一体全体、どうなるの?
ダイアンとは思えないドレス、髪型、メイクになったのに。舞踏会が行われているホールに戻って来てしまった。
しかも、そのまま王族専用の出入り口の扉から、中へと入って行く。
「あ、あの、フランツ殿下……」
「ダイアナ嬢。わたしはずっと気付いていましたよ」
「え……」
「オペラを観劇したあの日。ダイアン嬢ではなく、あなたがあの場にいたことを」
これにはもう叫びそうになり、慌てて自分の手で口を押えた。
「ダイアナ嬢。あなたであると分かった上で、夕食に誘い、翌日の文芸サロンに行く約束を取り付けました」
ば、バレていた……。
あれだけ、ダイアンっぽく見られるように頑張ったのに……!
「その後の一週間。ダイアナ嬢、あなたと過ごせた時間は、わたしにとって忘れられない時間になりました」
そ、そんな。
あの一週間、ずっとわたしだとバレていた……の!?
もう脱力しそうになる。
でもそこで国王陛下夫妻が座る玉座に到着したので、気を引き締める。
「おお、戻ったか。フランツ、そしてダイアナ嬢……。なんと可愛らしい。ダイアン嬢とはまさに別人」
国王陛下が嬉しそうに目を細めている。
「では発表といくかのう」
そう言うと国王陛下は手をあげた。
すると楽団が演奏をゆっくり止め、ダンスをする貴族達の動きが止まった。
そこで玉座から立ち上がった国王陛下は、皆にこう呼びかけた。
「皆様、お待たせした。これよりもう一つの発表をしたいと思う。さあ、フランツ、こちらへ」
フランツ殿下と共に、居並ぶ貴族に見える位置へ移動した。
さっき、殿下から衝撃的なことを打ち明けられたが、今はもう、それどころではない。一体全体、どうなるのかと、もう心臓がバクバクしていた。
さっき婚約破棄を伝えたフランツ殿下と、再び向き合った。
「ダイアナ・エル・ローズ、わたしフランツ・W・シモンズは、あなたに求婚します」
え……。
「どうかこの婚約指輪を受け取ってください」
あまりにも驚き、口をぽかんと開けそうになり、なんとかそれはこらえ、考える。
さっき、殿下はオペラを観劇した時から。そしてその日からの一週間。ほぼ毎日会っていたのは私だと分かっていたと言っている。
フランツ殿下と過ごした時間。確実に彼の好感度が上がっていると実感していた。同時に。私はダイアンを演じているのに、殿下のことを……そう、好きに……なっていた。
改めて心の中で確認する。
悪役令嬢ダイアンは、アーロン先生のことが好きだった。そして婚約破棄されている。ヒロインであるロザリーは今、兄に好意を寄せているのだと思う。
だったら……。
フランツ殿下の気持ちを、受け止めていいわよね……?
チラリと会場を見えると。
兄は高身長だったので。その顔を捉えることができた。兄の口が動いている。「イエス」だと。つまりプロポーズを受けろと言ってくれていた。
これはいい後押しになってくれたと思う。
私はフランツ殿下の碧い瞳を見た。
その瞳からは間違いない。私への愛が溢れている……!
そこでようやく、理解する。
殿下と過ごした一週間。
彼は私の正体を知った上で、私を、ダイアナを好きになってくれたのだと!
「謹んで、お受けします!」
笑顔で答えた私は、フランツ殿下が持つ指輪の前に、自分の手を差し出した。
お読みいただき、ありがとうございます!
明日から、知られざるフランツ殿下の胸のうち
ダイアンの想いを、視点更新という形で公開していきます!
殿下はかなり甘々で溺愛全開(*/▽\*)
溺愛より結末を!という方はエピローグへ飛んでください~