第86話「神話的猟犬撃退戦」
前回は某TRPGの真似事をしましたが案外時間がかかる上に手間がかかってしまうので今回は普通にやります。
蓮を守る為に現れた二人の女性と男性。
猟犬の爪を弾き、二人で同時に猟犬を蹴り飛ばし、距離を開く。
「何者なのでしょうか? あの二人は…」
「分かりません。ですが、敵ではないようです」
レイアがそう呟く。
それに鈴は分からないと答える。
蓮は現れた二人へ嬉しそうな表情を隠す事なく二人に抱きついている。
「あの者達が敵でないことはあの表情の蓮様を見る限り確実ですね」
「ええ、それに関しては同意です。それにしても…」
レイアは紫杏と呼ばれた女性の方を見る。
「あの人、紫杏さん…でしたっけ。初めて会う方のはずなのに初めて会った感じがしません」
「私もです、お嬢様。あの執事の方からは他人ではない…むしろ親しみやすさすら感じます」
「お待たせ、状況はどうだ?」
「あっ、紫電。何で戻ってきて…傷は大丈夫ですか?」
「大丈夫、此処は病院だ。医者の人たちは患者の人達を避難させる為に凄く忙しそうに動いていたから自分で応急処置をしてきた。鈴の手当てが完璧だったからあまりやる事無かったけど」
「無茶はしないでください。簡単な手当ですから再度傷口が開いてしまう可能性があります」
そうこうしている内に紫電が傷の応急手当てを終わらせ戻ってきていた。
戻って来て早々にやる気の紫電だがレイアと鈴の二人に絶対に無茶をしないようにと念押しされ、紫電は後方で魔法での援護を行うことにした。
このタイミングで猟犬が復帰、距離を詰めて爪で襲い掛かってくる。
「紫杏お姉さん! 後ろ!」
「大丈夫よ。…その程度の攻撃で、この私を倒せるなんて思わないことね!」
紫杏は手に持っていた刀で爪を弾き、返す形で襲い掛かるときに開いた口に刀を突っ込みぐりぐりと抉る。
そこに執事服の男性、紫燕が追撃とばかりに持っていた暗器で猟犬の下側に潜り込み、腹に向かって突き刺した後、思いっきり横に向かって薙ぐ。
その様子を見ていたレイアと鈴は驚いていた。
自分たちが攻撃しても全くダメージが入っている様子の無かった猟犬が目に見えて傷を負い、弱っているのだ。
そしてそれとは別に紫電と鈴は気になっていることがあった。
((あの武器は…))
紫杏の持つ刀と紫燕の持つ暗器が自分たちの持っている武器と全く同じように見えるのだ。
紫電は現在家においてある刀、水神切り兼光に鈴は現在自分の手に握っている暗器にとても良く似ている…と。
(それにあの二つの武器から感じる魔力…)
「どうしたのですか、二人共?」
「いえお嬢様。なんでもありません」
「気にするなレイア。あの二人に任せておけば大丈夫そうだな」
「…そのようですね」
紫電達が喋って眺めている間にも蓮を含めた三人で猟犬をフルボッコにしている。
「やっぱりさっきも思った通り、物理に対する耐性は高いけど魔力を宿した攻撃には耐性があまり高い…と言う訳ではないみたいですね」
「ですが先程までの攻撃ではあまり傷ついている様子はありませんでしたが…?」
「もしかしてだけど魔力の攻撃が出来たとしても、その攻撃自体の威力が低かったらすぐに再生してしまうのかもしれないですね」
「そうですね。先ほどお嬢様が体内爆破させた攻撃はかなり効いていたようですから」
「体内爆破って…何したの?」
「魔力を貯めて開いた口の中に入れて爆破させただけですよ」
「……えっぐ」
「…どうやら決着がついたようです」
鈴がそう言うと紫電とレイアも蓮たちの方へ再度視線を向ける。
すると猟犬が倒れており、形が保てなくなったのか倒れた姿が消えていった。
蓮達三人が武器をしまって話し合っているようだ。
そしていつの間にか上で戦っていたクロノストリガー達はいなくなっている様だ。
「行こう。詳しい話を聞きたいから」
「はい」
「畏まりました」
紫電達が蓮たちに近付いていくと向こうもこちらの方を向き、待っているようだ。
そして目の前まで来ると…紫杏が頭を下げる。
「蓮君を助けていただいてありがとう御座います」
「気にしないで大丈夫です。こちらもご助力ありがとう御座います。自分達だけでは厳しかったかもしれませんので…」
「紫電様、紫杏御姉様。話はまた別の場所で行いましょう。今はここから離れることを優先し方がよろしいかと」
「…そうね。紫燕、いい場所はある?」
「近くに喫茶店がありました。外から中を窺ってみましたが、席やテーブルが適度に離れていたので話し合いにはうってつけの場所かと」
「なら、その喫茶店に場所を移しましょう。…すみません、そういう事ですので詳しい話はそちらで」
「分かりました」
そう言って、紫電達はボロボロになってしまった病院から離れていった。
次回は可能な限り今章の真相に迫っていけたら…いいなと思っています。
紫杏たちは何者なのかクロノストリガーについてもっと詳しい情報などを書いていきます。




