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神様に呼び方と話し方を変えるように言われたんだが

今回は神様の部屋を片付けて呼び方と話し方を変えるように言われる話です

目が覚めた時に気が着けよって思いませんか

では、どうぞ

 昼も夜もない部屋。俺、白石洋平には疑問に思う事がある。それは────────────


「あのぉ~、神様?」

「どうしました?白石さん?」

「今まで聞きませんでしたけど……どうしてこの部屋ってこんなに汚いんですか?」


 この部屋がものすごく汚い事だ。最初に見た時はぬいぐるみや化粧台、それと世界の様子が見れるテレビにしか興味がなかったから言わなかったけど、いざ、自分が住むって事になったら思うところがある


「そ、それは……そのぉ~」


 神様は俺に死を宣告した時と同じく俺から目を反らした


「どうしたんですか?この部屋が汚い理由を言えないんですか?」

「い、いえ、言えない事はないんですけど……」


 理由を言えるのならどうして俺と目を合わさない?どうして汗だくなんだ?


「理由を言えるのなら俺と目を合わせてください?」

「い、言えますけど、し、白石さんは男で私は女じゃないですか」

「はい」

「で、ですので、理由を言うのはちょっと……」


 男だ女だなんて考えは古いんだよ……それに、神様の誤魔化し方は妹の茉央に似ている。そう、めんどくさくて部屋を掃除しなかった茉央に


「そうですか、では、理由を当てて差し上げましょうか?」

「や、やれるものならどうぞ!」

「そうですか。では、遠慮くなく」

「白石さんには見破れないと思いますけどね」


 神様は自信あり気だなぁ……ま、俺も考えてるフリしてるだけなんだけどな!


「そうですか?俺はてっきり部屋の片づけが面倒だからしないと思ってましたけど、この部屋が汚いのは俺の想像を超える理由がありましたか……それじゃ俺では見破れませんよね?」

「…………」


 無言で俺から目を反らす神様


「どうしました?神様の部屋が汚い理由って片付けが面倒だからっていう単純なものじゃありませんよね?」

「…………」


 違うと言ってくださいよ……神様。沈黙は肯定と取りますよ?俺の勝手な押し付けで申し訳ないけど、神様はそんなガサツじゃないですよね?違いますよね?でも、俺が死んだ原因がって神様が酒瓶を投げたからだからなぁ……いやいや、酒癖が悪いのと片付けのできないのは別だと思うし……


「神様?沈黙は肯定と取りますけど?」

「………………………………ごめんなさい」


 長い沈黙の後、俺が何も言ってないのに神様に謝られたが、俺は謝ってほしいわけじゃない。かと言って言い訳も聞きたくないがな!


「言い訳を聞きたいわけじゃないんです。謝ってほしいわけでもありませんけど。それで?この部屋が汚いのは単純に片付けるのが面倒だったからって解釈でいいんですよね?」

「はい…………」

「神様ってガサツな性格の女性だって解釈でいいんですよね?」

「お、お恥ずかしながら……」


 神様は恥ずかしさからなのか、顔をこれでもか?ってくらい真っ赤にしていた。目が覚めた時にツッコまなかった俺も俺だが、日頃片付けない神様も神様だと思う


「それで?今は特に異世界に行く事もないからこの部屋の片付けって事でいいんですよね?」

「…………はい」

「はぁ……わかりました」


 こうして俺と神様による部屋の大掃除が開始された。開始されたのだが……


「うっ!何なんだこれは……」


 俺が手にしているのは女性用の下着でも洋服でもなく、元の色がわからなくなるほど変色した謎の物体だった。


「神様ぁ~コレなんですか?」


 俺は鼻を摘まみ、謎の物体が入ってる袋を神様に見せてコレが何なのかを聞いてみる。どうせ大したものじゃないとは思うが……


「あー、それは……五百年前くらいに途中で食べるのを止めた羊羹です。多分……」


 五百年か……人間からしてみれば気の遠くなるくらいの年数だが、神様にとってはほんの数日前の出来事みたいだ


「その羊羹がどうしてこんな色をして異臭を放ってるかは聞きませんが、腐ってるなら捨ててもいいですよね?」

「はい!捨てちゃってください!」


 こんなものがあるのにこの部屋から異臭がしないのはちょっとした奇蹟だ。酒瓶が原因で死んでしまったのも俺の中では奇蹟みたいなものだが、それ以上に腐った食品があってもこの部屋から異臭がしないという事実が俺にとっては今のところ最大の奇蹟だ


