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異世界ロケット作成中 28


「うわ~」


「まあ……」


「おお~」


 ミュリス、リズ、俺は思わず驚きの声を上げた。


「いざこうしてみるとスゲー数だな」


 港に作られた簡易の解体場では山盛りにされたシーサーペントが三階建ての建物くらいの高さまで積まれていた。


 その全部がハラワタを抜いた状態で、解体場を囲むように立てられた八本の白い柱から発せらている冷気によって防腐処置がとられているようだ。


「あの柱、お前が作ったのか?」


「その通り。あれはクイーンの背骨を使った簡易の冷却魔道具なのだよ」


 モノクルをくいっとやってニンマリ笑うドヤ顔賢者。


 柱からは常に冷気が放出されており、柱の下で一人づつ常駐して魔力を注ぎ込んでいるようだ。


「簡易だから魔力は外部から注入し続けないとすぐに空になって停まってしまうのが難点だが、魔力を注入するだけなら属性関係なく誰でも出来るからね。街中総動員さ」


 となるとあの解体場の後ろで談笑している人達は順番待ちなんだろう。


 そもそも一般人の魔力量は平均的な魔法使いの十分の一以下。にも関わらずあれほどの大きさでかなりの勢いで冷気を発している魔道具をそれなりに長時間稼働させられているのは、この賢者が物凄いエネルギー効率で設計したからに他ならない。


 例えるなら平均的な魔道具がめちゃくちゃ燃費の悪い旧い外国車だとしたらメルリーゼは某国産メーカーの名前が途中で変わったハイブリッド車かな。


 褒めてもらって構わないぞ?と言わんばかりのドヤ顔にイラッとするが、俺が寝ている間にこんなもんさらっと作ったとかガチで凄いので素直に褒めておくことにする。


「流石師匠だな」


「そうだろうそうだろう!」


「キングとクイーンはもう解体が終わったのか?」


「いいや。でかいし貴重だから最初に大まかにさばいた後に細かな解体を倉庫でやっているよ。オーパスもそっちにいるハズ」


 港にある一番大きな倉庫に移動すると、オーパスが商人の格好をした筋骨隆々ないかついおっさんとあれこれ話していた。


 話し終えるまで待とうかとも思ったが、どうも中々終わらない感じだったので声をかけると、オーパスはおっさんに一声かけて一緒にこちらにやってきた。


「目が覚めたか。調子はどうだタカ」


「もうなんともねーよ。聖女様のおかげだな」


「私は神託にしたがったまででございます。全てはタカ様の日頃の行いの賜物かと」


 オーパスには聖女スマイル、俺には素の笑顔と器用に使い分けてんなリズ。


「それでオーパス、ちょっと相談があるんだがいいか?」


「構わないぞ。だがその前にこちらの人を紹介させてくれ。このガタイの良い商人は今回の依頼者のホッブ・マカリスタ氏だ」


「ホッブ・マカリスタだ。マカリスタ商会の商会長をやっている。今回の依頼達成に多大な貢献をしてくれたというパーティーに大いなる感謝を」


 深々と頭を下げるマカリスタ商会長。


 見た目のいかつさに反して礼儀正しい人物のようだ。


「特にリーダーのタカ殿。君には感謝してもしきれない」


 差し出された手を握ると、ギュッと握られて上下にブンブン振られた。


 力強っ!手が痛ぇよ!


 顔には出さずにそっと身体強化を発動して笑顔のままやり過ごす。 


 でも何でここまで感謝されるんだ?


「私の息子の一人が冒険者でね。先の戦いにも参加していたのだがキングの強襲で負傷して動けなくなって、あわやという所を君に助けてもらったのだよ」


「そうだったのか。息子さんの怪我の具合は?」


「聖女様に治療していただいたから痕も残っていない。聖女様にも心から感謝申し上げる」


「ご子息が助かったのもすべては運命の女神ロアンナ様のご神託のおかげかと」


 神鳥ネーギュルのお守りを握りながら祈りを捧げるリズ。それにならうかのようにマカリスタ氏もお祈りを捧げ始めた。

 

 ミュリスまで祈ってるし。何か周囲の人達もお祈りを始めたぞ。


「皆様に運命の女神ロアンナ様のご加護がありますように」


 お、リズの身体が柔らかい光で包まれた。


 これぞ聖女の固有スキル『聖女の導き』。


 聖女認定されるには神々に祈りが通じた証とされるこの聖なる光が出る事が必須らしい。


 祈っていた人達が感嘆の声をあげながら全員ひざまずいた。


「神々は常に我々を見守っていらっしゃいます。この度の試練を乗り越えられたのもその証拠。この事を忘れずに日々をお過ごしくださいませ」


 深々と頭を下げるリズに感謝の声と拍手喝采が送られる。


 こーゆー場面見るとちゃんと聖女してんだなぁってお兄ちゃん安心するわ。


 ミュリス、つられて泣きそうに?


