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異世界ロケット作成中 24


 ドンドン、ドンドン。


「んあ?」


 扉を叩く音で目が覚めた。


 しょぼしょぼした目だけ小窓の外に向けると、夜が明けて空が徐々に青色に変わってているところだった。


 そして妙に重さを感じる自分の腹に視線を移すと、ケモ耳をゆっくりと上下に揺らしながらアルジェが上半身だけ俺の腹に乗せていた。


「アルジェ、起きろ」


 俺の声に反応してアルジェはすぐに目を開いた。耳が良いので俺より先に起きていたみたいだな。


「タカ、おはよー」


「おはようさん」


「ぬふ~」


 俺の腹に顔をぐりぐりこすりつけてご機嫌なご様子。


 子狼だった頃も俺の腹の上で丸まって眠って、朝起きると顔をぐりぐりこすりつけてきたなぁ。


 ちょっと懐かしくなりながらもドンドン鳴り続けているノックに、起きたからちょっと待ってくれと声をかけて止めさせる。


 用意を整えてドアを開けると、ミュリスが完全武装で待っていた。


「来たのか?」


「はい。メルリーゼさんは先に向かいました。私達も急いで来るようにって」


 冒険者ギルドには寄らずそのまま現地に行くと、すでにストーンウォールでトンネルを完成させていたメルリーゼがオーパスと話している所だった。


 その後ろにはストランツァーメ支部の冒険者達が勢揃いしていてる。


 どうやら砂浜に泊まりこんだらしい。数は三十人くらいかな。


「来たか」


「おはよう」


「おはよーさん」


「ウォン!」


 アルジェはすでに神獣モードだ。変身を見られるわけにはいかないからな。


「にしても、ずいぶんでっかく作ったな」


 トンネルは漏斗を半分に切ったような形で、外海側が大きく広がっている。


 ドラ○もんの道具でこんな見た目のやつあったな。


 中を通るとシーサーペントが全部ウナギサイズに……もったいないな、うん。


「偵察に出ていた人魚によるとよ、三十どころじゃない、百に届くかもって話だ。奴らこっちに向かってくる間にも数を増やしたようだな」


「あー、それは予想してなかったな」


「タカ、悪いが今すぐ奴らを迎撃して間引いてくれ。流石にそこまで大量だと入りきらないからね」


「了解。そんじゃさっさと行きますか」


「ウォーン!」


 俺がまたがるとアルジェは遠吠えを上げて勢いよく空中へと駆け出した。


 待機していた冒険者達が、おお!と驚きの声を上げる。


 この街のテイマーは海の生物に特化しているから空を飛ぶ従魔は珍しいんだろう。


「気をつけて下さーい!」


 大きな声で心配してくれるミュリスに手を振り、アルジェにしっかりとしがみつく。


 大きくなったアルジェのスピードは相当なものだった。

 

 体感速度的には通勤で使ってた125ccスクーターの最高速の三倍は出てるんだろうなって速さだ。


 景色が溶けてスピードの向こう側を覗いている気分。


「アルジェ、ちょっと手前で止まってくれ」


「ウォフ!」


「うっわ、こりゃすげえー」


 シーサーペントの群れは空から見えるだけでも五十は越えていた。クイーンは見当たらないが、おそらく海中だろう。三桁はガチだな。


 気づかれる前にでかいのを一発食らわせてやるか。


「よっしゃ。特訓の成果をみせてやろう」


「ウォフ!」


 アルジェからじんわりと魔力が譲渡され、俺の中に暖かく広がっていく。


「『戦神の裁き』×2」


 左右の手にそれぞれ上級雷魔法を発動し、無警戒に海を泳いでいるシーサーペントの群れのど真ん中にぶちこんでやる。


 稲光が一瞬視界を奪い、次の瞬間にはびくびくと痙攣しながら浮いたり沈んでいったりするシーサーペントが見えた。


「『マーキング』」


 俺はスキルを発動させた。


 固有スキル『ウービ(己の在処)』。


 転生時にもらった俺だけのレアスキル。


 このスキルは言うならばGPSだ。


 マーキングしたポイントと自分を繋ぎ、距離や道筋を最高で十ヶ所同時に記録出来る。


 電波や障害物などは関係なく、外的要因で途切れる事はない。


 直接戦闘には不向きだけど、ダンジョンや広域フィールド探索には非常に有効なスキルだ。


 ただ弱点もありチートと言うほどには至らない。


 このスキル、使用中は常に魔力が消費してしまうんだよな。


 魔力切れで一度でも途切れると全部リセットされてしまうから、使用中は魔力を絶やさないよう注意が必要だ。


 魔力消費量自体は大した事ないんだけどダンジョン探索とかだと数日かかる事もざらなので、その間ずっと発動し続けるとなるとやはり魔力回復ポーションのお世話になる必要がある。