「元気よく答えてますけど、本来ならいらないと思った時にすぐに捨てましょうよ……」


 呆れつつ俺はゴミ箱に異臭を放っている羊羹を放り込む。さて、次は……


「ごめんなさい……」


 その後、俺と神様は黙々と片付けをこなし、終わる頃にはヘトヘトになっていた。


「つ、疲れた……」

「お、お疲れ様です……」


 俺がヘトヘトになるならともかく、どうして散らかした神様がヘトヘトになってるんですかね……?


「ところで、神様?」

「はい、何ですか?」

「俺がここへ来た時に異世界転生の他にラノベの世界に転生させます的な事を言ってましたよね?」

「はい、いいましたけど?それがどうかしましたか?」


 俺は異世界転生はチート能力とハーレムは必要ないから拒否した。が、ラノベ世界に転生するのも理由があって断った。


「いえ、俺の世界では数多くのラノベが売ってたのは神様ならご存知かと思います」

「はい、それは知ってますよ」


 俺の世界で数多くのラノベが売ってたのを知っていて俺をラノベ世界に転生させようとしていたとしたら質が悪すぎる


「知ってるのなら話が早い。俺がもしラノベの世界に行くって言ってたらどうするつもりだったんですか?」

「どういう事ですか?」


 神様は俺の言っている意味が理解できてないのか?それとも、俺がおかしいだけなのか?


「ラノベだけじゃありませんが、原作が続いていて今も連載している作品が数多くあります。それで、俺がもし、その世界に転生したいって言ったらどうするつもりだったんですか?」


 仮にラノベの世界が存在していたとして、俺が連載中の作品に転生したいって言ったら神様はどうするつもりだったんだろうと思う


「それは心配ありません!例え連載中の作品の世界に行きたいって言われても今回からは原作の世界観を壊さないように転生させるって決めてありますから」


 ん?どういう事だ?って言うか、今回から?言っている意味が解らない


「聞きたい事はいろいろありますが、原作の世界観を壊さないように転生させるってどういう事ですか?」


 俺は話に聞いただけだから詳しくは知らない。だが、聞いた話によると『二次創作』って言うものが存在するらしい。なんでもその作品を盛り上げる為のファン活動だって話だ。だが、『二次創作』の中にはファン活動だって事を忘れて『アンチ』というものが存在するみたいだ。まぁ、小説もそうだが、人気があるって事は少なからず『アンチ』が存在してもおかしくはない


