プロローグ
「ともかく、そのロザリー男爵令嬢とは仲良くしろとは言いません。でも近づかず、何もしないでください。そしてフランツ殿下とは穏便に。できれば仲良くし」
「いやよ」
「ど、どうしてですか!」
私の言葉に悪役令嬢ダイアン・リリアン・ローズは、当代きっての美姫という言葉が相応しい笑みを浮かべる。
「いやなものはいやなの。あなたの指図なんて受けないわ。それに婚約破棄だろうが、国外追放だろうが、私は気にしないから」
もう完全な平行線。
こうなると堂々巡りだ。
同じ事を何度も繰り返すだけ……。
一体どうしたらいいの……?
◇
乙女ゲーム『恋探し~夢見るメルヘン~』。
プレイヤーは、中世西洋風の世界観のクルミ王国において、ヒロインである男爵令嬢ロザリーに扮し、宮廷にあるさまざまなサロンに参加。素敵な男子と出会い、恋に目覚めていく。最終的に四人いる攻略対象の中から一人を選び、その相手に告白。ハッピーエンドを手に入れるという乙女ゲームだ。
高校生の頃にハマっていたこのゲームは、据え置き型の家庭用ゲーム機で提供されていた。それが最近、アプリゲームになって再登場! 今はアラサーになっている世代が「懐かしい!」とダウンロードし、プレイすることで、再び脚光を浴びている乙女ゲームだった。
かくいう私もアプリをダウンロード。しかも学生時代とは違い、仕事をし、収入もあるわけで。課金しまくって遊んでいたわけですが。
でもまさか、この『恋探し~夢見るメルヘン~』の世界に転生しているとは……。
これにはもう本当に驚いた。
いわゆる目覚めたらそこは見知らぬ部屋で、私の髪の色や体型が違っています!というお決まりのパターンと思いきや。
私の場合、ちょっと事情が違う。
突然、どこからか落下し、「痛っ!」というソプラノボイスと共に目覚め、いきなり「あなた、何者ですの!?」と怒鳴られたのだ。
正直、「?????」状態で、声の主を見ると……。
見事なストロベリーブロンドの巻き毛、桜色の瞳、ミルク色の肌に瞳の色と同じ桜色の唇に頬。小顔でほっそりとした首をしているのに、純白のネグリジェの体のラインはメリハリが完璧。
知っていますよ、あなた!
あなたは『恋探し~夢見るメルヘン~』の悪役令嬢ダイアン・リリアン・ローズではないですか。
この時点で、乙女ゲーム同様、高校時代までラノベもよく読んでいて私は、状況を理解する。
あ、異世界転生したな、と。
自分に元の世界での死の記憶はないが、知っているゲームのキャラクターがいるのだ。このパターンは異世界転生だと、すぐに分かってしまった。それに頭上に見えるシャンデリアや左手に見える暖炉、そして高級そうなソファセット。間違いなく、私が住んでいた実家の平屋一戸建ての日本家屋ではないのだから。
それでは今、自分はどこにいるのかというと……悪役令嬢であり、公爵家の長女であるダイアンのゴージャスな寝室にいるようだ。
だってダイアンは金糸のフリンジで飾られた豪華な天蓋付きのベッドに座りこみ、私を睨んでいるから。そして私はふかふかのワイン色の絨毯の上に……落下した直後のようだ。
チラリと目線を自分に向けると、ダイアンと同じストロベリーブロンドの巻き毛に純白のネグリジェを着て、ミルク色の肌をしている。
「あなた、何者ですの!?」とダイアンに尋ねられたが、私も思う。
私、誰なの?と。
たいがいの異世界転生ものでは悪役令嬢に転生し、断罪回避のために右往左往するけど、目の前にダイアンがいるから、悪役令嬢に転生したわけではない。
ではヒロイン?と思うけど、ヒロインの容姿は……。
サラサラストレートの金髪碧眼。
しかもヒロインカラーとしてイエローが設定されているため、ネグリジェはデザインは違えど、色はシャーベットイエローなのだ。いつも。
あとヒロインのバストはまさにお椀サイズ。
でも今の私はダイアンと同じぐらいのボリューム。つまりグラマーなバストサイスなのだ。そこからも自分がヒロインに転生したわけではないと理解できる。
そうなると……モブですか?
モブ……なんだろう。
だって他に主役級の女子キャラはいないのだから。
「ちょっと、あなた、私の部屋に、私そっくりの姿で忍びむなんて、なんの真似ですか!?」
ダイアンの言葉に「え?」と思う。
「私そっくりの姿」と言いませんでしたか、今?
「あの、すみません」
自分で出した声なのに。自分の声ではないと思った。
だって、このソプラノボイス、ダイアンの声では?
「……! 声まで一緒ってどういうことですの!? 気味が悪いなんてものではないですわ!」
この一言で私は、自分の異世界転生が、フツーではないものだと気づく。
「か、鏡はありますか? 鏡を見せてください!」
あまりにも切羽詰まっていたのだろう。かつ私はダイアンにそっくりの姿だから、冷たくあたることができなかったのかもしれない。ダイアンはベッドの横のサイドテーブルの引き出しから手鏡を取り出し、ベッドから降りると私に渡してくれた。
それを見た私は――。
え、どいうことですか?
その鏡に映る姿は、悪役令嬢ダイアン・リリアン・ローズだった。
ちなみにダイアンが双子という設定は――ないっ!
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