第21話 ちょっと待ったぁっ!
「よいではないか。よいではないか。レモンちゃん。」
伯爵の寝室に、呼びつけられた令嬢の侍女長は、伯爵その人に抱き着かれていた。
「閣下……その様な事……奥様に、申し訳ございません……どうか、ご容赦を……。」
「ふーーんっだ! あいつなら、わしの事等なんか、ほったらかしだ。今日も居なくなった。」
「すると、奥様の機嫌を取る為に、ロッタお嬢様の縁談を、進めておられる訳ですね。閣下。」
「しょうがないだろう。そもそも、男子さえ生まれてくれれば、問題無かったのだ。」
「では、せめて猶予を頂けませんか。お嬢様からご提案が、ございましたでしょう。閣下。」
「……ああ、あれか。あれこそ無謀極まる話だ。あそこは、『伏魔殿』だぞ。」
「勿論、存じております。私も『卒業生』ですから。ですから、でございます。閣下。」
「しつこいのぉ……だが、以前言っていただろう。ロッタでは、『卒業』さえおぼつかない。『主席』などとても……そう報告したのは、『教員資格』を持つレモンちゃんであろう。」
「確かに、以前そうお答えいたしました。が、状況は、変わったのです。閣下。」
「ほぉ……ならば、見せて貰おうか。何が、『変わった』のかをな。」
「かしこまりました。……出番でございます。ゴーダ殿。」
ここで、『透明化』の『魔法』を解除する。伯爵には、突然現れた様に、見えるだろう。
「閣下、ご紹介致します。彼の名は、ゴーダ。平民ながら私の手ほどきで、『魔法』を行使可能になった、『傑物』でございます。彼を『付き人』にすれば、十全でございます。」
「なん……だと……まさか! わしの屋敷に、侵入したと言うのか! このガキが!」
「閣下、お怒りは、ごもっともですが、ご説明させて頂けないでしょうか。」
「分かっておる。このガキ! 『完治阻害』を使って、屋敷の『警報魔法』をかい潜っている。だが、この様な高度な『魔法』、平民のガキが、使ったと言うのか。ふざけるな!」
『魔法』の内容を『感知』する『魔法』で、今僕が維持している『魔法』を調べたのだろう。
「はい、閣下。彼には、様々な『魔法』を教えました。ここまで、侵入するに足りる『魔法』を、全て体得したのでございます。それも、たった『3日』で。」
「なん……だと……だが、それをこのガキが、『使った』証拠でもあるのか!」
「かしこまりました。閣下。……では、手はず通りに、お願いします。ゴーダ殿。」
……『詠唱省略』……『念動』……
「むっ……『無詠唱』の『念動』だとぉっ! 平民のガキ風情が!」
こうして、扉が開く。廊下で待ち構えていたのは、仁王立ちしたロッタだった。
「父上……話は、全て聞かせて頂きました。これで、私が申しました『提案』の意味が、お分かり頂けましたな。彼を、私の『付き人』として、共に『魔法学園』入りする事……」
ここで、3人、一列に並んで、礼をする。勿論、台詞は、唱和。
「……宜しくお願い申し上げます。」
こうして、伯爵閣下は、陥落し、晴れて『魔法学園』入学が、決まった。
* * *
次回予告
第22話 家族との別れ
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