 いやいや、恥ずかしい事なんかじゃないぞ。


 それだけミュリスの心が綺麗だと言う事さ。


 駄目な大人代表のメルリーゼなんか白けた顔して首振ってるし。


 ああはならないでくれよ。


 日々の酒量を控えめにして、健康的な生活を送るんだ。


 昼夜逆転アル中魔女生活なんて絶対駄目だからな。


 アルジェ、腹減ったからってシーサーペントをつまみ食いしようとするな。


 このイカの干物でも食べてなさい。


「とりあえず冒険者ギルドに行くぞ」


 事の成り行きを黙って見ていたオーパスが近寄ってきて耳元でささやいた。


 俺は小さくうなずいて、未だ街の人に囲まれたままのリズに目線を向ける。


 リズはニッコリ笑いながら小さくうなずいた。


 どうやら俺の目立ちたくない発言に配慮して、この場では自分に注目を集めたようだ。


 こりゃウレザスに戻ったら礼をしないとな。


 ミックに後は頼むと護衛をお願いして、二人を置いてオーパスと一緒に冒険者ギルドへと向かった。


 

「それで、相談ってのは?」


 ギルマス室でゲン○ウポーズのオーパスに宿で決めた分配を説明したら、呆れたって顔で盛大にため息をつかれた。


「お前なぁ……」


「今回の依頼は最初っから想定外の事が多すぎた。内容が内容だけに報告書だって目立つだろ。地方の支部の報告書は冒険者ギルド本部に行く前に統括の王都支部を経由するから王都のバカどもに騒ぎ出されるとお互い面倒なはずだ」


「言わんとする事は分かるがよ、時間の問題じゃねぇか?」


 こいつが一枚噛んでる時点でな、といつの間にかワインを開けているアル中魔女をアゴで示す。


 おっしゃる通りではあるんだけどね。


 この引きこもり堕エルフを外に連れ出せる奴は限られてるからな。


「だとしても、だ。時間をかせげるだけかせぎたい」


「何か訳アリか?」


「ああ。何でミックがリズを護衛してきたか理由は聞いたか?」


「ウレザスでどっかの貴族のバカ息子が呪術が絡んだ犯罪を起こして、その捕縛のために聖都から大物聖職者が派遣されてその護衛を『鉄のライアン』が受けた。で、捕縛後に下った神託によってストランツァーメへ来る事になった聖女様をミックが護衛してきたって聞いたぜ」


「その通りだけど実際はもう少し面倒なんだ。そのバカ貴族の後ろに勇者がいるらしい。それに第三王女様も関係してるっぽい」


「待て待て!それだと勇者と第三王女様が呪術師と関係があるって事になるぞ?」


「その通りだ」


「即答かよ!めちゃくちゃ面倒事じゃねぇか……」


 聞かなきゃよかったと愚痴るが、遅かれ早かれじゃないかな。


「神狼の抜け毛を採取しに行ったのもそろそろ依頼の時期だったってのもあるが、俺とメルリーゼの事を知っている『鉄のライアン』と会うのを避けるために一旦ウレザスを離れたかったからってのもあったんだよ」


「そこに俺が強制指名依頼をかけたから面倒事に巻き込まれる可能性が高くなったって事か?」


 腕組みをして渋面のオーパスに気にすんなとフォローする。


「オーパス、先に言っとくが今回の依頼を受けた事自体は何とも思っちゃいない。俺達がいなかったらストランツァーメはかなりヤバイ事になってたからな。報酬もそれに見合った額だ。不満はない」


「そう言ってもらえると助かるがよ」


 結局何が言いたいんだとの疑問顔に思わず苦笑いになる。


「面倒事に巻き込まれるのは確定していたって事だよ」


「何だと?」


「ただ今すぐ関わるのはタイミングが悪いってだけだ。こっちにも事情があってな、ひとまずそちらに集中したいから勇者関係はなるべく後回しにしたいんだよ」


「お前……いったい何に首突っ込んだんだ?お前があのクソ勇者と面倒起こす覚悟があるなんて相当だろうが」


 俺と奴の因縁を知っているので、訝しげな表情のオーパスに苦笑いを返す。


「いずれ分かるよ。その時はアンタの手を借りる事になるかもな」

 

「そりゃ、今回の借りもあるから俺に出来る事なら手を貸すけどよ」


「言質取ったぞ」


「……お前、本当に何があったんだよ」


 俺の発言にただならぬモノを感じたのか、自分は間違った返答をしたのかとメルリーゼに助けを求めるように視線を向けたオーパスだが、アル中賢者は気づいていないフリをしてワインをジョッキでグビグビ飲んでいた。


 ワインの飲み方じゃねーし。

 