「そのままの意味です。例えば、原作の主人公とヒロインが結婚した世界でその二人の子供とかになるんです」

「なるほど……それなら連載中の作品の世界観は壊れなくて済みそうですね」

「はい。じゃないと既存の世界が壊れてしまう恐れがありますから」


 俺に酒瓶を当ててしまうよな神様でもいろいろ考えてるんだな……


「まぁ、考えがあって何よりです。それともう一つ聞きたい事があるんですけど」

「はい、何ですか?」

「さっき『今回からは』って言ってましたけど、過去に原作の世界に飛ばした人が何かしたんですか?」


 何かした前提で話すのはその人には悪いと思ったけど、さっきの神様の口ぶりからして俺の前に転生した人が何かしでかしたんだろうとは思う


「その人が転生した世界で好き勝手やってその世界が壊れただけです」


 神様はそれだけ言ってそれ以上は何も言わなくなった。俺としては詳しく聞きたかったが、神様が言いたくないのであれば俺は無理に聞き出す事はしない


「そうですか。でも、いずれ話してくださいね」

「はい……」


 どうせ俺は死んでるんだ。何年先でも、何十年先でも、何百年先でも待つ。神様が俺に話してもいいって思える時が来るまで


「さて、片付けもある程度済みましたし、お茶にしましょうか?」

「そうですね」


 片付けが一段落したので休憩がてらお茶にする事にした。


「そういえば、普段は神様って何して過ごしているんですか?」

「どうしたんですか?いきなり」

「いえ、単純に気になっただけです」


 俺は純粋に気になった神様って普段は何をしているんだろうって。だってそうだろ?俺の死因は神様が投げた酒瓶が当った事が原因なんだから


「そうですねぇ~普段は各世界の様子を見てますね~」


 まったりとした様子で神様が答える。つまり、俺が死んだ時は俺の世界を見ながら酒を飲んでいたと


「そうですか。神様はそれでいいかもしれませんが、俺は何をしたらいいですか?」

「あ、あの……」

「何ですか?神様」

「その“神様”って言うのと敬語止めませんか?」

「はい?」


 俺の質問をスル―し、神様呼びと敬語を止めるように提案された。だけど、自分で名乗っていたように神様は神様だし、俺の世界では神ってのは絶対的な存在として崇める人もいる。そんな人にため口で話す事なんてできない


「ですから!私を“神様”って呼ぶのと敬語を止めてください!」

「いや、でも、神様は神様ですし、それに、どう考えたって俺より年上じゃないですか」


 当たり前だが、この人は神様であり、さらに言うと俺より年上だ


「それは……そうかもしれませんけど……」

「でしょ?それに、神様だって俺の事を“白石さん”って呼ぶし、敬語じゃないですか」


 神様だって俺を“白石さん”って呼ぶし、敬語で話す。それを俺が一方的に呼び捨てでため口というのはちょっと……


「そ、それは……」

「俺に呼び方や話し方を変えてほしかったらまずは自分が変えてからにしてください」


 相手に変化を求めるのならまずは自分が変化しなきゃいけないと思う。


「わ、わかり──────わかったよ!洋平!」


 マジか……俺が呼び方と話し方を変えてほしかったら自分が変えろっていう要求をアッサリとやって見せるとは……


「マジか……」

「さあ!私は呼び方と話し方を変えたよ!次は洋平の番だよね?」


 神様の言い分は正しいけど、俺は神様の名前すら知らないんだけど?


「話し方を変えるのはいいとして、俺は神様の本名を知らないんだけど?」

「あ、そう言えばそうだったね」

「ああ、できれば本名を教えてくれると助かるんだけど?」


 本名を知らなきゃ呼び捨てで呼ぶ事すらできない。ため口で話す事はできてもな


「私に名前はないよ!」

「何で?」


 名前がないんじゃ呼び捨てで呼べないじゃないか。


「だって、みんなが“神様”って呼ぶし、今までの死者は異世界転生を選んでさっさと異世界に行っちゃうから名前なんて特に必要なかったし。異世界転生を拒否したのだってそうだけど、チート能力やハーレムなんていらないって言う人なんて洋平が初めてなんだよ」


 そうだったのか……ラノベ的展開なら神様のところを離れてさっさと異世界に行くのが普通だよな……


「それもそっか。で?結局俺はどう呼んだらいいわけ?」


 神様なんて仰々しい呼び方以外の呼び方が思いつかない


「私の名前……洋平が考えてくれないかな?」

「は?」

「だーかーらー私の名前を洋平が考えてって言ってるの!」


 名前を考えろって俺に?マジで?


「マジで?」

「マジで」


 マジか……でも、俺は子供の名前すら考えた事ないのに神様の名前を考えろとか……いきなりハード過ぎやしませんかねぇ……


「名前ねぇ……それって神様に関係ある方がいいの?」


 名前を考えるのはいい。だが、神様に関係する方がいいのか、それとも、神様は関係ない方がいいのかがわからない


「そうだね……できれば神に関係ある名前がいいかな」


 神に関係ある名前か……読み方は指定されてないし、安直だけど、アレにするか


「そうだな……じゃあ、神子(みこ)なんてどうだ?」

「みこ?それってどう書くの?」

「神の子って書いて神子だ。神に関係しているし、これから来るであろう死者に説明する時に楽だと思うけど?」


 俺にネーミングセンスがないのは自覚している。が、そんな俺に名前を付けさせたのが運の尽きだな


「いいね!今日から私は神子だね!」


 意外にも神様──────いや、神子は喜んでいた。本人が気に入ってるのであれば俺はそれでいいけどな


今回は神様の部屋を片付けて呼び方と話し方を変えるように言われる話でした

目上の人が呼び捨てため口ではなしてほしいって言えばその通りにするけど、いきなりは無しだと思う今日この頃


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今回は最後まで読んで頂きありがとうございました

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