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異世界ロケット作成中 34


「タカ!やはりお主はこの船の事を知っとるんじゃな?!」


「ああ、知ってるよ。こいつは『ネル』。俺の世界に存在した、星空へと飛び立つ事を目的とした……ロケットだ」


「ろけっとじゃと?」


「船じゃないのかい?」


「正確に言うとこれだけじゃ船とは呼べないな。こいつは船を星空に運ぶためのものだ」


 ロケットと宇宙船は広義の意味では一緒だけど、宇宙船は宇宙空間を航行するための船を指し、ロケットは宇宙船を大気圏外へと運ぶ輸送装置だ。


「こんなサイズで船を星空へと運べるのかい?」


「無理だ。そもそもこいつは俺の世界で最初に開発された液体燃料ロケットだ。実験機でな、船を運ぶとかそれ以前に星空まで届かなかったものなんだよ」


「液体燃料ロケット?ロケットには種類があるのかい?」


「その通りだ」


 地球でのロケットの歴史は遡ると、諸説あるが十世紀頃の中国でロケット花火の原型が発明されたのが最初で、それは火薬を燃料としていた。


 火薬は固体なのでこちらは固体燃料ロケットと呼ばれている。


 液体燃料ロケットはそのまま燃料が液体のものを指し、第一次世界大戦後の1926年、アメリカ人のロバート・ゴダードが農場の空地で打ち上げに成功したのが最初だ。


 そのロケットの名前がネル。


 本や模型でしか見たことがなかったが、間違いない。


「ロケットにはな、固体燃料と液体燃料の二種類が使われていてな。それぞれ特徴があるんだが、まあそれは今はいいか。ゴランドさん。あんたがこいつを俺に見せた理由は」


「まさしく、燃料じゃい」


「やっぱりか」

 

 この世界には魔力がある。


 この世界の全ての住人に生まれつき備わっていて、大小や得手不得手はあれど使えない人は存在しない。


 なのでこの世界じゃ魔力以外のエネルギーが極端に発達していないんだよな。 


 油はあるけど調理用やグリスとかの工業用などでエネルギーとしてはみなされていない。


 化石燃料として炭は日常的に使用されるけど、原油とかは見向きもされないらしい。


 ロケット燃料はガソリンと液体酸素だから、この世界には存在していないんだよねぇ……。


「ゴランドさん、すまないけどこいつの燃料は俺にも調達出来ない」


 液体酸素は多分作る事が出来る。酸素は-183度で液体に変化するので、魔法で何とかなるはず。


 でもガソリンはなぁ~。


 原油はいくつか心当たりがあるけど、肝心のガソリンの精錬方法を知らんし。


「な、なんじゃと……」


 ショックのあまりガックリと両手ヒザをついてしまった。


 ゴランドさんには悪いけど今はその問題は後回しにして、肝心な事を聞かなきゃならない。


「それよりもゴランドさん。あんたどうやってこのロケットを作ったんだ?」


 この世界にロケットの設計図があるとは思えないんですけど?


「ヘルム様からの神託がきた時に頭の中にこいつの設計図を賜ったんじゃ。いつでも思い出せるしスミからスミまで閲覧可能での」


 添付ファイルありで自動インストール機能付きの神託かよ。何か怖ぇ……。


「そういえばゴランド氏に降った神託については詳しい内容までは聞いた事がなかったねぇ」


「む……そう言われるとそうじゃったな」


 俺達に座るよう指示したゴランドさんは、コホンと一拍を空けてから語り始めた。


「あの日、ワシは領主様からの依頼品を作り終えてな、満足の行く出来に晩酌した後普段より早めに寝たんじゃ。すると夢の中でワシは気づいたら雲の平原の上に立っておった」


「雲の平原は職人への神託で必ず訪れる場所みたいだね」


「そうなんかの?」


「私が知ってる限りじゃね」


 その後に職種によって場所が変わったりもするらしいが、記録上ではみんな最初は雲の平原スタートだそうだ。


 ちなみに転生者もこの世界に来る直前に雲の平原で神様に会うらしい。


 らしいってのは俺は会ってないか、その記憶がないからだ。


 俺がギルマスに会うまで異世界転生したと分からなかったのもそれが原因だ。


 普通?の落ち人は呼んだ神様が説明してくれるはずなんだが…。


「ヘルム様はその場で全てをお話しくださった。空の果てからこの世界を滅ぼさんと魔王が近づいてきておる、奴が近づけば近づくほどこの世界は滅びの道をたどる、とな」


「魔王の姿は見たのか?」


「見とらん。だが、巨大で恐ろしい存在だとはおっしゃられとったの」


「そうか…」


 頭の中に異世界のロケットの設計図をインストール出来るような存在が、魔王に関してはフワッとした情報だけしか伝えなかった理由はなんだ?


 別に視聴がリアタイ限定ってわけでもないんだし、せめて画像くらい見せてくれたらよかったんじゃないか?


「地上で迎え討つのはだめなのかい?」


「魔王はこの地に近づけば近づくほどその力を増すらしくての。そうなっては神々の助力を以ってしても世界の滅亡を防ぐのは難しいそうじゃ」


 じゃあ近づく前に神々が何とかしろよと思うのは俺が異世界人だからだろうか。


 不敬だと怒られそうだから口には出さないけど。


「まあ今は襲来がだいぶ先な魔王よりもこいつの燃料をどうにかしないとな」


「そもそもこれの燃料って何なんだい?」


「二種類ある。まずは空気を凍らせて作る特殊な液だ」


「は?」


「なぬ?」


 何言ってるんだ?って顔をされる。まあ無理もないわな。


「正確に言うと空気をすげー低音で冷やすと空気中にある酸素ってやつが液体状に変化するんだ。こいつは多分作れる」


「もう一種類は?」


「特殊な油だ。ガソリンって言ってな、石油っていう土の中から出る油を精製して作る」


「土の中から……あれか、たまにある池油の事かい?あの燃やすと臭くてよく煙が出る」


「それだな」


「作れないんかの?」


「精製方法を俺は知らないんだよ」


「蒸溜したりして不純物を取り除いたりとかかい?」


「そうだとは思うがそれだけではないだろうよ」


 なんせ完成品は無色透明で水と同じような液体状。沸点が三、四十度で揮発性が高い。


「あの真っ黒な泥油をそこまで精製するのにどんな技術が必要なのか、現時点ではちょっと想像がつかないね」


 出来ないとは言わない所をみるとプライドを刺激されたのだろうけど、それでもかなりの日数を費やさなければならないのは理解しているようだ。


「こいつではないが他のロケットで使われている液体水素って燃料なら多分作れそうな気はするんだが、確証はないな。それにネルで液体水素を使っていのかも分からん」


「ぬう……困ったのう」


「いっその事燃料を作るための設計図でも神託でもらえないか頼んでみるか?」

 

 リズに頼めば何とかなるかも知れない。


「いやそれがの、神託には続きがあっての。これを打ち上げる事に成功したら次の神託で新たなろけっとの設計図が来るそうなんじゃ」


 おっとぉ……。


 

 








 












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