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異世界ロケット作成中 31

ちょっと修正しました。


ギルマス

一切の口外を禁止するって言って聖都に帰られてな……。


一切の口外を禁止するって言ってぶっとい釘をさされてな……。





 冒険者ギルドのドアを開くと、中は人でいっぱいだった。


 冒険者だけでなく商人や料理人風の人々が、受付カウンターの前で興奮気味に受付嬢にあれこれ問いただしている。


「混んでんなー」


「シーサーペント効果だろうねぇ」


 そりゃあれだけ大量の馬車で運べばすぐに噂になるよな。


 シーサーペントはまったく入荷しないわけじゃないけど、次回の入荷がいつになるか保証出来る程の頻度ではないしお値段も高め。


 それが当分は困らない量が入荷したとなればこの騒ぎもしょうがない。


 料理人は普段中々扱えない食材がかなり安い値で仕入れ出来るチャンスだと殺到するし、商人は内陸部では倍の値がつくであろう高級品を普段の何分の一の仕入れ値で手に入れられる絶好の商機だと殺到する。


 ミャーナちゃんだけでなくヴィレッタさんもいるところをみると、受付嬢を時間帯関係なく全員出勤させてさばいているみたいだな。


「いや~忙しそうだなぁ」


「こっちに気づきもしないねぇ」


「邪魔するのも悪いし出直すか?」


「そうしようじゃないか」


 クルリと喧騒に背を向けて一歩踏み出した瞬間、俺とメルリーゼの肩に剣ダコが目立つ鍛えられた手が置かれた。


「この大騒ぎの仕掛人が何もせずに帰ろうなんて良い度胸じゃねーか」


 振り向くと、イイ笑顔のギルマスが立っていた。


 なんかやつれてね?


 表情に影さしてますやん。


「いや~立て込んでるみたいだからさぁ」


「大体の事情はオーパスの手紙とマカリスタ商会の代理人から聞いてるだろう?」


 だから俺らいらなくない?


「ハッハッハ。本人達の口から聞きたい事が山ほどあるんだよ。それにまさか俺達に全部押し付けて自分達はゆっくりしようなんて思ってないよなぁぁぁ?」


 額に怒りマークがついた笑顔のギルマスの肩越しに、ミャーナちゃんやヴィレッタさんら受付嬢全員が笑顔でこちらを見ていた。


 こっわ!笑顔こっわ! 


「まっさか~!そんな訳ないじゃないですか!」


 あっさり白旗を上げる。


 俺がこの街で生きていくには彼女達を敵にまわしてはいけないのだ。


「だよなぁそうだよなぁ当たり前だよなぁ!ほれさっさと上に行くぞ!」


 こっそり逃げ出そうとしていたメルリーゼのフードをひっつかんでギルマスの後に続いた。




「それで……色々やらかしたみたいだな」


「別に俺達が原因ってわけじゃないですけど」


「私達は巻き込まれただけだよ」


 席に着くなりタメ息をつくギルマスに軽く抗議をする。文句はオーパスに言っていただきたい。


「B級三桁討伐にS級二体討伐。ずいぶん派手な戦果だな。オーパスからも話はきてるけどよ、報告書に気を遣わなきゃならんこっちの身になれよ」


「最初の話じゃB級三十体にS級一体だったんですよ」


「あんな数とやると分かっていたらもっときちんと準備したさ」


 そもそも陸に上げる前にもっと間引くべきだったと二人して反省。でもまさかS級が二体もいるとか想定外過ぎたんですよ……。


「オーパスもいたとはいえ、三人でよくS級を二体も殺れたな」


 正確には神獣も一柱いたけどそれは今度本狼を連れてきて説明しよう。


「運も多少味方しましたよ」


「タカはちょっとヤバかったけどね。神託の聖女様々さ」


 からかうようにニンマリ笑うメルリーゼを無視してクイーンとキングとの戦闘の詳細をギルマスに説明すると、両腕を組んでまたもや大きなため息をつかれた。


「反属性ってのもビックリだが、タカの奥の手を食らってもほとんどダメージが通らなかったのもビックリだな」


「タフさはロックドラゴン以上でしたね」


「あいつより硬いって相当だぞ?」

 