 こらミュリス、勧められたからってお前まで飲むんじゃない。


 アルジェ、イカのお代わりはないからこの干し魚食べてなさい。


「まあいい。分配に関しちゃ俺がどうこう言える立場じゃねぇからそれでかまわねぇよ。報告書も出来るだけ先延ばししてやる」


「恩に着るよ」


「そのかわりそっちの事情とやらが一段落したらすぐに連絡しろよ。こっちはこっちでこれから忙しくなるからかな」


 オーパスはギルドマスターだからスケジュールを合わせるのも一苦労なんだろう。


 特に高ランク組の怪我人が復帰するまではやりくりに苦労しそうだし……ってそうか。


「リズに高ランク組の治療をお願いすりゃ良いのか」


「そうしてもらえるならありがたいが……やってくれるのか?」


 頼みたいとは思っていたらしい。


「あの拗ら聖女様ならタカが頼めば何だってやってくれるさ」


「拗ら聖女言うなし。あと何でもではないぞ」


「拗らせてるのは事実だろ?」


「事実だけど」


 否定したいけど。出来ないけど。


「お前の事を聖女様が兄さん呼びしてたがどういう関係なんだ?」


「そのまんまだよ。妹みたいなもんだ。あいつがまだアルジェくらい小さかった時に世話してやってな」


 名前を呼ばれて近寄ってきたアルジェの頭を撫でてやると、そのまま背中に登ってきたので好きにさせる。


「世話、ねぇ……。おいメルリーゼ」 


「私が知らない間だよ」


 二人して呆れるわって感じで首を振りやがった。解せぬ。


 アルジェ、痛いから肩を甘噛みすんなし。


「まあ治療してもらえるなら逆にお前と聖女様の関係を感謝しないとな」


 逆にって何やねん。


「それじゃあ聖女様と合流して治療院行くか」


 ワインの空き瓶をそのままに、ん~っと伸びをしながら歩きだしたメルリーゼの後について倉庫へと戻ると、リズはすでに治療院があるこの街の神殿へと向かったらしい。


 そのまま治療院へと行くとすでにリズが治療を行ってた。


「癒しの女神オレアーナよ、この者達へそのお力をお恵み下さい。『エリア・ハイヒール(小範囲大治癒)』」


 上級範囲回復魔法で病室内全体を治癒するリズ。


 部屋中でもれていたうめき声が収まっていき、やがて驚きと歓喜の声へと変わった。


 それを見学していた現地の神官やシスターも、おお!と驚きの声をあげる。


 上級回復魔法が使える神官はこの国でも両手で数えられるくらいしかおらず、さらに上級範囲回復魔法だと片手で数えられるくらいしかいない。


 つまり神官達にとってリズは憧れの存在で、手の届かない存在なのだ。


 前世の一般人から見たハリウッド女優とか世界クラスのプロスポーツ選手みたいな感じかな。


「どうやったら聖女様みたいになれますか?」


 凄いキラキラした目でリズを見ていた神官見習いっぽい小さい女の子の質問に、リズは聖女スマイルで答えた。


「大切な人の役に立ちたいと、強く神様に願いながら真面目に修行に取り組めばなれますよ」


 私がそうでしたからと言いながら一瞬だけこちらに素の笑顔を向けると、時間差で自分達に何が起きたのか理解した冒険者達のお礼の嵐に聖女スマイルで答えている。


「こうして見るとまともな聖女に見えるねぇ」


「やっぱり凄いです。憧れちゃいます!」


「タカ、干し肉ちょーだい」


 三者三様のリアクションなうちの女性陣に微妙な表情のオーパスだったが、気を取り直してリズにお礼をしに行った。


「聖女様、冒険者ギルドを代表してお礼を申し上げます。彼らを治療していただきありがとうございました」 


 オーパスの礼儀正しい言葉遣いって何か違和感あるよなぁ。ギルマスになれるくらいだから当然礼儀作法もある程度持ち合わせてるんだろうけど見た目がアレだから余計にそう見えるな。


 おっと、余計な事考えてんなとオーパスに睨まれてしまった。


「これも神官としての務めですのでお気になさらず」


 聖女スマイルでオーパスにさらりと返すとそそくさとこちらに近寄ってきた。


「タカ様、私はこれから神殿に戻ろうかと思います。神殿長様達をお待たせしておりますので」


 達って事は聖皇様もまだウレザスに滞在してんだな。ミックがこっちにいるから当然か。そりゃ待たせるのは失礼だ。


 そもそもお忍びで来てるから早く帰らないとバレるかもしれないし。


「我々はまだすべき事がありますのでロドルフ神殿長によろしくお伝え下さい。帰還したおりに改めて聖女様にお礼をしたいと思います」


 一緒に帰るとライアン達と鉢合わせしちまうからな。時間差で帰ろう。


 リズはお礼の部分で怪しく目を光らせたけど、何事もなかったかのように聖女スマイルを浮かべた。


 何をお願いされるかちょっと不安になるな……。


「わかりました。それでは一足先にウレザスにてお待ちしております。あなた様に勇気と冒険の女神リリエンツァ様のご加護がありますように」


 最後に軽くお祈りをすると、ストランツァーメの神殿の人達に別れの挨拶をしてリズはミックとともにウレザスへと帰っていった。


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