水やハンドクリーム、甘いお菓子などを進呈したのでイーブンだと思う。


「『イーブンだと思う』じゃないわよ!まったく、油断も隙もないのだから……」


 下がりなさいと言われ部屋を出ていくメイドさん達に手を振ると、全員が振り返してくれた。


「あなたは勇者みたいに積極的に女性に絡みに行くタイプじゃないのに、妙に女性からの受けがいいわよね……」


「あいつとは人としての積み重ねが違うんでね」


 前世込みだと女性経験もそれなりにありますから。


 特にここのメイドさんみたいな仕事としてこっちと付き合ってくれる人達は、最終ラインがハッキリしてるから逆にやりやすいし。お店のおねーさん達みたいな。


 勇者はイケメンだが女性に対する経験値は低いからな。がっつき過ぎて引かれるんだよ。


 もう少し相手との距離感を考えろよ。



「それで、どうだった?」


「何とか無事に終わったわ。勇者もゴランドに手出しは無用と約束させたし、納得できないなら神殿に行けとも伝えたわ」


「そりゃよかった」


「パーティーメンバー、特に聖女が中心になって説得に回ってくれたのが大きかったわね」


 俺からの情報を上手く活用してくれたらしい。


 三人全員から諭され、さすがに自分の意見を貫こうとは思わなかったようだ。


「まあ、勇者の立ち回りは嘘偽りなく国と神殿を敵に回す行いだったからでしょうね。聖女もウレザス神殿で何か言われたみたいだし」


 やっぱりなー。高位の神官様(聖皇様)がご滞在中だったからなー。タイミングいいんだか悪いんだか。


「ああ、それと聖女モニカは会談の最初から右こぶしを左手で覆っていたわね」


 そっかー、開始から不機嫌マックスでしたかー。ストレスやっばいんだろーなー。


「それと、例の魔道具は持ってるそうよ」


「そうか。連絡は?」


「この街に向かう直前まで連絡を取っていたけど、現在は応答がないそうよ」


「神殿の手が入ったかな?」


「そうではなさそうよ。聖女も行方を知らなかったし」


「王家が匿っているのかね」


「恐らくそうね。いくら呪術関係だからと神殿側が引き渡しを求めても、相手が王女となると男爵家のようにはいかないわよ」


「そうか……」


 今回の騒動、どうも裏で誰かが糸を引いているように思えてならない。


 勇者は根がビビリだから、あいつ単体だとここまで簡単に暴走したりはしないと思うんだよね。


 第三王女と直接会ったことはないけど、メルリーゼやギルマスの話だとそんな裏で手を引きそうなキャラに思えないし。


 第三王女の後ろにさらに誰かいるのか?


 でもそれだと王家全体が怪しくなっちゃうしな。


 黙って考え込んでいたら、セシリアがしょうがないわねと肩をすくめた。


「少し、王家周辺を探ってみるわ」


「いいのか?」


「今回の事で王家に不審感を持った貴族はそれなりにいるはずよ。その辺りに探りを入れてみるわ」


「助かるが、無理はしなくていいからな」


「軽く、と言ったでしょう。ただ、迂闊に外に出していい情報ではないわね」


「ああ、ならいつも通り宿屋に人を」


「今回、あなたは宿屋に居なかったから連絡が遅くなったでしょう?だからこれを持って行って」


 話を遮られて渡されたのは、木製の台座に魔石が埋め込まれ、その周囲に魔法陣が描き込まれた魔道具だった。


「おま、これ、通信の魔道具じゃないか!こんな高価なもん借りれないって」


 勇者が持っている物と違い会話こそできないが、台座の魔石が対となる魔石に流された魔力に反応して光る事により通信を可能にした魔道具だ。


 異世界ポケベルですね。俺はポケベルの実物を見たことないから知らんけど。


「全然使われていなくて金庫の奥でホコリをかぶっていたのよ。魔道具は使わなければ宝の持ち腐れでしょう?」


「いや、でも」


「いいから持って行きなさい」


 無理矢理押しつけられた魔道具を手に、来た時と同じように秘密の通路から馬車に押し込まれ、領主の館を後にしたのだった。


 


 





 



お読みいただきありがとうございます。もしよろしければブックマーク登録や評価☆をしていただけるとたいへん励みになります。




よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