「相当だったんですよ」


「クイーンは単体の強さは情報通りだったね。ただ統率スキルはもう二ランク上だと思うよ」


「三桁引き連れてきたって時点でそうだろうな」


「狼や猿とかの群れをなす魔物以上で巣を作る魔蟲以下くらいですかね」


「それくらいだな。メルリーゼ、キングの発生条件に心当たりはあるか?」


「バカ勇者」


「いや、アイツも確かに理由の一つだとは思うが」


「他は思い当たらないね」


「そうか……」


 なんか隠してるだろ?という視線を受け流しながら逆に質問をする。


「それで、例のボンボンの件はどうなりましたか?」


「それ先に聞くか?」


「気になっているものでして。事と場合によっちゃまたすぐに出かけた方が良いかもしれませんし」


「こっちとしてはそっちを先に知っておいた方が色々しゃべりやすそうなのさ」


「はぁ~。分かったよ」


 しょうがないかとギルマスはふたたびため息をついた。


聖女様(妹さん)から連中の捕縛までの話しは聞いているだろうからその辺は割愛するが、あの高位の神官(聖皇)サマは自分達が声明を出すまでは一切の口外を禁止するって言ってぶっとい釘をさされてな……」


 ギルマス、表情に影が増えた。


 どうやら正体を聞かされたらしい。


 王族と同レベルの偉い人がお忍びで捕縛クエストとか、胃が痛くなるどころじゃなかったはずだ。


 もし万が一聖皇サマが命を落としたりしようものなら事情を知っていた責任者として罪に問われていたに違いない。最悪処刑だってあり得ただろう。


 正体知ってから無事に帰ってくるまで生きた心地しなかったろうな……。


「で、先日聖都から各地の神殿に緊急の御触れが出された。内容はこうだ」


『エモニ男爵家は神敵たる呪術師を雇い平和の世の治安を乱した。


 よってかの家も神敵とみなし、それを主導した男爵第一夫人と長男、次男、三男を捕縛、死刑とした。


 男爵と第二夫人、長女は関与してはいなかったが身内の犯行を防げなかった罰として爵位を剥奪し平民へ降下、御家取り潰しとするようファーレン王国に要請した。


 残りの関与した者についてはおって沙汰を出す』


「だそうだ」


「こりゃ……大分ヤバくないですか?」


「ああ、ヤバい。まさか聖都側が直接裁くなんて思ってもみなかった」


 この世界は前の世界より神様との距離が近い。


 この世界で産まれた人々は誰一人として神様の存在を疑っていない。


 神託や加護など神の力がきちんと認知できる形で存在しているのが大きな理由だろう。


 だからこの世界の権力構造は神々の代理たる聖皇が各国首脳と同列の存在として位置付けられている。


 同列、と言っても基本は相互不可侵。国内の政治に口を出す事はしない。


 もちろん国のトップが悪逆非道の限りを尽くし、神々を敵に回すような事がある場合は別だが。


 この敵に回す、というのがまず起こらない。


 何故ならどの国も自国の運営に加護持ちや神託の力を借りているので、神々を怒らせて加護の消失を招いたり神託を受ける事が出来なくなってしまうと国そのものが詰む。


 だから自国内での神敵行為にはどの国も眼を光らせているし、発覚した場合は即神殿に通報して事態の収集を図る。


 神殿は通報した国のルールを尊重して基本静観。求められた時のみ人員を派遣し、協力して神敵を滅する。


 それが今回は初手から国をすっ飛ばして冒険者ギルドと協力して神敵を拿捕、死刑に処している。


 それは神殿が国そのものを疑っているからに他ならない。


「王都はしばらく荒れそうだねぇ。いや、正確に言うなら王侯貴族と王都の神殿に各ギルドが、かな」


 楽しそうにニンマリと笑うメルリーゼ。


 笑ってる場合かよと頭を抱えるギルマス。


 二人は置かれてる立場がまったく違うからなぁ。 


 メルリーゼはエルフでこの国出身じゃないから他人事として高みの見物。


 ギルマスはこの国の貴族階層出身で、自身も冒険者ギルドのマスターなんて要職についているから当事者の一人にならざるを得ない。


 聖都はおそらく王都の神殿にもメスを入れるはずだ。


 あそこの評判は酷いもんだったし、実際金欲におぼれた生臭神官ばっかりだったからなぁ。


 呪術師を雇う事をわざと見逃したとかそこまで腐っているとは思いたくないけど、事件に関与した貴族や王族と懇意にしていたとかだったら普通にあり得るだろうしなー。


「何考えてるか当ててやるよタカ。王都の神殿はお触れが出る直前に『神々の尖兵』によって内部監査が入ってな、上から下まで大騒動だ。現首脳陣はもちろん下っぱまで良くてど田舎へ異動か、悪くて神職剥奪のうえ奴隷行きだ」


