異世界ロケット作成中 25
飛び蹴りがヒットする直前にインパルス・アクセラレーションを解除し、同時に『身体強化・強』を発動する。
ドゴス!
「ギャーーース!」
通常のシーサーペントより一回り大きな身体が完全に宙を舞い、百メートルほどぶっ飛んで砂煙を巻き上げながら地面に激突した。
これで他の冒険者達から距離をとる事が出来たな。
ただ、俺も無傷ってわけにはいかなかったが。
「痛てて!」
周りが認識出来ないスピードで突っ込んだため攻撃した俺自身にもダメージが入った。
多分蹴り足の骨にヒビが入ったな。
身体強化・強を使用したにも関わらずダメージを防ぐことは出来なかったのは、むこうが予想以上に固くて反動が強すぎたからだ。
とっておきの中級ポーションを取り出して即座に回復し、すぐさま砂煙のむこうを警戒する。
「グギャアァァー!!!」
むこうも怒りの雄叫びを上げながら即座に頭を上げてきやがった。
しかし、あの威力でも大してダメージなさげとかシーサーペントクイーン頑丈すぎない?
ほんとにA級上位からS級下位か?
S級中位のロックドラゴンより固いぞ。
「グギュルルルル」
それでも牽制にはなったのかこちらを警戒して中々間合いを詰めてこないので、にらみ合いのような状態になる。
「ん?」
あれ?何かむこうのクイーンよりでかいし顔つきも違わなくね?
角の数も多いし凶悪そうな尖り方してるし。
こいつ本当にクイーンか?
「タカさん!」
他の冒険者とともに後方にまわっていたミュリスがこちらに近寄ってきた。
「無事だったか」
「タカさんのおかげです」
「他の奴らは?」
「何人かが最初の攻撃で負傷してしまいましたけどまだ死人は出ていません」
「そうか。あいつは生半可な攻撃じゃ傷一つ負わせられないみたいだ。今からとっておきの魔道具を使って時間稼ぎをするから負傷者達を撤退させてくれ」
「わかりました!」
アイテムボックスから目的の物を取り出してクイーン?に向かって走り出す。
インパルス・アクセラレーションは一度使用すると一週間は使えないので、身体強化のみで接近を試みる。
「ギュアアアー!」
怒り混じりの雄叫びを上げこちらにむかって体当たりをかましてきたクイーン?をギリギリで避けて、そのでかい身体に魔道具を投げつけた。
「『展開』」
黒い野球ボールくらいのサイズだった魔道具が一瞬で光のロープに変化し、さらに規則的に枝分かれしてその先で結び付き大きな網へと変化した。
この魔道具は『ラアヌの網』と言って、海神ラアヌが所持したとされる網をモチーフにしてメルリーゼが作った物だ。
リヴァイアサンの退治を引き受けた時にメルリーゼが既存の魔法投網を魔改造して作ったんだが、S級下位と評される海の怪物を絡めとってしばらくの間行動不能にした、まさしく賢者ムーヴ出しまくりな逸品の一つだ。
「グギュルルルル!」
クイーン?はラアヌの網に絡めとられたその巨体をローリングさせてねじり切ろうとするが、逆により身体に絡まって締め上げられているようだ。
なんで細長い奴って身体を回転させたがるんだろーな。
「『ライトニング』」
さらに弱らせようと追撃の雷魔法を撃ち込むが。
「うげぇ、弾きやがった……」
こいつもアイアンホーンドフロッグと一緒で身体に絶縁体みたいな構造があるっぽい。
おそらく鱗だろう。体内に入らず鱗の表面を流れて分散させたように見えたし。
「それならこいつはどうだ、『ファイアーアロー』」
火の中級魔法のファイアーアローを放つ。アローと名がついてるけどその大きさはバリスタかよってくらいでかい。
「うげぇ、あんまり効いてないな」
多少焦げたかなってくらいでそこまでダメージが入ったようには見えない。
「こういったでかい奴は体内から破壊するのがセオリーだが」
どうすっかなー。
口の中にライトニングを撃ったところで焼け石に水だろーしな。
せめて戦神の裁きレベルの威力じゃないと明確なダメージにはならなさそう。
「タカさん、避難が完了しました」
「ご苦労さん」
ミュリスの報告にひとまずほっとするも、向こうの様子を見るにこっちへの応援はもう少し時間がかかりそうだ。
「ギシャー!!!」
「マジかよ?!」
こっちのクイーン?は一際大きな鳴き声を上げると身体をさらにローリングさせ、なんと網の一部を引きちぎってしまった。
