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助けてくれたのは年下の少年


 志村萌(しむらはじめ)は掴んでいた紫乃(しの)の腕を放して距離を取った。


 おえっと、信じられない音を奏でながらあの上枝紫乃が吐いている……志村萌は自分の考えたデスゲームで恐怖に歪む姿を見たかったのだが、今じゃない。


「いくら顔が可愛くて地味に胸もありサラサラで艶のある髪の毛が素敵な上枝紫乃(かみえしの)でも、それは受け止められない!」

「ごほっ……セクハラな気がする……あと、近づいてくる」


 ゾンビが迫る恐怖と吐いた時に息が苦しくて目が回る紫乃は動けずにいた。隣では見た目が派手な志村萌が右往左往としており、どうしようもない。


「下がってな」


 ゾンビとは逆の方向から知らない声が耳に入った。紫乃は声の元を確認すると、少年が血にまみれた金属バットを握りゾンビへ向かって駆けていた。風を切りゾンビに対する恐怖は無く勇敢な王子様に紫乃は見える。


 紫乃と萌の側を通りすぎて少年はバットを大きく振りかぶりホームランを狙うかの如く、勢いを乗せた一撃がゾンビの頭部へと向けられる。景気の良い甲高い音とはかけ離れ、ゴンっとブロックを地面に落としたような音が廊下へと響いた。


 何度かバットを振りかぶり頭部へと叩き落とした後に少年が此方を振り返った。


「無事か?」


 額に汗を浮かばせながら恐らく年下の少年が息を切らして佇んでいた。


「お、助かった。マジ助かった」


 右往左往していた志村萌は安心した表情で少年へと返事をした。


「助かりました」


 紫乃も取り合えずの脅威が去り安堵する。ゆっくりと息を吸い呼吸を整える……あまりの衝撃的な生物と生々しい傷口を見た事により、反射的に嘔吐してしまった訳だが……自分の目で見た事実を受け入れた。


「で――ここの生き残りはその子だけか? 他は見当たらなかったぞ」

「皆どこ行っちゃったんだろうねぇ。あ、此方はさっき知り合った北山聡(きたやまさとし)くんだよ。頼りになる年下の男の子で、こっちは志村萌(しむらはじめ)様のターゲットである上枝紫乃(かみえしの)さん」


 紫乃は助けてくれた少年の名前が北山聡(きたやまさとし)だという事を認識した。そして、モコちゃんを強く抱きしめる。


「モコちゃん。志村より頼りになりそうな男の子が来てくれたよ。ありがとう北山聡」

「おいおい、とりあえずどうするよ志村」


 紫乃を無視して北山は志村に指示を仰ぐ。この建物にもゾンビが入り込み危険地帯となっていた。紫乃が誘拐され眠っている間に色々と経験した北山は現状を一番把握しており、誰よりも早く行動する事が一番大事だと分かっていた。


「そうだなぁ……とりあえず地下に向かいたいんだけど……あれって沢山見かけた?」


 志村は撲殺され動かなくなったゾンビを指さしながら北山聡に問いかけた。


「あぁ、もう何体も見掛けた。でも、普通の奴等ばっかりだな……」

「普通? 君は僕等よりも沢山知ってる様子だね……まずは、安全を確保して状況を整理しよう」


 そんなやり取りをして、志村萌は机を運び出し廊下の左右に並べて簡易的なバリケードを作り始めた。これがどれだけの効果をもたらすのか分からない紫乃もとりあえず、手伝う事にした。北山聡も一応、手伝っていたが紫乃の目には乗り気ではなさそうに見える。


 作業を終えてゾンビの死体が落ちている通路を机で塞ぎ隣の教室へと移動してもう片方の廊下を塞いだ。


 吐瀉物の匂いがしない綺麗な教室に三人で集まる。紫乃は誘拐されて起きたらゾンビが居て何も分からない……情報収集も兼ねて二人について行くことにした。


「ふぅ、これで暫くは大丈夫だ。きっとな! んで、現状僕等はこの建物――学校を模した志村萌様の私有地に居る訳だ」

「え? 学校を模した私有地?」


 紫乃が目覚めたのは懐かしい学校……だと思っていたが本物では無かったらしい。三階建ての結構大きい学校なのだがそれを私有地?


「あ、モコちゃん! 紫乃は危うく志村の言葉を信じる所だったよ。ふぅ……誘拐犯の事を信じちゃだめだよね」

「おいおい、上枝紫乃よ。此処は僕が君達を集めてデスゲームで遊ぼうとした会場なのだよ。だから、ここは僕の私有地なんだ。本当の学校でやる訳ないだろう? だってほら。世間的に大変な事になるだろ?」


 自信満々でふんぞり返る志村萌を見ると……紫乃は本当にですげぇむ? とやらに巻き込まれたんだーと判断した。


「志村お前も変な奴だな……まぁいい。というか世界がこんな事になってるんだぞ? そもそも今まで何してたんだ?」


 北山聡も紫乃と同じ感想を持っているらしく親近感を紫乃は感じていた。志村萌は変な奴!


「うーん? さっきから言っているだろう? 僕の嫌いな連中を集めてデスゲームを開催しそこの上枝紫乃や西条兄妹(さいじょうきょうだい)……後は未来紗枝(みらいさえ)桐島歩(きりしまあゆむ)の苦しむ様を特等席から眺めようとだな?」


 あー、本当に馬鹿らしい事を志村萌はやろうとしてたんだなぁと紫乃は少し呆れた。


「で、そのゲームとやらで人を集めている間に世界がこんな風になってたってことか?」


「おうとも、聞いてくれ。志村財閥の御曹司であるこの僕が指示をして学校を模した会場を造り、デスゲームのプログラムを考えて色々と準備をしていたんだ。そりゃ、上枝紫乃を含めて誘拐するのは困難だったさ。特に桐島歩には手を焼いた。苦難を越え、全員を捕まえてやる事はまず、眠らせる。その間に死んじゃったら大変だ。健康状態を管理する医者に設備を用意した。運営スタッフは三日三晩徹夜で働いて貰っていたさ」


 三日三晩の徹夜……紫乃は睡眠は沢山取らないと動けない派なので、信じられない。というか、スゴイ数の人が関わってたんだなぁと思った後に、とある事が浮かび上がる。


「その三日三晩働いてた人ってさ。今どこに居るの志村?」


 紫乃の言葉に目が泳ぎ始める志村萌。先程までの饒舌な語りは嘘の様に歯切りが悪くなった。


「それが、その、えぇっと……」


 上枝紫乃と北山聡は悪い事を考えて企んで企てていた男をじーっと見ると観念したのか重い口を開いた。


「全員……逃げちゃった」

「え?」


 ぽかーんとした表情で紫乃は志村萌を見ていた。

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