「『神々の尖兵』ってなんですか?」


「聖皇直属の特殊情報部隊だ。神敵を殲滅する事を目的とした神殿の暗部だな」


 やっぱりあったのか、イスカ○オテみたいなの。


「ロドルフ神殿長の古巣だね」


「何となくそんな気はしてた」


 聖皇様と一緒にカチコミしたと聞いてからそんな感じなんだろーなーとは思っていたけども。


 てゆーか何でお前が知ってるんだよメルリーゼ。


「そうみたいだな。次期王都神殿の神殿長にも名が上がっているらしい」


 本人は拒否ってるみたいだがなと、分かるわーとばかりにうなずく。


 こりゃギルマスにも何か話が来たな?


「もしかして王都の冒険者ギルド支部にも監査は入ったんですか?」


「入った。冒険者ギルド本部と神殿の両方からな」


「それで王都支部に異動してギルマスやれって打診が?」


「その通りだよ。もちろん断ったがな」


「なんで?」


「あんな面倒な支部に行ったら家に帰れなくなるから嫌だ」


「お子さんもまだ小さいですもんね」


「ジェシカも初めての子供だから大変だろうしねぇ。環境は変えたくないだろうさ」


 ギルマスの嫁さんのジェシカはギルマスが冒険者になって最初にパーティーを組んだ神官で、巨乳で美人でおっとりさんと男性からも女性からもうらやまスペックな人だ。


 以前は昼時にギルマスにお弁当の差し入れなんかをしにギルドに顔を出したりもしていたのだが、子供が生まれてからは子育てに専念していてここ最近見ていない。


 ちなみに俺の元パーティーの女性陣とも懇意にしていて、メルリーゼもこっちに来てからたまにランチをしたりしていたようだ。


「そうなんだよ。ジェシカの負担が増えるのは嫌だし俺だってもっと子供と一緒にいたいんだよ。王都支部なんて午前様どころか泊まりだぞきっと」


 現首脳陣がまるごと入れ替わる事になったら現場の混乱は凄まじい事になりそうだから、ギルマスの言う通り後任はそれはもう忙しいだろう。


 子煩悩でラブラブ夫婦のギルマスにとって二重の意味でストレス溜まりそうだ。


「子供で思い出したけど、これギルマスにお土産」


「お、悪いな……天狼の毛か!こんなにもらっていいのか?」


「ええ。お子さんの髪紐にどうぞ」


「恩に着るぜ。しかし前から疑問だったんだけどよ、お前達は何でこんなに沢山採取出来るんだ?」


「秘密……と、言いたいとこだけど近い内に教えますよ」


「聞かない方が良いって勘は喚いているが、聞かなければならないとギルマスとしての職責が囁いてるな……」


「悩み多き年頃ですね」


「茶化すな。誰のせいだと思ってるんだ。それで、他に聞きたい事はあるか?」


「馬鹿勇者と第三王女様はどうしてるんだい?」


 メルリーゼの質問にギルマスは頭痛と腹痛が同時にきたかのような表情を浮かべた。


「第三王女様は王宮内からの情報が入ってこないから分からんが勇者は行方が知れん」


「行方が知れないって……」


「シーサーペント討伐後に一度王都支部に戻って報告した後からどこに行ったのか分からないんだよ」


「何か依頼を受けたりは?」


「してないな」


「まさか、こっちに向かって来てるなんて事は……」


 元々捕縛されたアホ鍛治師に会いに来るとかって話だったからな……。


「その可能性もあるが、あいつが通信系の魔道具を持ってないとは考えにくい。王家……第三王女様から貸与されてるハズだ。自分の立場くらい分かってるだろ」


「そうかねぇ……」


「あいつ無駄にポジティブですからね……。下手したらお友達は無実だとか言ってありもしない証拠を探しにくるかもしれないですよ?」


「………………あり得るな」


 三人とも頭痛と腹痛と寒気がきたような表情を浮かべ、同時にタメ息をついた。


「とにかくだ、奴が来たところで神殿の判決は覆らない。主犯の一人として処刑は決定だろうな。下手すりゃもう刑が執行されているだろうし」


「それを伝えて納得してくれれば良いけどねぇ」


「しない確率の方が高いと思うけどな」


 何せあいつは『勇者』だからな。





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