「おいおいリヴァイアサンだって無理だったのに」
「ど、どうしましょう?」
「とりあえずちょっと距離をとるぞ」
クイーン?が暴れても被害がない場所まで下がり様子をうかがうが、あのままじゃラアヌの網もあまりもちそうにない。
「ヤバいな。メルリーゼ達がこっちに来るまでもつかな」
「光の網の破れが徐々に広がってますね……」
「あいつの鱗は多分ドラゴン以上の固さだ。アイアンホーンドフロッグみたいに中から攻撃を加えたいが、あの状態じゃそれも難しいな」
「あの時使った汁ではダメなんですか?」
「あの汁はフロッグ系にしか効果がないんだよね」
「雷魔法は?」
「弾かれた」
「他の魔法ではダメなんですか?」
「火の中級魔法でもさして効果はなかったな」
「火の魔法を口の中に向けて攻撃してみては?」
「俺達が熱々のスープで口の中を火傷するくらいしか効果なさそうだな」
「難しいですね……あ、ストランツァーメに戻る前にお話されていた砂を使った魔法はどうでしょうか?」
「あー、あれか」
確かにここには大量の砂があるから他の場所よりは作りやすいし、威力はライトニングにやや劣るが数を揃えて腹ん中ででも爆発させてやれば多少はダメージも入るかもしれないな。
「よし、それでいくか。ミュリス、手伝ってくれ」
「はい!」
ミュリスは帰ってくる途中にずっと土魔法を練習してて、ウォール系は習得出来ていたからなんとかなるだろう。
「いいか、まずサンドウォールでこんな風に箱を作る」
手のひらサイズを作って見せて、見本として手渡す。
「その中に砂を詰めて、中の砂を魔力で浸透、圧迫させてブロックを作る」
中の砂が縮んで固まり一回り小さくなる。
「次にブロックにこのアイアンリザード製の魔鉄針をぶっ指す。魔鉄には俺の魔力が宿ってるから抵抗なくサクッと刺さるぞ。そして隙間にも砂を詰めて箱の中でブロックが動かないよう埋めて固定させる。針だけ上に出ているように埋めたら上部の砂をウォールで固めて中身が出ないようにする」
ロウソクみたいに針が上に出た状態で完成だ。
「俺一人だけじゃ魔力不足で数が作れないからミュリスにはブロック以外を作ってもらうぞ」
「やってみます」
言うが早いかさっそく箱を作り出し始めたミュリスに魔鉄針の束を渡して、俺もブロックを量産していく。
とりあえず魔力が空になるギリギリまで作り、二十個ほど作成出来た。
それをミュリスがせっせと箱詰めしていく。
ミュリスは俺よりも魔力量だけなら多いので、魔力に関してはまだ余力があるようだ。
俺は虎の子の上級魔力回復ポーションを取り出し、一息で飲み干した。
「不味い……」
口の中に苦味が残るし、胃がムカムカする。
体内で魔力が回復するが、それでも四割くらいまでだ。
一瓶金貨三十枚のお高い品なのになぁ。
いやーアルジェとの魔力譲渡って身体とお財布に優しい素晴らしいスキルだな。
あれを知ってしまったらもうこの味には戻りたくないわー。
「タカさん、出来ました」
「どれどれ……お、完璧じゃん。やっぱりミュリスは土魔法の才能は物凄いものを持ってるな」
「そ、そうでしょうか」
エヘヘと顔を赤くするミュリスに美少女の照れ笑いご馳走さまですと心の中で手を合わせる。
「よし、とりあえずこいつを奴の口ん中に放り込んで飲み込ませてやらなきゃならない。そのためにはまず接近しなきゃな」
完成したブツを袋に詰めて背中に背負い、自分とミュリスに身体強化をかける。
「『身体強化・強』」
「わわ、身体から力が湧いてきます」
「ミュリスにはあいつの口を開かせるために首か喉にハンマーで強烈なのを一発お見舞いしてほしい。この魔法なら物理攻撃に関しては威力も倍以上でるし防御力も上がってるから体当たり程度じゃ大した怪我はしないだろう。それでも相手が相手だから危険も大きいが……やってくれるか?」
「もちろんです。任せてください!」
「ありがとう、頼むよ。この魔法の効果は十分もない。すぐにやるぞ」
「はい!」
二人でいまだに網を破ろうともがいているクイーン?に急接近する。
「ギャース!」
すると、危険を察知したのかまたもや回転を始めるクイーン?。
「くそ、中々近づけねぇな」
「あ、止まりましたよ」
今だとばかりに再び接近するも、すぐさま回転を再開する。
「こんのくされシーサーペントめ!」