 パーティー組んでた頃はメルリーゼが作ってくれたけど、あれは買うと高いし不味いからあんまり飲みたくない。


 そんな理由からソロになってからはほとんど使用してなかった不遇の固有スキルを雷魔法を撃ち込んだ海面に設定した。


 海面にはシーサーペントが二十匹くらいプカプカ浮かんでいる。間引きすればさらに増えるだろう。


 回収せず放置なんてもったいない事は出来ないからなー。


「キシャー!」


 魔法の範囲外だった個体がこちらに向かってジャンプしてくるが、届かずにそのまま海面へと落ちていった。


「うお、どんどん来るな」


 次々に襲いかかってくるが、どいつも届かずに落ちていく。


 ジャンプが届かないと理解すると水魔法で撃ち落とそうと狙ってくるが、海面からの距離が離れているためこちらに届く前にアルジェなら余裕をもって回避できる。


「ウォッフ!」


 当たらないよーとばかりに一声吠えると、お返しとばかりに風魔法で斬撃を飛ばし、ミンチに変えてしまった。


「アルジェ、もったいないから反撃禁止」


「クゥーン」


 さて、間引きしながら誘導しなけりゃならないとなるといつまでも同じ場所でやりあうわけにもいかない。


 それにむこうの攻撃が届かなくて一方的にこちらの攻撃ばかり当たるとなると、最悪クイーンに逃げられてしまうかもしれないからな。


「奴らを引き離さない程度のスピードで低空で誘導するぞ」


「ウォーフ!」


 了解とばかりに海面へと降下したアルジェは鎌首をもたげているシーサーペント達のど真ん中に突っ込んでいき、そのまま攻撃をかわしながら低空を飛び抜けた。


 その間に俺は中級雷魔法で何匹かを戦闘不能においやる。


「キシャー!!!」


「お、怒った怒った」


 こちらの挑発に釣れたシーサーペント達が牙を剥いて追っかけてくる。


「よっしゃ、たまに距離を縮めたりしながら間引きしつつ行くぞ」


「ウォン!」


 中級雷魔法で間引きつつ、魔力が足りなくなってきたらちょっと距離を離して魔力譲渡を繰り返す。


 シーサーペントも個体差があるので一発で戦闘不能になる奴もいれば致命傷にいたらない奴もいる。


 しかし一体一体選ぶ余裕はないので攻撃してきた奴にとりあえず反撃するというスタイルで徐々に間引きしていく。


 そうこうしている内に湖口が目視出来る距離まで近づいてきて、シーサーペントもかなり数を減らせる事が出来た。


「よし、合図だ」


 空中にファイアーボールで狼煙をあげる。


 向こうからも返事の狼煙が上がったのを見て、アルジェにシーサーペントとやや距離をとるよう指示する。

 

「陸地にむかって逃げ込むように演技するんだ。ラストスパートって感じでシーサーペントどもも急に止まれないくらいの速さを維持してくれ」


「ワォーン!」


 おまかせ!と遠吠えしたアルジェは後方から飛んで来る水魔法を回避しつつトンネルに向かって加速した。


 俺は後方を目視しながらシーサーペントどもの動きに注意する。


 クイーンが未だ姿を見せないのは懸念材料だが、このまま行けばメルリーゼの作戦通りかなりの数を一網打尽に出来る。


「よし、このまま突っ込むぞ!」


「ウォン!」


 スピードを緩めずにトンネルに突入し、通過してすぐに急停止する。


 すかさず出口付近にいたメルリーゼが出口をストーンウォールで封鎖すると、止まれずにぶつかったであろうシーサーペントがドカンドカンと音をたてながらギャーギャー悲鳴を上げた。


 少しの間を空けてトンネルいっぱいにシーサーペントを誘いいれ、さらに入り口も封鎖する。それを確認してすぐにトンネルの真上へと移動した。


「タカ、今だ!」


 メルリーゼの合図とともにトンネルの上部にポッカリと三ケ所に穴が空いた。


「『戦神の裁き』『戦神の裁き』『戦神の裁き』」


 三ケ所の穴に連続して雷魔法をぶちこんでやる。


 とたん、トンネル内から響いていたシーサーペントの鳴き声が止む。


「よし、上手くいったみたいだな」


「ワォーン!」


 やったー!と雄叫びをあげたアルジェに出口付近の砂浜に降りてもらい、軽くモフってやる。


「タカ、本命は入らなかったみたいだぞ。それにやっぱり狩り切れなかったみたいだね」


 俺達のすぐ近くまでやってきたメルリーゼが外海を指差す。


 そこには真っ黒な鱗の大きなシーサーペントクイーンと、その周囲を守り固めている三十匹前後のシーサーペントが鎌首をもたげていた。


「キシャシャシャシャシャ……」


 眷族を大きく減らされてクイーンはご立腹のようだ。


「キシャー!」


 クイーンが一鳴きすると、シーサーペントが十匹ほど砂浜から上陸しようと動き出した。


 しかし、砂浜で一人迎撃すべく待ち構えていた真っ黒な鹿角ヘルムをかぶり真っ黒な毛皮のコートと真っ黒な軽鎧を装備したオーパスが、これまた真っ黒な大振りのロングソードを魔力を込めてを振り下ろした。


