最後はあなたへ
身の毛がよだつとは、まさにこれだと北山は感じた。目の前に広がっていたゾンビよりも恐怖を感じてしまった。
それは、上枝紫乃が手に持っている重火器から風を感じてしまったからだ。それほどの距離で一撃必殺の弾丸が北山の周りを飛び散っていた。
超至近距離の効果があり、紫乃が撃った弾はゾンビだけを偶然ぶち抜いた。北山への道が開いて紫乃が叫ぶ。
「諦めんなばかぁ!」
そう言って手に持っていた弾が切れたのか良くわからないライフルもどきをゾンビへと投げつける。その後は、北山の手を握って駆け出した。
「死ぬなばかぁ!!!」
そう言いながら切り開いた道を戻り紫乃はですげぇむの施設へと北山を引っ張り駆けた。くたくたの北山よりも遅いスピードでひっぱる紫乃に、大人しく引っ張られて門へと向かう。門では上杉が手を振っており、いつでも閉める用意が出来ていた。
「閉めて!」
紫乃が合図を送ると上杉が門を手動で閉じた。指揮官を失ったゾンビがですげぇむ会場周りを彷徨い始める。そんな中で、紫乃は北山を正面を向いて呼吸を整えて伝えた。
「監視しないと萌がご飯を全部食べちゃう! 諦めて死なれるのは紫乃的にとっても困るの! ねー、モコちゃ……あれ?」
大好きなぬいぐるみは門の向こうで置き去りにしてしまっていた。北山を助ける事に夢中でモコちゃんを置いてしまった。それを助けるのも今は無理でえーっと。
「ぐすっ……うぅぅぅ」
急に泣き出した紫乃に対してどう対応したらいいのか北山は分からなかった。なので、とりあえず。考えずに喋ってしまった。
「俺達がいる、その……モコちゃんの回収は難しいけどよ。中に入ろうぜ」
泣いている紫乃を志村萌が居るであろう会議室へと連れて行った。上杉もちゃんと後ろからついていく。
それから――――約二ヶ月をデスゲーム会場で過ごした。
紫乃は缶詰を開けて硬いパンを齧った。ガリガリと音を奏でながら食事を取っている。
「もー、お肉食べた―い」
「贅沢は敵です。理解しろこの野郎!」
缶詰を食べた記憶しか無い志村が紫乃に返答していた。一方、北山は在庫の整理をしている。
「あと少しで食べ物が無くなるぞ」
「では、そろそろここを離れましょうか」
上杉が机に地図を広げた。
「行くって言ってもよぉ。何処に行こうかなぁ! 親父達を探すのが手っ取り早いな。空港に行こう。俺様くらいになればヘリで移動とか出来そうやろ! しらんけど」
ラバーズの情報と志村財閥という看板があれば何でも出来ると豪語する志村を信じて目的地を設定した。
この二ヶ月の隔離期間で随分とゾンビを見る回数が減っていた。クイーンが制御できない失敗作と言われるラバーズが困りもので同族でさえ襲っている。その為、ゾンビが人間を襲わない限り……その数は減っていく。
食料を確保できないラバーズも活動限界を迎えると動かなくなっていった。紫乃は次のクイーンが現れなければ収束の兆しが見えると踏んでいる。
荷物整理をする北山を見ながら紫乃は呟く。
「もう街で動けるゾンビは殆ど居ないね―」
「あー、なら」
安全が確保されたならば、気楽に探しに行ける。
「ぬいぐるみの……モコちゃんを探しにいくか?」
ふと、名前は何だっけと思考を巡らせる様子を紫乃が笑いながら見ていた。
紫乃はそっと首を振り。
「君が居るから、もう大丈夫だよー」
紫乃はあなたを見て言った。
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本作の後半は北山の先を想像したら手が動きました。
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