「中々隙を見せてもらえませんね……」
その後も何度か同じ事を繰り返したが、だんだんタイミングが掴めてきた。
「ミュリス、次のタイミングでやる。俺の合図であいつの喉に強烈なのを一発お見舞いしてやれ」
「はい!」
グルグル回転をしていたクイーン?が、ちょっとだけスピードが緩み始めた。
こいつ、多分目を回していて一度止まらないと回復できないのだろう。
そのタイミングを見計らう。
「ここだ!」
「行きます!やあぁぁー!」
身体強化で大ジャンプしたミュリスが、仰向けになって回転をとめたクイーン?の喉元にハンマーで強烈な一撃をお見舞いする。
「ギャボゲァ!」
たまらず大口を開けた隙に背中に背負っていた袋を喉奥にむかって投げつけた。
「よっしゃ!ミュリス、後退するぞ!」
「はい!」
すぐさま距離を取ろうとした所で、クイーン?が怒ってめちゃくちゃに暴れだした。
「キャアッ!」
すぐ近くにいたミュリスが下顎に当たって吹っ飛ばされる。
「ミュリス!」
「うぅ~ん……」
砂の上を転がっていったミュリスにすぐさま駆け寄ると、身体強化のおかげで大きな怪我はしていないものの目を回してしまっていた。
「ギュオー!!」
今の大暴れで身体の半分を網から抜け出させたクイーン?がこちらに向かって口を大きく開けて迫ってきた。
「ミュリス、ちょっと手荒で悪いけど」
土の中級魔法のサンドウェーブを発動し、その上にミュリスを放り投げて遠くに押しやる。
「ふゃあ~!」
砂の波に飲まれながらも離脱に成功したミュリスを見届けた俺は、クイーン?に飲み込まれた。
§
「ありゃ、ヤバいな。タカの奥の手が通じてないし私の自信作まで破られそうとは」
クイーンを相手どりながらむこうの戦いも観察していたメルリーゼは、このままだと間に合わないと考えた。
「アルジェ、昨日発動しようとしたでかい魔法、身体を動かしながらでも発動出来るかい?」
「ウォ~フ」
「無理か、しょうがない。オーパス!私がでかいのを撃ち込むからしばらく引き付けておいてくれ!」
「分かった!」
オーパスは再び剣に魔力を込めて振り下ろした。
「『ワイルドハント・ヴォーダン』」
再び巻き上げられた砂の中から真っ黒な姿をした猟師の亡霊達が馬に乗って現れた。
『ヴオォォォォォ!』
彼らは顔まで黒く目や口がないため表情は分からないが、どこから発しているのか聞く者を不安にさせる嵐のような雄叫びを上げながらクイーンに向かっていき、先に召喚されていた亡霊犬とともにクイーンを取り囲み動きを封じる。
「相変わらず恐ろしげな魔法だねぇ」
「クゥ~ン」
「さて、それじゃ始めるか。アルジェ、私は魔法の準備でちょっとの間無防備になるから頼んだよ」
「ウォン!」
メルリーゼは目を閉じると体内で魔力を練り始める。
賢者と呼ばれるメルリーゼでも、最上級魔法は放つのに時間がかかる。
使用する魔力は膨大かつ質が高くなければならない。
アルジェは時折飛んでくる水魔法を最低限の動きで回避しながらメルリーゼをあまり動かさないよう注意する。
「うおらぁ!」
呼び出したワイルドハントで牽制し、隙を見て自身で攻撃を加えていくオーパスだが、あまり有効な攻撃を入れる事が出来ないでいた。
「チッ、固い奴だな。おまけに用心深いときてやがる」
ワイルドハント達は亡霊なので海上でも問題なく動けるが、オーパスはそうもいかない。
ワイルドハントの攻撃は物理ではなく魔法扱いなのでそれを嫌って避けようとするクイーンを何とか陸地に誘導して一撃を加えているのだが、もう一頭と違いこちらのクイーンは陸地に上がってまでオーパスに反撃しようとはせず必ず距離をとってくる。
「まあいい。俺の役目は時間稼ぎだ」
それでも自身の攻撃にそれなりに自信を持っているオーパスとしては、手傷の一つや二つ加えてやりたいところだった。
「ここならどうだコラァ!」
腹側の、さらに鱗の隙間に突きを入れてやると、ようやく中まで攻撃が通った。
「ギャース!」
それなりに痛かったのか今まで見せなかった怒りのこもった鳴き声をあげ、その場でオーパスに反撃を加えようと鎌首をもたげるクイーン。
「待たせたオーパス!下がれ!」
完全にオーパスに注意が向いたその瞬間、用意が整ったメルリーゼが最上級風魔法を発動した。
「『終末の嵐』」