「『ワイルドハント』」


 ロングソードから起きた剣風が砂を大きく巻き上げ、その中から大きな黒い犬が何匹も現れるとシーサーペント達に飛びかかっていく。


 あれはオーパスの召喚魔法、『ワイルドハント』だ。


 何匹もの猟犬の魂を召喚し、対象をハントする広域攻撃。


 相手の数が多いときほどその威力を発揮する。


 幽霊犬が足止めしている内に俺達も波打ち際へ移動して、シーサーペントに攻撃を加えていく。


「『ライトニング』」


「『トルネードカッター』」


「ウォッフ!」


 メルリーゼは中級風魔法を、アルジェは海の上でも見た天狼の固有スキルっぽい風の魔法を付与した飛ぶ爪撃を繰り出し、それぞれ対面のシーサーペントをこま切れにした。


 俺が魔法を撃ち込んだやつは瀕死状態でピクピク痙攣していた。


「やはり水属性の相手にはタカの雷魔法が一番効率が良いね」


「お前らのは威力が強すぎなんだよ」


「ウォーフ」


 手加減難しいと尻尾を垂れるアルジェに気にすんなと頭をなでる。


「数は充分確保したしな。後はクイーンだけ注意すりゃいい」


「ウォッフ!」


「そのクイーンだがよ、何か妙じゃねーか?」


 隣にやってきたオーパスは返り血で所々真っ赤になっていた。


 ワイルドハントでシーサーペントを追いたてて近接で片をつける戦術なのでこればかりはしょうがない。


「妙ってーと?」


「これだけ取り巻きを殺られたのによ、未だ動きがないのが気にかかる」


「確かに……」


 配下のシーサーペントを前に出すばかりで一向に攻撃をしてこない。


 その配下どもだって今もメルリーゼとアルジェに数を減らされて半分以下に減っている。


「何かを待ってるのか?」


「何かって?」


「分からないが、何だかあのヤロウこっちを観察してるように」


 ドゴン!!!


「何だ?!」 


 唐突に大きな爆発音が響き地面が揺れた。


「トンネルの裏か!」


「な!あれは……」


 トンネルの裏、湖の内側に巨大な黒いシーサーペントがこちらに背を向けて鎌首をもたげていた。


「クイーンが二匹だと?!」


「くそ、はめられた!こっちは陽動か!」


「ギシャー!!!」


「うわっとと。アルジェ、助かったよ」


 今まで沈黙していたクイーンが叫び声をあげながらメルリーゼへと殺到するが、アルジェがすぐさまメルリーゼを咥えて空へと離脱する。


 しかし、湖内側からは地響きとともに人の悲鳴が上がった。


 後方警戒に回っていたミュリスと他の冒険者達が攻撃されたらしい。


 やべえ、向こうが全滅しちまう。


「オーパス、あっちは俺が食い止めるからこっちを頼んだ。なるべく早く倒して助けに来てくれ」


「分かった。気を付けろよ!」


 クイーンへと殺到するオーパス。


 その背中を見送りながら俺は奥の手の一つを発動させた。


「『インパルス・アクセラレーション』」


 途端、周囲が静まり返る。


 オーパスは剣を振りかぶった姿で空中に浮いており、メルリーゼが発した風魔法は彼女の杖から2メートルほど先で止まっている。


 インパルス・アクセラレーションは名前通り活動電位を利用した超加速だ。


 周囲が止まっているように見えるのも、今の俺が超加速しているためそう見えるだけだ。実際に時間を止めているわけじゃない。


 この魔法は雷魔法で人為的に活動電位を活性化させる事により超加速が可能となり、さらに脳内処理速度も同様に加速したため周囲が止まっているような認識になる、らしい。


 実際には俺自身何がどうなって作用しているのかはよくわかってないんだけど。


 この魔法を作り出したのは過去の日本人落ち人で、習得しやすいようにわざわざマニュアルを作ってくれていた。しかも日本語で。

 

 これによりこの魔法を習得出来るのは日本語が100%理解でき雷魔法が扱える者のみと、固有スキルに近い超レアな魔法だったりする。


 しかもそのレア度に反して消費魔力量は初級クラス。


 固有スキル何かよりよっぽとチートな魔法だよな。


 ただデメリットも存在し、あまり長時間使用するとオーバーヒートして脳から足筋まで全部焼きつきを起こしてしまう。


「くらえやこらぁーーー!」


 俺は倒れている冒険者達にもう一撃食らわせようとしていたもう一匹のクイーンへと走り寄り、その横っ面に飛び蹴りをかましてやった。





 

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