五人いる!
一人多い!その事実に愕然した。気づいているのは自分だけなのか。
姫をさらった竜王を倒して地上に平和を呼び戻すために集められたパーティーは4人のはずだった。勇者、戦士、魔法使い、そして彼--賢者。過酷な激闘の末、地上には元の自然が戻った。しかし今は厳冬のまっただ中であった。戻った自然環境は猛吹雪の中、明かり一つない山小屋に一行は閉じこめられることになった。みんなの体力はまだ回復していなかった。
魔法使いは最後の魔法力を使い、一人一人の手元に小さな明かりを灯した。それは不安一つを取りのぞきはしたが、お互いを確認するほどのものではなかった。疲れ切って誰もが声を発しなかった。その明かりが自分を含めて5つあることに気づいたとき賢者は新たなる恐怖におののいた。竜王の残党がまだ残っていたのか?あるいは竜王の怨念が自分たちにつきまとっているのか?賢者には正常な判断は下せなかった。心眼で正体を見極めようとした。しかし、薄れた気力のもとではその存在がわかるだけであった。普段なら魔法力の質の違いによって見分けることは可能である。しかし元から魔法力のない戦士はもとより、竜王打倒のための最大魔法を使った勇者には今は一切の魔法力が残されていないことがわかるだけであった。さきほど最後の力で明かりをつけたはずの魔法使いでさえ、今はどこにいるのかわからなかった。
幸いにも5つの体力はすべて衰えていた。おそらくその5人目も激闘ゆえに今は自分たちを攻撃できないのであろう。しかし体力回復を果たしたとき、自分たちより先に回復されては最大の危険が待ち受けている。攻撃するなら今しかなかった。ワンチャンスしかない。ありたけの智恵を巡らせた。
方法が一つだけあった。最後の闘争にあたって自分たちには竜王からの猛毒攻撃を回避する魔法を働かせていた。まだ効力は残っている。賢者は命の水に万事を期して二度と死からよみがえることのない猛毒を混ぜて一同に回した。自分たちのパーティーには無害のはずだ。5人目にだけ効力が発揮する。計画は功を奏した。みんなが水を飲んだ後、確実にその中の一つの気力が急速に衰えていった。賢者は安心して休息をとった。
翌朝、完全回復を果たした一同の目の前に、その5人目の姿が現れていた。床に永遠の死に顔をたたえて横たわる姫の姿が……
完
パソコン通信NIFTYの「推理小説フォーラム」内で企画された、「1000字以内のお題話」に投稿した作品です。
お題は「パーティー」